降圧薬くんの憂鬱
生活習慣の改善だけでは血圧が十分下がらないときには、「降圧薬」が必要です。ところが、お薬を処方されても正しく飲まなかったり、途中でやめてしまったりする人、実はとても多いんです。その背景には、血圧や降圧薬に関する誤解や不安があるみたい。一つずつ解消して、降圧薬を血圧ケアの強い味方にしていきましょう。
降圧薬は医師が患者さんの状態に合わせて処方しますが、1種類だけで目標の血圧まで下がる人はわずかに3割ほどで、多くの人は2~3剤を併用しています。面倒かもしれませんが、薬の量を調整しやすい=副作用に対応しやすいといったメリットもあるんですよ。生活改善を並行すると薬の効きがよくなるので、減塩や運動もぜひ忘れずに!
何度でも言います、血圧を下げる目的は「将来の健康を守る」こと。「今」の血圧を一時的に下げることには、あまり意味はないんです。大切なのは、継続的な服用で生涯にわたって血圧を良好に保つこと。自己流に飲み方を変えたり中断したりせずに、疑問や不安があればぜひ主治医の先生や薬剤師に相談してほしいんです。
確かに、副作用がまったくない薬はありません。でも、現在日本で使われている主な降圧薬は、いずれもすでに長い間処方されている安全性の高いお薬で、正しく服用すればほぼ確実に降圧でき、かつ、予測できない重篤な副作用はまずありません*。定期的に診察を受けながらであれば、安心して続けられるものばかりなんですよ。
*降圧薬の副作用で最も多いのは「立ちくらみ」です。起床直後や食後、入浴時などに起こりやすいため、ゆっくり立ち上がるように心がけましょう。頻繁に起こる場合には主治医に相談しましょう。
でも、血圧が140/90mmHgを超えているなら、将来、心臓病や脳卒中を発症したり、そのために亡くなる心配があり、薬を飲むことによる不利益よりも、飲んで大きな病気を予防する利益のほうがずっと大きいことが、たくさんの研究で証明されているんです。降圧薬は “健康長寿薬” ――そんなふうに思ってもらえませんか?
【監修】 久代 登志男 先生
(一般財団法人ライフ・プランニング・センター理事長/日野原記念クリニック所長)
高血圧診療のエキスパート。健診を通じ、血圧ケアのアドバイスや診療、健康支援を行う。監修書に『健康図解 今すぐできる! 高血圧を下げる40のルール』(学研)など多数。
ヘルス・グラフィックマガジンvol.36
「高血圧」より転載(2019年12月16日発行)