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歯磨き後のうがいは1回だけ!?「歯」のトリビア5選

ひと昔前「芸能人は歯が命」というCMが話題になりましたが、一般人にとってもきれいな歯を保つことは非常に大切です。毎日の歯磨きが習慣になっている人でも、やり方が間違っていると虫歯や歯周病になり、悪化すると歯が抜けてしまうことも。

今回は、「歯」に関するトリビアを東京医科歯科大学 名誉教授の和泉雄一先生に教えていただきました。自分の歯磨きを見直してみましょう!

教えてくれるのは・・・
和泉 雄一先生
東京医科歯科大学 名誉教授
総合南東北病院 オーラルケア・ペリオセンター長

東京医科歯科大学歯学部、ジュネーブ大学医学部歯学科、鹿児島大学歯学部などを経て、2007年に東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 教授に就任、2018年より名誉教授、2019年よりオーラルケア・ペリオセンター長。2014年~2016年には日本歯周病学会の理事長を務めた、歯周病の治療・研究のスペシャリスト。


INDEX
トリビアその1「歯磨き後のうがいは1回でよい」
トリビアその2「食事によって歯はきれいになっていく」
トリビアその3「歯ブラシだけでは歯周病は予防できない」
トリビアその4「歯周病菌は空気が嫌い」
トリビアその5「口呼吸は万病のもと」

トリビアその1「歯磨き後のうがいは1回でよい」

歯磨きのあと、口内をきれいにするために何度もうがいをする人は多いでしょう。しかし、じつは何度もうがいをする必要はないのです!

その理由は、歯磨き粉(歯磨きペースト)にあります。歯磨き粉には、虫歯の予防に効果的なフッ素や歯周病に有効な抗菌薬、抗炎症薬などの薬効成分が含まれています。それらをしっかりと浸透させるためには、できるだけ口内に歯磨き粉を留めておく必要があるのです。

薬効成分が流れ出ないよう、歯磨きのあとは軽くゆすぐ程度か、不快でなければ、口のなかにたまった唾液と歯磨き粉を出すだけにしましょう。

ちなみに、起床してすぐのうがいも基本的には不要です。夜間に口内で増えた細菌を気にする方がいるかもしれませんが、残念ながらうがい程度では取れないため、きれいにしたい場合は歯ブラシを使ってきちんと磨きましょう。

ただし、就寝前にしっかり歯を磨いていれば、起床後すぐの歯磨きは必須ではありません。歯磨き粉によって食事の味がわかりづらくなるのを避けたい場合は、朝食後でも問題ありません。

トリビアその2「食事によって歯はきれいになっていく」

「歯磨きは、食事でついた歯の汚れを落とすためにするもの。だから食事は歯を汚すのでは?」と思う方もいると思います。じつは、繊維成分が含まれる食事を摂ると、唾液がもつ「自浄作用」と合わさって、歯の表面についた汚れが取り除かれるのです。

繊維成分を含んでいる食材には、野菜やきのこ類、ステーキなどの塊肉などがあげられます。これらをよく噛んで、唾液としっかり絡めて飲み込みましょう。

唾液には抗菌作用もあります。また、食事できれいになる部分には付着している細菌が少なく、体へ影響を及ぼす菌もありません。まずは一口あたり10回から20回ほど噛むことを意識して、食事をしてみてください。

注意したいのが、汚れがすべて取れるわけではないということ。歯茎に近い部分や歯と歯のあいだの汚れは、食事ではきれいになりません。歯磨きをする際は、食事でカバーできない歯茎から3分の1ほどの部分を重点的に磨きましょう

トリビアその3「歯ブラシだけでは歯周病は予防できない」

繊維成分のある食材をよく噛んで食べ、食後は歯ブラシを使ってしっかり歯を磨いても、残念ながら歯周病までは予防できません。歯周病は、歯ブラシでは届かない歯と歯のあいだ(歯間)から症状が進行してしまうのです。

そもそも歯周病とは、歯茎に炎症が起こり、歯を支えている骨が壊されて歯が抜けてしまう病気のこと。50代以上で歯が抜ける原因の1位となっています(※2018年の「8020推進財団報告」参照)。

また、歯周病になると心筋梗塞や脳卒中などの循環器にまつわる疾患のリスクが高まったり、糖尿病を悪化させたりするなど、さまざまな病気にも深く関係していることがわかっています。

歯周病予防のために必要なアイテムが、「フロス」(細いナイロン製の繊維を束ねた糸状のもの)です。歯ブラシで大きな汚れを取ったあと、フロスで歯間の汚れを取り除くことで、歯周病予防に役立ちます。

歯科ではよく糸状のフロスを指に巻いて使いますが、自分でケアする場合は持ち手がついているホルダータイプが使いやすくておすすめです。歯間ブラシも販売されていますが、使い方を間違えると歯茎を傷めたり、歯茎が下がってしまったりするので、使いたい場合はまず歯科で相談してみましょう。

フロスを使うときのポイント

  • フロスを歯間に入れるときは、前後に少し動かしながら優しく入れましょう。強く押し込んでしまうと、フロスが歯茎に当たって傷ついてしまいます。
  • フロスを歯の側面に沿わせるようにしながら上下に3回程度動かし、汚れを取り除きましょう。
  • 次の歯間に移る前に、水で洗って汚れを落としましょう。使用後も水で洗って乾かしておけば、繰り返し使えます。

トリビアその4「歯周病菌は空気が嫌い」

歯周病になる原因のひとつが、歯と歯茎のすきまに付着した細菌の塊(プラーク細菌)です。そのすきまは、健康な場合1mmから2mm程度の溝(歯肉溝)ですが、プラーク細菌によって歯茎が炎症を起こすと、溝が深くなり、歯周ポケットと呼ばれます。そしてプラーク細菌中で歯周病菌が増え、歯周病が進行していきます。では、なぜ歯周ポケットに歯周病菌が定着してしまうのでしょうか。

答えは、歯周病菌は酸素のないところを好むからです。歯周ポケットのなかは空気が入ってこないので、菌を繁殖させるのに適した場所。そのため、歯周ポケットが深くなるほど歯周病菌の数が増えて症状が進んでしまいます。

歯周ポケットに歯周病菌が入り、歯茎に炎症が起こって歯周ポケットが深くなり、歯周病が進行する……。この悪循環を防ぐために、毎日の歯ブラシ、フロスでのケアに加えて、歯科での定期的なクリーニングがおすすめです。

歯科では、専用の器具を使って歯石を取り除いてくれます。歯石とは、歯ブラシやフロスで取り切れなかった汚れ(プラーク)が固まったもの。セルフケアでは取り除くことができません。プラークや歯石を取り除くと、歯周ポケットにも空気が入って歯周病菌が増えにくくなります。

トリビアその5「口呼吸は万病のもと」

最後のトリビアは歯から少し派生して、口呼吸の話。口から息を吸ったり吐いたりしていると、さまざまな疾患を引き起こす可能性があるのです。

鼻から呼吸をする場合は、空気中にあるホコリやウィルスなどを鼻でブロックし、体内にまで入らないようにできます。しかし口呼吸の場合は、空気が口内に入ることで歯茎や舌といった歯以外の部分(粘膜)が乾燥し、弱くなります。

粘膜は乾くと細胞と細胞のあいだに隙間ができて、そこに細菌やウイルスが入り、感染を起こしやすくなるのです。また、唾液も出にくくなるため、口のなかで細菌の増殖を防ぐといった唾液が本来もつ役割も果たせなくなります。

口呼吸によって体内に入った細菌やウイルスで、風邪などの感染症にかかったり、口内に細菌が増えることで歯周病につながり、さまざまな疾患を悪化させたりするという意味で、「万病のもと」といえるのです。

子どもの場合はとくに口呼吸になりやすいので、意識して鼻で呼吸する習慣をつけましょう。加えて、マスク生活が続く現在は、大人も口呼吸になりやすいため要注意。マスクを外しているときは鼻呼吸を意識する、マスクを着けているときも口が乾かないよう水分補給をこまめに行いましょう。


歯や口の健康は、体の健康を保つうえでも大切です。毎日のケアで予防・対策ができますので、ぜひ生活習慣として意識してみてください。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部 イラスト:ニッパシヨシミツ
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