えっ!それってだめなの?抗菌薬が「使えなくなる」使い方
「え? かぜと言えば抗菌薬(抗生物質)じゃないの?」と思った人にぜひ知ってほしい、いま私たちに忍び寄っている大きな脅威。それは、抗菌薬の不適切使用が原因となって訪れる「抗菌薬が効かない細菌だらけ」の世界のことです。
助かるはずの病気で助からない!?
上記のような抗菌薬の不適切使用が続くと、体内にいる本来は無害な菌もダメージを受け、徐々に遺伝子の変異等が起こり、ついには抗菌薬の効かない細菌(薬剤耐性菌)に変化してしまうことがあります。こうした細菌は、普段は悪さをしませんが、免疫機能が低下したときなどに、身体に炎症を起こす感染症の原因になることがあります。命に関わる敗血症や髄膜炎などが薬剤耐性菌によって起こってしまうと、抗菌薬が効かず、これまでなら助かった命が助からない事態が起こり得るのです。
抗菌薬が使える未来のために。
薬剤耐性菌は現在進行形で出現しており、今のスピードで増え続け、何も対策を打たなかった場合には、2050年には薬剤耐性菌による死者が全世界で1000万人を超えると予測されています。これは、現在のがんによる死者数を超えるほどの数。助かるはずの病気で助からなくなる未来は、実はすぐそこに迫っているのです。抗菌薬を、本当に必要なときに使うことができる未来のために、私たちにもできることがあります。普段何気なく飲んでいるお薬の使い方、ぜひ一度見直してみませんか。
【監修】岸田 直樹 先生
(総合診療医・感染症医/Sapporo Medical Academy 代表理事)
感染症診療のエキスパート。感染症コンサルタントとして全国各地の医療機関のアドバイザーも務める。セルフケア教育で厚生労働省医政局長賞受賞。主な著書に『誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた』(医学書院)など多数。
ヘルス・グラフィックマガジンvol.46
「かぜ」より転載(2022年12月15日発行)