思春期から大人まで、幅広い年代の方を悩ますニキビ。朝起きたら、思わぬ箇所に大きなニキビができていてテンションがガタ落ち……、なんて日もありますよね。じつは、大人になってからできるニキビと、思春期にできるニキビでは、特徴や傾向に違いがあるのをご存知でしたか?
今回は、そんな「大人ニキビ」と「思春期ニキビ」ができやすい傾向をはじめ、ニキビのセルフケアのポイントや日常生活で予防につながる意識などをご紹介。日々の暮らしに予防とセルフケアをうまく取り入れて、ニキビの悩みを解消しましょう!
大人のニキビと思春期のニキビは別物
大人ニキビは、コロナ禍での生活リズムの変化が影響?
大人ニキビは、ストレス、生活習慣の乱れ、間違ったスキンケアなどの複合的な要因が重なるとできやすくなります。そうした要因により、肌の代謝のサイクルが乱れたり、外の刺激から肌を守る角層の「バリア機能」が低下したりすると、頬や顎などのフェイスラインにニキビができてしまう傾向が多いです。
また、「コロナ禍でニキビができやすくなった」という人も増えています。マスクによって肌が蒸れたり、擦れたりしてニキビができる人も少なくありませんが、テレワークでマスクをあまりつけていないにもかかわらず、ニキビができてしまう人も増えています。それは、極端に外出が減って1日の運動量が急激に下がったからかもしれません。適度に運動をしないと体があまり疲れないためなかなか眠れず、睡眠時間のサイクルにも影響を及ぼします。すると、ホルモンバランスや肌の代謝が乱れて、ニキビができやすくなります。このように生活リズムの変化は、わかりやすく肌に影響するのです。
思春期ニキビは、間食が原因かも?
思春期では、鼻を中心としたTゾーンにニキビができるケースが多くなります。思春期は男性ホルモン、女性ホルモンという性ホルモンの分泌が始まり、体形などが大きく変化していきます。そのホルモンによる皮脂分泌量の増加が、ニキビのできる原因の一つです。さらにもう一つ、代表的な原因として「ストレス」が挙げられます。特に、テスト前や受験前など、プレッシャーのかかる時期に思春期ニキビができてしまう学生はたくさんいます。ストレスでホルモンバランスや皮脂の代謝のサイクルが乱れるためです。プレッシャーやストレスと上手につき合っていくことが大切です。
また、思春期ニキビでは「おやつ」が原因になっていることも多いです。勉強で頭を使うとついつい甘いものが食べたくなります。ですが、過剰な糖質や脂質は皮脂分泌を高めます。「ちょっとだけ」と思いながら、毎日食べていると、じつはものすごい量の糖質や脂質を摂取していたというケースも少なくありません。お菓子や甘い飲みものが好きで、思春期ニキビに悩まされている学生がいたら、なるべく間食しないことを意識すると良いでしょう。かといって、すぐにおやつをやめるのは難しいですよね。そういった人は、間食に糖分や油分が少ない食べもの(ドライフルーツなど)を試してみるのもおすすめです。
気をつけたい、ニキビのセルフケアのポイント
大人ニキビも思春期ニキビも、対策としてまず思い浮かぶのがニキビ用の塗り薬だと思います。薬局で購入したり、病院で処方してもらったりすることもあるでしょう。ただし、あまり効果が感じられなかったというケースも……。そんなときは、以下の4つのいずれかが原因かもしれません。
① 塗る量が少なすぎる
塗り薬は塗る量が少なすぎると、効果が半減します。ですので、チューブの軟膏・クリームの場合では、大人の人差し指の先端から第一関節まで薬をのせた量(約0.5g)、ローションでは1円玉の大きさ程度が使用量の目安です。また、「治るんだけど、すぐに新しいニキビができてしまう」という人には、ニキビをできにくくし、肌の代謝を上げる「過酸化ベンゾイル」「アダパレン」という薬を医療機関では処方しています。ただし、使い始めてから2週間以内に乾燥や赤み、ヒリヒリとした感覚などが生じる一過性の副作用もあります。そのため、必要量よりも少なく塗ったり、塗ったり塗らなかったりを繰り返す人もいますが、それだと効果は期待できません。塗り薬は、肌に触れていないと効果が出ないので、用法・用量をしっかりと守って使うことが重要です。どうしても難しい場合は、一過性の副作用を軽減しながら塗る工夫もありますので、医療機関に相談してみましょう。
② 塗るタイミングが適切ではない
できれば洗顔後、患部に直接薬を塗るのが最適ですが、その後に化粧水や乳液をつけると薬を塗り拡げてしまうことがあります。ですので、お手入れの最後に塗るようにしましょう。ただし、クリームをつけた後に薬を塗る場合、塗る量が少ないと薬を吸収しにくい場合もありますので適量を塗りましょう。
③ 効果が出るまでの時間を誤解している
薬を使い始めてから、数日経って「効果が出ない」という人がいるようです。風邪の治療は1週間で治ることも多いのですが、ニキビの治療は違います。治療の効果が出るまでの期間は症状によっても異なりますが、2週間から1か月以上を想定しておきましょう。さらに、ニキビ跡の赤みは傷あとになっているため、治るまでにはしばらく時間が必要です。
④ 患部が気になり、よくさわってしまう
ニキビをつぶしたり、気になってさわったりしてしまう場合があります。炎症を助長し、症状が悪化したうえに、繰り返し炎症を起こしたりして、赤みやシミになるのでやめましょう。それでも気になって同じ場所を頻繁にさわってしまう人は、患部にパッチや絆創膏を貼るのもアリです。本来であれば、ニキビの箇所にパッチや絆創膏は貼らないほうが良いのですが、頻繁に直接さわるよりはまだマシです。
日常生活でできる、ニキビのケア
じつは、大人ニキビや思春期ニキビができる多くの原因は、日常生活の習慣に潜んでいます。予防のためにも、ニキビができにくくなる習慣を身につけましょう!
髪がふれないようなヘアスタイルに
気づかぬうちに花粉やホコリ、さらには菌などがつくこともある髪の毛。髪が肌に絶えずふれていると刺激になる場合があるので、おでこや生え際にニキビができやすい人は、できれば髪を上げるなど工夫しましょう。特に、前髪に整髪料をつけている方は、肌への刺激の観点から注意が必要です。また、長髪で首の後ろにニキビができてしまった場合は、なるべく髪をまとめて患部にふれないようにしましょう。
朝晩、こすらずに洗顔とスキンケアを
洗顔は朝晩、泡を立てて、こすらずに短時間で行いましょう。お湯は37度から38度が適温です。朝は時間がなくて、水洗いだけの方もいると思います。ですが、特に皮脂が多い方は、Tゾーンだけでもなるべく洗顔料を使って洗うようにしてください。
また、メイクをしている場合、しっかりとクレンジングしないのも基本的にNGです。寝る前にお化粧はきちんと落とすべき。拭き取りシートやジェルではなく、オイル・ミルク・クリームを使ったクレンジングがおすすめです。その後に、洗顔料を使って洗顔しましょう。
甘いものや辛いもの、脂肪の多い食品の摂りすぎに気をつける
思春期ニキビの原因としても挙げた、甘いものの過剰な摂取。糖質を多く摂りすぎてしまうと、エネルギーをつくり出すためにビタミンB群の消費が増えて必要な栄養が不足し、肌が荒れやすくなります。
疲労回復に影響を与えるビタミンBは、ニキビの原因となる脂質の過剰な摂取を調整する役割を担います。
さらに、コーヒーにミルクを入れる人も入れすぎは禁物です。ミルクに含まれる脂肪の摂取が皮脂の過剰な分泌につながりやすく、毛穴に汚れがつまってニキビができやすくなる可能性も。必要以上に入れないよう、気をつけましょう。
プロテインドリンクの量を調整しながら運動を
適度な運動は気分転換になり、ニキビの原因のひとつでもある「ストレス」が軽減するので効果的。加えて、プロテインを飲んで筋トレするのが習慣になった人も増えているようです。ですが、じつはプロテインドリンクがニキビ悪化の原因の一つになる可能性も。プロテインドリンクには、甘味料や脂肪分が含まれているものも多いので、摂り過ぎには注意しましょう。
「ニキビ」ができる原因やその対策方法を、初めて知った人も多かったのではないでしょうか。自分に合ったセルフケアや生活習慣を日常に取り入れて、ニキビができにくい状態をキープしましょう!
- 教えてくれたのは・・・
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- 服部 英子先生
- 南青山皮膚科 スキンナビクリニック院長・医療法人財団 花椿会理事長。
1998年、東京女子医科大学卒業。皮膚科専門医。日本皮膚科学会、日本レーザー学会、日本臨床皮膚科学会、日本アレルギー学会に所属。大学卒業後に東京女子医科大学病院やJR東京総合病院の皮膚科に勤務後、2005年より南青山皮膚科 スキンナビクリニックの院長を務め、2015年から理事長兼任。皮膚疾患全般、特にニキビ、アトピー性皮膚炎、色素性疾患の診断・治療に実績があり、自宅でできるスキンケアから患者様第一の切らない美容医療まで幅広い患者に対応した診療を行っている。