抜け毛が増えたり、白髪が多くなったり、傷んだり……、なにかと気になる髪の毛の問題。今回は、そんな「髪の毛」に関する5つのトリビアを、赤須医院院長で皮膚科専門医の赤須玲子先生に教えていただきました。あなたの髪のお悩み解消につながるヒントがあるかも?
- 教えてくれるのは・・・
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- 赤須玲子先生
- 赤須医院 院長
山梨大学皮膚科、トロント大学病理学教室を経て、1998年六本木に赤須医院を開設。確かな臨床経験と美容に精通したきめ細やかな診療が定評。専門はニキビ、シミ、ホクロ、スキンケア全般。著書に『赤ちゃん肌に変わる「顔そり」スキンケア』『2週間でつるつる美肌になる本』(マキノ出版)などがある。医学博士、日本皮膚科学会専門医。
「女性専門皮膚科クリニック 赤須医院」のホームページ:
- INDEX
- トリビアその1「抜け毛が最も多くなる季節は、秋」
- トリビアその2「海藻を食べても、髪の毛は増えない」
- トリビアその3「髪の毛は1日平均で約100本抜ける」
- トリビアその4「フケの原因は、頭皮の乾燥ではなく皮脂」
- トリビアその5「髪の分け目がずっと同じだと脱毛になりやすい」
トリビアその1「抜け毛が最も多くなる季節は、秋」
真夏に比べると温度や湿度が下がってきて、過ごしやすくなる秋。しかし、じつは「抜け毛が増えやすい季節」でもあることを知っていますか?
抜け毛の原因は、過酷な夏の環境にあります。強い紫外線や汗によって頭皮がダメージを受け、その影響で初秋に抜け毛が増えるんです。シャンプーしたときの排水口や、朝起きたときの枕などにある抜け毛の量を見て、不安を感じた人もいるのでは? そんな人は、以下の4つの対策で頭皮を清潔に保ち、抜け毛を防止しましょう。
【対策1】シャンプーは夜に行う
朝シャンプー派の人もいるかもしれませんが、日中頭皮についた汗や皮脂、汚れを夜に落としてから寝ることが重要です。
【対策2】シャンプーのときは指の腹で頭皮をやさしく洗い、しっかりすすぐ
爪を立てず、指の腹で頭皮を傷つけないように洗うのがポイント。また、シャンプーのすすぎ残しがあるとフケの原因になり、フケが脱毛を引き起こすことが多いので、すすぎはしっかりと。
【対策3】頭皮マッサージで血流を良くする
抜け毛を予防するには、毛根の細胞にきちんと酸素を届ける必要があります。細胞に酸素を届けるのは血液なので、頭皮の血流を良くすることが大事。シャンプーの最中やあとに指やブラシなどを使って、頭の筋肉の緊張をほぐすようなイメージで頭皮のマッサージを行うと血流の改善が期待できます。また、先が硬すぎないブラシで頭皮を刺激するのも効果的。短髪でブラッシングの必要がない場合も、ブラシで頭皮を軽くトントンと叩く程度で頭皮の血行が良くなります。あまり力を入れすぎないように注意して、朝と夜に1分ほど行うのがおすすめです。
【対策4】シャンプー後はすぐに髪を乾かす
髪を濡れたままにしておくことはフケの原因になり、抜け毛を促進します。自然乾燥ではなく、タオルで水気をふき取ったらドライヤーで乾かしましょう。髪が長いとタオルで髪を擦るように乾かしがちですが、髪を傷める原因になるので、水分をタオルに吸い取らせるようにふき取る方法がおすすめ。ドライヤーの温度も高すぎないように気をつけて。
トリビアその2「海藻を食べても、髪の毛は増えない」
「最近、抜け毛がひどいから海藻を食べないと!」と、頑張って毎日食べている人もいるかもしれません。でも、「海藻を食べると髪が増える」という俗説は、残念ながら迷信です。
髪の毛の主成分はケラチンというタンパク質なので、タンパク質を摂取するようにしましょう。食事から摂取するのが難しい場合は、プロテインなどでもOK。髪の毛は1か月で約1cm伸びるのが平均的なスピードなので、効果を目視で確認するには最低1か月は続ける必要があります。
ちなみに、髪の毛は増えませんが、海藻にはミネラルが含まれていて、髪のツヤを形成するのに必要な成分が入っていることはたしかです。しかし、髪のツヤに関しても、わかめや昆布を毎日食べたくらいでは十分な量を摂取できているとはいえません。髪の毛に関する悩みを解決したいのであれば、栄養バランスの良い食生活を心がけたり、日頃から正しくシャンプーしたりすること(トリビアその1を参照)が肝心です。
トリビアその3「髪の毛は1日平均で約100本抜ける」
シャンプーをすると大量の抜け毛が。毎日この調子で抜けていくと、薄毛になっちゃいそう……。そんな不安を抱いている人、いませんか? 安心してください。個人差はありますが、成人の場合、1日平均で50~100本の髪が抜けます。健康な大人の髪の毛の数は約10万本ですので、100本抜けたとしてもわずか0.1%。全体に影響するような数ではありません。それでも、シャンプー後の抜け毛が気になるようであれば、シャンプーしたあとの排水口にたまっている髪の数を一度数えてみてください。100本以内なら気にしなくて大丈夫です。
100本以上の抜け毛があったり、髪を手でとかしたときに指のあいだに髪の毛が大量にまとわりついたりするような場合は脱毛症の可能性があるため、皮膚科の受診が必要です。ちなみに、脱毛症は円形(もしくは、より広範囲)に抜けるケースがあるのも特徴です。
また、「トリビアその1」にも関連しますが、髪も肌と同様に紫外線が天敵。紫外線のダメージで頭皮に炎症が起こり、抜け毛が進みやすくなるので、日傘や帽子で「髪の日焼け」対策を。髪にも使えるスプレータイプの日焼け止めをはじめ、ヘアオイルやヘアミルクなどを使うとUVカット効果が期待できます。
トリビアその4「フケの原因は、頭皮の乾燥ではなく皮脂」
お気に入りの洋服を着てお出かけ。ふと、横を向いて気づいた、肩に乗る白い粉……。せっかく気分が良かったのにフケを見つけてテンションガタ落ち、なんて経験をした人もいるのでは?
そもそもフケの正体を知っていますか? フケとは、古くなった頭皮がはがれたもののことで、いわば頭皮の垢。通常は頭を洗う際に流れ落ちるので、それほど目立つことはありません。ただ、皮脂が増えると、頭皮に棲みついている「マラセチア菌」という常在菌が異常に繁殖して頭がかゆくなったり、フケが増えたりします。
フケが出ると頭皮が乾燥しているのかな? と思いがちですが、じつはそうではありません。乾燥ではなく、皮脂が増えることでフケが発生するんです。ですから、油分を含んだ整髪料やオイルをつけるのも逆効果です。フケでお悩みの人におすすめなのは、マラセチア菌の増殖を抑える効果がある「ミコナゾール硝酸塩」を配合したシャンプー剤。ドラッグストアなどでも購入できますので、気になる人は使用してみると良いかも。
また、毎日頭を洗っているのにフケが全然減らないという場合は、頭皮が炎症を起こしている可能性もあります。一度炎症が起こると、頭皮のターンオーバー(皮膚が生まれ変わるサイクル)が早くなり、ちゃんと洗っていてもフケが出るようになってしまうんです。そうなったら、まずは皮膚科を受診して、炎症を抑える治療を受ける必要があります。放っておくと髪が薄くなったり、生えなくなったりする原因になるので要注意。フケの原因が「脂漏性湿疹(しろうせいしっしん)」(※生え際や顔面などの皮脂の分泌が盛んな部位にできる湿疹)の場合、フケの症状から次第に脱毛へと移行するので、とくに中高年の男性は早めに治療を行うことをおすすめします。
トリビアその5「髪の分け目がずっと同じだと脱毛になりやすい」
ずっと同じ髪型の人や、髪の分け目は絶対このラインって決めている人は気をつけて! じつは髪の分け目がずっと同じだと、脱毛するおそれがあるんです。脱毛の原因の一つに「牽引性脱毛(けんいんせいだつもう)」というものがあります。いつも同じ場所で髪を分けていて、次第にその部分の髪のボリュームが減ったり地肌が見えてきたりする症状です。
ポニーテールなどの髪をきつく結う髪型を続けたり、ヘアアイロンで髪を強く引っ張ったりすることも、脱毛や薄毛につながることがあるので、負荷がかかる髪型を習慣化するのはおすすめできません。定期的に分け目を変える、髪型を変えるといったことで牽引性脱毛を防ぐことができます。ただし、髪が長い人は、短い人よりも髪の重さで牽引性脱毛になりやすいので注意が必要です。