ザ・インフェクション 水虫の流儀
足の悩みといえば、水虫を思い浮かべる人も多いだろう。
水虫の原因は“白癬菌”と呼ばれるカビの一種。彼らはヒトの皮膚のタンパク質を栄養源として、温かく湿った環境を好んで感染・増殖する。
そう、つまりヒトの足裏こそは、彼らにとって最高の住処。
足裏で生きる、彼らを追ったーー。
目覚めの季節
「ついに僕らの季節がやってきましたよ。気候がよくなる春先からじわじわと活動を活発化させるのが僕らのお約束でしてね。この季節になると決まって足指の間が白くふやけてジクジクしたり、足裏や縁に小さな赤い水ぶくれができ始めるなんてこと、ないですか。それ実は、僕らの仕業かもしれないです。」
増殖、そして増殖
「高温多湿の日本の夏は、正直楽園です。汗で湿った靴下+通気性の悪い革靴なんかは最高に快適で。そうそう、水虫といえば『かゆい』と思われてますけど、大半の水虫って、実はかゆくないんですよ。ジクジク膿んだり、ポツポツした水ぶくれが破れて皮が剥けたり、あるいは皮膚が硬くなって時にひび割れたようになるってのが、水虫なんです。」
風とともに去らぬ
「時々僕らに薬を塗ってくる人がいるんですけどね。そういうときは僕ら、わりとすぐに活動を控えるようにしてて。すると、けっこう簡単に薬を塗るのをやめてくれるんですよ。治ったと思うんでしょうね。気温湿度が下がり始める秋口も同じで、僕らは徐々に活動を自粛するんですけど、するとやっぱり治ったと思うみたいなんですよ。ただ次の春を待っているだけなんですけどね。」
思わぬ活動場所
「冬は鳴りを潜めていることが多いんですが、最近は春のように生暖かい女性のブーツの中が居心地よくて、意外に活発でいられるんですよね。あ、そうそう、足裏で増えた僕らは垢とともに床やバスマットの上に散らばり落ちて、また別の人の足裏に付着して感染していくのが生存戦略なんで、足はあんまりこまめに洗わないでもらえると嬉しいです。」
予防の基本は毎日の入浴で足の清潔+ムレのない状態を保つこと。菌が付着しても感染が成立するまでには24時間程度かかるため、毎日洗っていれば通常は感染しない。
かゆくない水虫は少なくない。かゆみ以外にも気になる症状があれば早めに皮膚科受診を。放置すると爪にまで感染が広がり、より完治が難しい「爪水虫」になることも。
処方された薬は、症状がなくなっても2か月程度は根気よく足裏全体に塗り続け、白癬菌を根絶させる必要がある。症状が片足だけの場合も両足に塗るのが基本だ。
家庭内ではスリッパの共用は避け、バスマットの上にフェイスタオルなどを敷いて各人ごとにタオルを取り替えると、手軽に感染の広がりを押さえられる。洗濯は家族のものと一緒でOKだ。
※活動に季節性のないタイプの水虫もあります。
【監修】八百坂 遵 先生
(さくら皮フ科クリニック 院長)
皮膚科診療のエキスパート。地域に密着した診療を旨とし、日々の診療に取り組む。
さくら皮フ科クリニック: 東京都板橋区成増2-14-5 EH第二ビル2F
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ヘルス・グラフィックマガジンvol.52
「足の悩み」より転載(2020年6月17日発行)