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セルフで手軽に!幸福感をもたらすオキシトシンの高め方

ストレスや不安で気分が沈んだときに、自分で肩をさすったり、親しい人に手を握ってもらったりして、心が安らぎ落ち着いた経験はありませんか。

人と人とが愛情や信頼を感じながら触れ合うとき、脳内で分泌されるホルモン「オキシトシン」。最近では、健康増進や美容に役立つホルモンとしても注目が集まっています。

本記事では、オキシトシンのうれしい働きや、オキシトシンの分泌を促すセルフタッチの方法について紹介します。

教えてくれるのは・・・
山口 創先生
桜美林大学リベラルアーツ学群 教授

1991年、早稲田大学人間科学部人間基礎科学科卒業。同大学院人間科学研究科修士・博士課程修了。同大学人間総合研究センター助手、桜美林大学リベラルアーツ学群専任准教授などを経て2014年より現職。臨床発達心理士。専門はポジティブ心理学、身体心理学、非言語コミュニケーション。『手の治癒力』(草思社)、『幸福感の法則』(さくら舎)など著書多数。

オキシトシンはどんなホルモン?

オキシトシンは、1906年にイギリスの脳科学者によって発見されたホルモンのひとつ。別名「愛情ホルモン」「絆ホルモン」「思いやりホルモン」とも呼ばれています。

もともとは出産時に子宮を収縮させたり、授乳期に母乳の分泌を促したりする作用で知られていました。ここ20年ほどの間で研究が進み、オキシトシンが脳でつくられると幸福感が高まることや、神経伝達物質として鎮痛や不安の軽減、他者への信頼感にも関与すること、人の社会行動に深く関わることなどがわかってきました。

オキシトシンは人間に限らず、動物では主につがいで子育てをする哺乳類にもみられます。そのなかでも、太古から人と暮らしてきた「犬」は、オキシトシンの分泌量が比較的多いといわれ、人との絆を深めやすい動物だといえます。

オキシトシンの働きとは?

幸福感を与える、社会性を高める、不安やストレスを和らげる働きを持つとされるオキシトシン。

最近では、オキシトシン濃度の高い人ほど角質水分量が多く、皮膚のバリア機能が高いことや、オキシトシンが毛の成長を促すなど、若々しい体づくりにも役立つことがわかってきました。

オキシトシンの働きの例

  • 生殖関連 :子宮を収縮させる、母乳分泌を促す
  • 成長関連 :毛の成長を促す
  • 行動面  :母性行動を促す、仲間同士の絆を強めるなど
  • 精神面  :幸福感・安らぎをもたらし心を癒す、不安の軽減、記憶力向上、親子やカップル間・仲間同士の愛情を安定させるなど
  • 体への影響:皮膚のバリア機能を高める、脂肪の代謝を促す、食欲抑制、骨の形成や筋肉の再生を助ける、ストレス反応の抑制(ストレス耐性を高める)、疼痛の軽減、免疫機能の強化など

どんなときにオキシトシンは分泌されるの?

オキシトシンは、五感(触覚、味覚、視覚、聴覚、嗅覚)を刺激して心地よさを感じたときに、脳内に放出されやすいとされます。

オキシトシンが分泌されるシーン例

  • 「かわいい」と思いながら子どもや動物と触れ合うとき
  • お気に入りのぬいぐるみやタオルを触っているとき
  • マッサージで人と肌が触れ合っているとき
  • 好きな人と一緒に過ごして幸せを感じるとき
  • 性的興奮を感じているとき
  • エクササイズや、マインドフルネス瞑想などのリラクゼーションを行っているとき
  • アロマを焚いてリラックスしているとき
  • 好きな音楽を聴いているとき
  • 美術館で美しいものを見ているとき
  • 利他的行動をしているとき(ボランティアや人の世話など)

オキシトシンの分泌を高めるのに、五感の中でもとりわけ有効なのが「触覚を刺激すること」。人と肌を触れ合う行為が最も効率よくオキシトシンを増やせます。ただし、相手に愛情や信頼感を感じているかどうかが重要なポイント。嫌々ながら人に触れてもオキシトシンは分泌されないのです。

マッサージを「受ける人」と「行う人」、オキシトシンが多く出るのはどっち?

人の肌が触れ合うマッサージでは、マッサージを受ける人と行う人でオキシトシンの分泌量に変化はあるのでしょうか。

山口先生が行った実験の結果、マッサージを行うセラピストのほうが多くのオキシトシンが出ることがわかりました。オキシトシンは利他的な行動によっても分泌されるので、ボランティア活動をする人や、人に寄り添ったり、優しい気持ちで人をケアしたりする職業の人は、より多く分泌されている可能性があります。

一人でできる!オキシトシンを高めるセルフタッチ

前述のとおり、オキシトシンを高めるには「触覚」を刺激する方法が最も効果的。人に触れてもらう方法は受身になりがちなので、ストレスや不安を感じるときには、自分で自分を癒す「セルフタッチ」が手軽でおすすめです。

皮膚にはもともと快適さを生み出す神経線維が数多く存在し、神経線維が興奮するとその感覚が脳に到達して、オキシトシンをたくさん分泌します。触り方のコツは、「1秒間に5~10cm程度動かす」ようにタッチすること。

ここでは、日常生活に取り入れやすい3つのセルフタッチの方法を紹介します。

1全身ひと筆書きセルフタッチ

頭から足のつま先まで、両手のひらを体のラインに添わせながら、ゆっくりと優しく触れていきます。ひと筆書きで、体の輪郭を描くように意識を集中しながらなでていくのがコツ。足まで到達したら、今度は足から頭までを同じように触れながら戻りましょう。洋服を着たままでも、立ち・座りどちらでもOKです。

2タッピングタッチ

両手の指の腹で、肩や背中、頭などを軽く弾ませるようにしてタッチします。心地よいと感じる力加減で、リズム良く楽しみながらタッピングしましょう。

タッピングタッチの詳しい方法は、こちらの記事でも紹介しています。

顔も体もやさしくトントン♪タッピングタッチ

タッピングタッチとは、心と体に働きかけるホリスティック(統合的)なケア。ただやさしく指先で顔や体に触れるだけなのに、なぜかじんわり癒される、シンプルな手法です。今回は一人で気軽にできる「セルフタッピング」をご紹介。慌ただしい日々の合間に、自分をやさしくケアしましょ。

https://helico.life/hgmweb/tappingtouch/

3アロママッサージ

アロマを焚きながら、クリームやオイルを使うマッサージなど、自分なりの心地いいタッチを追求してみるのもいいでしょう。これまでの研究で、ラベンダーなどのアロマを嗅ぐことでオキシトシンの分泌が増えることが報告されています。

オキシトシンを高めると、子育てや介護にもよい影響がある!?

オキシトシンは、子育て世代や介護を担う世代にも注目されるホルモン。子育てにおいては、脳が最も発達する生後1年ほどの間に親から愛情のあるスキンシップを受けると、子どもの脳がオキシトシンを出しやすいつくりに変わり、共感性が高い、ストレスに強いなどの効果が一生続くといわれています。生後1年を過ぎても、愛情を持って子どもと触れ合うことでオキシトシンの分泌を高めることは可能です。

オキシトシンは「同調し合うホルモン」とも呼ばれているので、親子でも夫婦でも、相手を思う気持ちとセットでスキンシップの時間を持つことが大切。育児や介護では肌が触れ合うようなケアがありますが、オキシトシンが高まった状態で触れ合えば、相手にも幸福感や安心感が伝わるでしょう。反対に、ストレスフルな状態で触れ合おうとするのは逆効果。また、触られるのが苦手な人もいるので、スキンシップを取る前に相手の同意を得ることも意識しなくてはいけません。

自分自身が子育てを楽しんだり、介護に前向きに取り組めるよう、まずは自分を幸せにする時間を持ちましょう。好きなアロマを焚いたり、好きな音楽を聴いたりしながらセルフマッサージをするなど、五感を楽しませるような刺激を意識的に取り入れ、オキシトシンを高めた状態で周りの人とのスキンシップをしてみてください。

セルフタッチで自分をいたわろう

人の絆を強くしてくれるだけでなく、健康や美容にも寄与するオキシトシン。幸福感を高める、社会性を高める、不安を和らげるなど、ストレス社会を生きる私たちの強い味方です。セルフタッチで手軽に分泌を促せたり、触れ合う相手にも、オキシトシン分泌による幸福感や安心感を与えたりできるなど、うれしい特徴があることもわかりました。紹介した3つの「オキシトシンを増やすセルフタッチ」を日常に取り入れ、心身ともに健やかな毎日を送りましょう。

CREDIT
取材・文:及川夕子 編集:HELiCO編集部+ノオト イラスト:澤村花菜
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