頭痛薬(鎮痛薬)は、多くの頭痛もちの方にとって頼れるアイテム。しかし、市販されている薬には数多くの種類があり、どれを購入すればよいのか迷ってしまう……という経験もあるのではないでしょうか。また、頭痛薬は正しく服用しないと、かえって頭痛を引き起こす原因になってしまうこともあります。
本記事では、成分ごとの特徴の違いや、服用における注意点などを解説。自分に合った頭痛薬の探し方が分からない方も、普段から頭痛薬を使用している方も、正しい選び方・服用の仕方を改めて学んでみませんか?
市販の頭痛薬の種類は大きく5つに分けられる
ドラッグストアや薬局には、数多くの頭痛薬が並んでいます。「どんな違いがあるのだろう?」と疑問に思ったり、購入するときに迷ったりしたことはありませんか? 一般に広く流通している市販の頭痛薬は、含まれている成分などによって大きく5つに分類できます。
アスピリン
【特徴】アスピリンは、NSAIDs(エヌセイズ、非ステロイド性抗炎症薬)といわれる薬の1つです。この成分は、痛み(炎症)の原因となる、プロスタグランジンという物質の生成を抑えることで痛みを取り除きます。
【副作用】プロスタグランジンには胃の粘膜をつくる役割もあるので、抑えることで胃粘膜が減り、胃が荒れる(胃腸障害が生じる)ことがあります。そのほか、アスピリンには血をサラサラにする働きがあり、鼻血が出たり、歯ぐきから出血しやすくなったりすることも。
【服用可能年齢】15歳以上
ロキソプロフェン
【特徴】アスピリンと同様のメカニズムで痛みを取り除く、NSAIDsの1つ。ほかの成分と比較して、効果が出るまでが速いのが特徴です。また、ロキソプロフェンは第1類医薬品に分類され、購入の際には必ず薬剤師から薬についての説明を受けなければいけません。
【副作用】アスピリンと同じく、副作用の胃腸障害に気をつける必要があります。
【服用可能年齢】15歳以上
イブプロフェン
【特徴】アスピリン、ロキソプロフェンと同じNSAIDsの一種で、痛みを取り除くメカニズムは同様です。イブプロフェンの特徴として挙げられるのが、効き目の長さ。また、前出のロキソプロフェンは第1類医薬品であるのに対し、イブプロフェンは第2類医薬品です。購入時の薬剤師からの説明は、義務ではなく努力義務とされています。
【副作用】前出の2つと同様、胃痛症状が出ることがあります。
【服用可能年齢】15歳以上
アセトアミノフェン
【特徴】アセトアミノフェンもNSAIDsの一種ですが、前出の3つの薬とは、痛みを抑えるメカニズムが異なります。なぜアセトアミノフェンによって痛みが抑えられるのか、じつはそのメカニズムは明確に判明していませんが、痛み刺激に対する信号が通過・到達する「視床」と「大脳皮質」という部位における「痛みに対する耐性」を高めるのではないかといわれています。
【副作用】前出の3つと違い、プロスタグランジンを抑えるというメカニズムではないので、胃腸障害が生じることはなく、そのほかの副作用に関しても少ないのが特徴です。
【服用可能年齢】昔から使用されている薬なので、安全性に関するデータが蓄積されており、薬剤師や医師の指導のもと、7歳以上の子どもも服用することができます。また、妊娠中の方も同様の条件で服用可能です。
漢方
【特徴】漢方はどのような頭痛か、あるいはどのような体質かによって服用するものが異なります。代表的なものとして、五苓散(ごれいさん)、釣藤散(ちょうとうさん)、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)、川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)などがあります。漢方の大きな特徴は「頭痛が起こりやすい体質を改善する」ことを目的に、長期的に(毎日)服用する必要があるという点です。
【副作用】頭痛のタイプに合わせて選ぶことが重要なので、それに合わない場合は効果が出ないことがあります。頭痛対策に限らず、漢方薬は西洋薬にくらべて副作用が少ないことが特徴です。これといって決まった副作用はありません。
【服用可能年齢】小児も服用可能。メーカーによって3歳以上となっていたり、2歳以下も量を減らして服用可能となっていたりすることがあります。ただ苦味があるので、飲ませ方には工夫が必要です。
「自分に合う」頭痛薬ってなんだろう?
ここまで解説してきた薬は、頭痛薬の「主成分」にあたります。薬局などで販売されている市販薬は、主成分以外の成分において、それぞれ細かい特徴が異なります(副作用で胃腸障害が出やすいものには、胃腸を保護する成分も一緒に含まれているなど)。自分自身で説明を読んで、自分に合いそうな薬を判断するのもひとつの手ですが、薬剤師(あるいは登録販売者)に相談してみるのもよいでしょう。
相談するにあたって大切なのが、「自分を知る」こと。自分の体質やそのときの体調、頭痛薬を使用するシチュエーション、そのほか服用している薬などを明確にし、薬剤師に「胃腸が弱いので胃腸に優しい薬がよい」「運転をするので眠くならないものがよい」「薬を飲むと眠くなりやすい体質である」「錠剤を飲むのが苦手」「○○という持病がある(持病で○○という薬を飲んでいる)」などと伝えることで、より自分に合った市販薬を紹介してもらいやすくなります。
また、体質によって、それぞれの主成分が効きやすい・効きにくいということもあるため、「以前○○が主成分の薬を飲んであまり効かなかった」などの情報があれば、それもあわせて伝えてみましょう。
その頭痛、薬の服用が原因かも。薬物乱用頭痛に要注意
頭痛薬を服用するにあたって、用法容量を守ることは大前提ですが、そのほかにも気をつけたいのが服用の頻度。長期間、高頻度で頭痛薬を服用し続けることによって、痛みに対する耐性がなくなっていき、これまでは痛みと感じなかった少しの刺激でも頭痛と認識するようになってしまう(閾値(いきち)が下がる)と考えられています。こうなると「薬物乱用頭痛」と呼ばれる、「頭痛薬を飲んでも痛みが治まらない」「薬を飲まないと耐えられないほどの頭痛がいつもある」という状態に。
頭痛が生じる日が1か月に15回ほどあり、そのうち10日間は頭痛薬を服用する状態が3か月以上続く場合には、薬物乱用頭痛の可能性が高いといえます。あてはまると感じたときは、脳神経内科や頭痛の専門外来がある医療機関を受診してください。
大切なのは、頭痛の根本原因に対処すること。医療機関受診の検討も!
ここまで、日常生活の中で頭痛薬を活用する方法を詳しく説明してきました。しかし、残念ながら頭痛薬はあくまで「いま発生している痛みを抑えるもの」であり、根本的な頭痛の原因に作用するものではありません。
緊張型頭痛がつらいのであれば、筋肉の凝りをほぐしたり、精神的なストレスを減らしたりと、頭痛の原因そのものを取り除くことが何よりも大切です。現在は、片頭痛の原因に直接アプローチする治療などもあります。頭痛によって日常生活に支障が出ている場合には、「頭痛なんて誰にでもあるだろうし……」と我慢せず、ぜひ一度、脳神経内科や頭痛外来など医療機関の受診を検討してみましょう。その際には、頻度やシチュエーションなど、自分の頭痛の特徴を普段から記録しておくと、スムーズな診療が期待できます。
頭痛を抑えるためには、根本的な原因を探り、対処することがもっとも大切ではありますが、頭痛薬は適切に使用すれば、頭痛もちの強い味方になります。これを機に、薬剤師などにも相談しながら「もしものときの味方」を探してみるのもよいかもしれません。
- 教えてくれたのは・・・
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- 早野 真希子先生
- アイセイ薬局 薬剤師
大学卒業後、対面カウンセリングを中心とした漢方薬局に6年間勤務。さまざまなお悩みを抱えた方の実際の声と、体調把握のために必要なヒアリングの技術を習得。
アイセイ薬局へ転職後、カウンセリング力を投薬へ生かしながら、現在は店長として勤務。