一年中、消毒液を使ったり、手洗いを頻繁にしたりするなかで「手荒れ」が気になっている人は多いのではないでしょうか。近くの薬局やドラッグストアに行っても、たくさんのハンドケア製品が並んでいて、何が自分にいいのかよくわからなくて困ったり、結局パッケージや値段で選んでしまったり……なんてことはありませんか。
今回は、自分に合ったものを薬局で選べるように、パッケージの記載の違いをまとめてみました。これを読んで自分にぴったりのハンドケアをしていきましょう!
(※本記事内にある各製品の情報は、2021年11月時点の情報です。)
薬局で買えるハンドケア製品にはどんな種類がある?
薬局でたくさん見かけるハンドケア製品ですが、いくつか種類があるのを知っていましたか? おおまかに分けると以下の3つに分類されます。
- 化粧品
- 医薬品
- 医薬部外品(指定医薬部外品)
「化粧品」とは、肌の保湿や洗浄などの効果を期待されているものです。一方、「医薬品」とは病気の治療を目的とした薬のことです。医薬品は、医療用医薬品と一般用医薬品に分けられます。医療用医薬品は、医療機関で医師が発行した処方せんにもとづいて薬剤師が調剤して渡すことが多く、一般用医薬品は、薬局などで自分の判断で購入できる薬のことを指します。
保湿に使える化粧品の代表的な製品
そして「医薬部外品」は、化粧品と医薬品の間の存在です。肌荒れやニキビを防ぐ、美白やデオドラントなどの有効成分を含む場合は「薬用化粧品」といわれることもありますが、それらも「医薬部外品」に位置づけられています。
ちなみに「指定医薬部外品」は、もとは医薬品だったもののうち、効果が緩やかなものを中心に医薬部外品に分類変更となったものです。
保湿に使える医薬部外品(指定医薬部外品)の代表的な製品
初期症状のときに選ぶとよいのはどれ?
手荒れの初期の痛みや痒みなどにおすすめなのは、「医薬部外品」または「指定医薬部外品」と書かれたものです。これらは、有効成分の含有量が医薬品よりも少なく、作用が緩やかといえます。とくに「保湿成分配合」の製品は、肌への負担が少ないので◎。店頭では化粧品と並べて陳列されることが多いため、表示を確かめたうえで、「保湿成分配合」という記載が入った製品を選ぶとよいでしょう。
また、「化粧品」は、「医薬品」や「医薬部外品」と比べて最も作用が緩やかなので、長期的な保湿を重視したスキンケアに向いています。したがってこちらも「保湿成分配合」という記載のある製品がおすすめです。
薬局でよく見かける成分の違いって? 医薬品の特性
ここまでの説明で「じゃあ、医薬品は選ばないほうがいいの?」と思われた方もいるかもしれません。もちろんそんなことはなく、含まれている成分の特性を知っておけば、症状に応じた効果を期待できるのが医薬品の利点です。
代表的な成分として「尿素」、「ヘパリン類似物質」、「抗ヒスタミン成分」、「白色ワセリン」がありますが、成分の持つ特性の違いはあまり知られていないので、それを紹介します。
- 尿素……保水作用があり、皮膚の表面をやわらかくする働きがあるので、皮膚が厚い肘、膝、かかとなどへの使用がおすすめです。ただし、皮膚のバリア機能が低下した箇所では刺激を感じることがあります。
- ヘパリン類似物質……血行促進と同時に保湿をしながら皮膚バリア機能の回復へと導きます。軟膏、クリーム、ローション、スプレーなど、形状が豊富です。ただし、血行が促進されるため、出血のある部位、くちびるや粘膜への使用は控えましょう。
- 抗ヒスタミン成分……強めのかゆみや炎症に対して、原因の一つであるヒスタミンを抑えてくれます。
- 白色ワセリン……油分が皮膚を覆い、水分の蒸発を防ぐ成分。低刺激のため、傷やあかぎれ、敏感肌などの人が全身で使いやすい製品です。一方でべたつきを感じやすい一面があります。
保湿に使える医薬品の代表的な製品
同じ製品でもクリーム、軟膏、ローションなど、さまざまなタイプがあるので、迷ったら薬剤師や登録販売者に相談してみましょう。
塗ったあとはどうすればいい?
せっかく自分に合った塗り薬やハンドケア製品を使っても、アフターケアがおろそかだと効果が出にくいので要注意。クリームやローションを塗ったら30~40分程度は水仕事や手洗いをしないようにするなど、塗った成分がすぐに洗い流されてしまわないように、生活リズムを意識して手荒れを改善していきましょう。
塗った成分を肌に浸透させるための工夫としておすすめなのは、「手袋をして過ごす」こと。たとえば、アトピー性皮膚炎の方が包帯を巻いて肌の保護をするのと同じように、手袋が肌の保護をする役割を担ってくれます。上に書いたように、30~40分程度は手袋を着けたままでいるようにしましょう。
素材として望ましいのは綿などの天然繊維を使った手袋ですが、ビニール製などでも大丈夫です。ただしゴム製の場合は、ラテックス素材を含まない手袋のほうがアレルギー反応を起こすリスクを抑えられるでしょう。
また、昼間は軽い質感のローションやジェルを使い、寝る前には軟膏やクリームなどのしっかりしたタイプを使うなど、時間帯や行動パターンに応じた使い分けをするのも良いでしょう。
ちなみに、ハンドケアや塗り薬を塗る量としては、チューブの場合は人差し指の先端から第一関節まで薬をのせた量(約0.5g)。ボトルタイプの場合は1円玉の大きさ程度です。塗った箇所にティッシュを一枚くっつけても落ちてこない、これも適切な使用量の目安になります。炎症を起こしている場所に合わせてぴったり塗るのではなく、患部をきちんと覆うことができる量をしっかり塗りましょう。
いかがでしたか? 手荒れ対策はしたいけど、どれが自分の症状に合っているのかわからない、と困っていた方も、この記事を参考に薬局の棚を見てみてください。あなたにぴったりのものが見つかるかもしれません。なお、市販薬などで改善しないときは、皮膚科を受診してご相談ください。
- 教えてくれたのは・・・
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- 服部 英子先生
南青山皮膚科 スキンナビクリニック院長・医療法人財団 花椿会理事長。1998年、東京女子医科大学卒業。皮膚科専門医。日本皮膚科学会、日本レーザー学会、日本臨床皮膚科学会、日本アレルギー学会に所属。大学卒業後に東京女子医科大学病院やJR東京総合病院の皮膚科に勤務後、2005年より南青山皮膚科 スキンナビクリニックの院長を務め、2015年から理事長兼任。皮膚疾患全般、特にニキビ、アトピー性皮膚炎、色素性疾患の診断・治療に実績があり、自宅でできるスキンケアから患者様第一の切らない美容医療まで幅広い患者に対応した診療を行っている。