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涙の味は感情で変わる?「目」のトリビア5選

私たちは、視覚をとおして外部情報の8割以上を得ているといわれています。目が見える人にとって「ものを見る」ことは自然な行為であり、目にまつわる器官や機能を意識する機会は少ないかもしれません。今回は、そんな「目」のトリビアを眼科専門医である井上眼科病院の井上賢治院長に教えていただきました。

教えてくれるのは…
井上 賢治先生
医療法人社団済安堂 井上眼科病院 院長

眼科専門医。1998年東京大学医学部大学院修了。2002年より井上眼科病院に勤務し、2008年に医療法人社団済安堂 理事長に就任。2012年から井上眼科病院 院長を兼務。
公式サイト:https://www.inouye-eye.or.jp/hospital/doctor/

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INDEX
トリビアその1「涙の味は感情によって変わる」
トリビアその2「涙の分泌量は昼と夜で変わる」
トリビアその3「生まれたての赤ちゃんはほとんど目が見えていない」
トリビアその4「利き手と同じように“利き目”がある」
トリビアその5「視力1.1は存在しない」

トリビアその1「涙の味は感情によって変わる」

感情が高ぶったときに出る涙。じつは、涙は出るときの感情によって味が微妙に変わるといわれています。うれしかったり悲しかったりするときに出る涙は薄く水っぽい味で、腹立たしかったり悔しかったりするときにはほんの少し塩味の効いた味

実際にはほとんど差がなく、多くの人には自覚できないような小さな違いですが、なぜこんな変化があるのでしょうか。それは、人間に備わっている「自律神経」の働きが関係しています。

人間は意識しなくても心臓を動かし、呼吸し、食べ物を消化し、体温を一定に保っています。これらはどれも、自律神経の働きが土台となっています。自律神経は、私たちが生きるために欠かせない体の営みを、意思とは無関係に調整してくれているのです。

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、日中など活動的に過ごすときは交感神経が、食後や休息時などリラックスしているときは副交感神経が優位に働きます。

意志とは無関係に出てくる涙も同様に、自律神経の働きによって分泌されます。涙の分泌を刺激する神経は、三叉神経、交感神経、副交感神経の3種類。うれしかったり悲しかったりするときは副交感神経が、腹立たしかったり悔しかったりするときは交感神経が優位に働きます

涙はおよそ98%が水分ですが、わずかにタンパク質や塩味を感じさせるナトリウムなども含まれています。つまり、涙のしょっぱさはナトリウムに由来しており、交感神経が働くと微量ですがナトリウムの分泌が増えるため、悔し涙の味は少ししょっぱくなるのです。

トリビアその2「涙の分泌量は昼と夜で変わる」

涙は感情が高ぶったときだけでなく、上まぶたの奥にある「涙腺」からつねに少量ずつ分泌されています。分泌された涙は、まばたきをするたびに目の表面に広がり、潤いを与えて乾燥を防いでいます。

ただし、涙の分泌量は一定ではなく、夜間や睡眠中には減少します

睡眠中はまぶたが閉じられており眼球が乾燥しづらいので自然なことに思えますが、なぜ夜間に減るのでしょうか。

それは、人間に備わるサーカディアンリズムが原因だと考えられています。サーカディアンリズムとは、およそ24時間周期で繰り返される生体内の変化。

人間は昔から日が昇っている間に活動し、夜に休息・就寝してきました。そのため、人間の生理機能は現在も日中に活性化するよう設定されており、涙の分泌もこの影響を受けているのです。

なお、涙の分泌量が慢性的に低下している状態を「ドライアイ」と呼びます。「現代病の一種」ともいわれているドライアイの遠因は、パソコンを使った仕事やスマートフォンなどが普及したこと。目を酷使するなかで無意識にまばたきの回数が減り、目が乾燥しやすくなることでドライアイ傾向になる方も増えたのです。気になる方は、眼科を受診してみてください。

トリビアその3「生まれたての赤ちゃんはほとんど目が見えていない」

生まれたての赤ちゃんはものが見えているのか――。「見えているはず」と思っている人は多いかもしれません。正解は、「ほとんど見えていない」です。

生後間もない赤ちゃんの視力は0.01~0.02で、認識できる色は白、黒、グレーのみと考えられています。

その後、生後2~3か月で目の前にいる人の顔や手などを認識し始め、生後4か月を過ぎてようやくほかの色もわかるようになるようです。視力は1歳ごろで0.2くらいまで、6歳ごろで1.0くらいまで発達するといわれています。

視力や目にまつわる機能は乳幼児期に大きく発達するため、異常がある場合には早期の対処が重要です。ピントが合っていない状態でものを見ているなどの問題を放置していると、視力の発達が妨げられてしまうことがあります。
子どもが目を細めたり頭を傾けたりしてものを見ている、テレビに近づいて見ている、黒目の位置が左右対称ではない気がするといった場合は、早めに眼科を受診しましょう。

また、「そもそも、なぜ赤ちゃんは成長するにつれて、ものが見えるようになるのだろう」。こんな疑問を感じた人もいるかもしれません。
それは、「視覚伝導路が発達するため」と考えられています。ものが見える仕組みはこうです。

  1. 外部からの光が眼球奥にある網膜に届く
  2. 網膜の細胞が光を電気エネルギーに変換する
  3. 電気エネルギーが視神経、脳の順に伝えられる
  4. 脳が外部情報を認識する

網膜から脳までの経路を「視覚伝導路」といいますが、生まれたての赤ちゃんは視覚伝導路が未発達。視覚伝導路は日頃から外部刺激を受けることで発達するため、赤ちゃんは成長するにつれて徐々に目が見えるようになっていくのです。

トリビアその4「利き手と同じように“利き目”がある」

ペンを持って字を書いたり、箸を使って食べたりするときは利き手を使いますが、じつは目にも「利き目」があります

私たちは両目でものを見ているつもりですが、実際のところ、脳は左右いずれかの目で感知した情報を優先的に認識していることがわかっています。このときに優先されるほうの目が利き目です。

利き目がどのように決まるかはよくわかっていませんが、自分で確かめる方法はあります。
カメラのファインダーや鍵穴、顕微鏡、望遠鏡など、片目を使ってものを見る場合、無意識に開けているほうの目が利き目です。

意識的に確かめる方法もあります。両手を伸ばした状態で親指と人差し指で小さい三角形をつくり、両目を開いた状態で数メートル先の動かない物体を三角形のなかに入れてみてください。次に、片方ずつ目を閉じてその物体を見てみましょう。両目で見たときと比べて、見え方にズレがあまりないほうが利き目です。

トリビアその5「視力1.1は存在しない」

多くの人は過去に視力検査を経験していると思いますが、視力の数値が飛び飛びになっていること、つまり、「視力1.1は存在しない」ことを知っている人は意外と少ないかもしれません。

日本における視力の数値は、0.1から1.0までは0.1、0.2、0.3……のように0.1ずつ刻まれます。しかし、1.0以降は1.2、1.5、2.0しかありません

こうなっている理由は、「0.1間隔で表示する必要性が低い」ためです。視力は、「ランドルト環(かん)」と呼ばれる「C」マークのすき間を見分けられるかどうかで調べられますが、厳密には、ランドルト環のすき間と目の中心でできる角度、「視角」の大きさで決まります。

じつは、視力が大きくなっていくほど、視角の変化は小さくなるので、視力1.0以上になると0.1刻みで表してもあまり違いがありません。そのため、細かく表示する必要がなく、1.0以降は1.2、1.5、2.0のみになるのです。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部 イラスト:ニッパシヨシミツ
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