0

気になるデリケートゾーンのニオイ…原因と正しいケア

なかなか自分ではチェックしにくいデリケートゾーンのニオイ。他人と比較するのも難しい場所なだけに、自分のニオイがどうなのか気になる……という人もいるでしょう。いつもと違うニオイがする場合には、腟炎や性感染症の可能性もあります。デリケートゾーンが臭う原因や婦人科受診が必要なケース、清潔に保つためのお手入れ法などについて、産婦人科専門医の稲葉可奈子先生にお聞きしました。

教えてくれるのは…
稲葉 可奈子先生
Inaba Clinic 院長

京都大学医学部卒。東京大学大学院にて医学博士号を取得。産婦人科専門医。双子含む四児の子育て中。産婦人科診療の傍ら、病気の予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や正確な医療情報とリテラシー、育児情報などを、SNS、メディア、企業研修などを通して効果的に発信することに努めている。著書に『シン・働き方 ~女性活躍の処方箋~』などがある。

[監修者]稲葉 可奈子先生:https://ina-cli.com/introduce/
Inaba Clinic:https://ina-cli.com

デリケートゾーンってどんなニオイが正常なの?

デリケートゾーンのニオイに関する悩みは、大きく2つのパターンに分けられます。一つは外陰部や腟などになんらかの異常があり、明らかに普段とは違うニオイがする場合。もう一つは、エチケットとして自分のニオイが気になるという悩みです。このうちエチケットとして気になるケースについては、心配ないことがほとんどです。

通常、健康な腟内にはたくさんの常在菌がいます。善玉菌として「デーデルライン桿菌(かんきん)」という乳酸菌の一種がすんでいて、そのおかげで腟内は雑菌が繁殖しないよう保たれています。乳酸菌が出す乳酸は少し酸っぱいニオイがするので、おりものから酸っぱいニオイがしてもそれは正常な状態です。

健康な腟内にいる「デーデルライン桿菌(かんきん)」という乳酸菌で腟内は雑菌が繁殖しないよう保たれています

かすかなニオイか、またはニオイがしても気にならない程度なら、正常な状態だといえます。そのほか「スソワキガ」といって、その人の体質によるニオイがすることがありますが、これも異常というわけではありません。

稲葉先生

普段の生活で、他人のデリケートゾーンのニオイに気づくことはほぼないのではないでしょうか。基本的には、生理やおりもの、外陰部のニオイが周りの人に気づかれることはほとんどないでしょう。スソワキガ(陰部の体臭)がある人でも、脇のように外部に露出しているわけではないので気づかれることはまずありません。もし他人に指摘されても、自分自身がニオイの変化を感じなかったり、おりももの変化や陰部のかゆみがなかったりする場合は、気にしすぎない方がいいでしょう。

デリケートゾーンのニオイの種類・原因は?

デリケートゾーンのニオイが普段より強く感じられる場合、その原因としては腟炎や性感染症、タンポンの取り出し忘れなどが考えられます。変なニオイがするといった変化のほかにも、陰部にかゆみがある、おりものの状態が普段と違うなどの症状が見られる場合は、婦人科を受診しましょう。

婦人科を受診する目安(デリケートゾーンのにおい・かゆみ)

おりものやデリケートゾーンの状態から考えられる原因や病気

おりものからいつもと違う強いニオイがしたり、かゆみなどの症状を伴ったりする場合には、腟炎や性感染症の疑いがあります。症状からわかる原因や病気をまとめてみました。

カンジダ腟炎

カンジダというカビの一種が腟内で増殖して炎症を起こす病気です。激しいかゆみが出たり、酒粕やカッテージチーズのような見た目のおりものが多くなったりします。ニオイはほとんどないか、あっても少し酸っぱいニオイがするくらいで悪臭を放つことはありません。初めてのときや再発を繰り返す場合には婦人科で診断を受けると安心です。

細菌性腟炎

性行為や間違ったケア、ストレスや睡眠不足などによる免疫力の低下などが原因で、腟内で悪い菌が増え、炎症を起こしている状態を細菌性腟炎といいます。陰部がかゆい・ヒリヒリ痛い、おりものの量が多い・異臭がするなどの症状から気づく人もいます。

萎縮性腟炎

主に閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、腟粘膜の萎縮や乾燥が進み、雑菌が繁殖しやすくなることで腟炎が生じます。その結果、悪臭を伴うおりものが出たり、陰部のひりつき、性交時の出血や痛みにつながったりもします。腟環境の年齢的な変化によるものですが、症状がつらく、日常生活に支障をきたしている場合には婦人科に相談しましょう。

タンポンの取り出し忘れ

タンポンを取り出すのを忘れたり長時間入れたままにすると、腟内で細菌が繁殖し、強いニオイや腟炎の原因になることがあります。婦人科で除去し、必要な処置を受けることでニオイは消えます。タンポンの誤った使用は、大変稀ですが高熱やショック症状などを引き起こすトキシックショック症候群(TSS)の原因にもなるので注意しましょう。

性感染症

おりものから普段とは違ったニオイがする、おりものの量が多い・色がおかしいなどの症状がある場合、性交渉がきっかけとなり「クラミジア」「淋菌」「トリコモナス」などの性感染症にかかっている可能性があります。ただ、ニオイから分かる場合はあまりなく、女性の場合、性感染症にかかっていても症状がなく、気づかずにいる人も少なくありません。しかし、性感染症は基本的に自然に治ることはありません。普段と違う症状があれば婦人科で検査を受けることが大切です。

主な性病の症状(女性の場合)

■ クラミジア:半数以上が無症状。おりものの増加、不正出血、下腹部痛、性交痛など
■ 淋菌感染症:多くは症状がない。おりものが増える、ニオイが強くなる、不正出血がある、下腹部痛、排尿痛、頻尿、性交痛など
■ 腟トリコモナス症:2〜5割が無症状。悪臭の強い泡状のおりものが増える、外陰部や腟内の激しいかゆみ、外陰部のただれ、排尿痛など

子どもを守るために知っておきたい「性感染症」のこと
子どもが性に関心を持つ年代になったとき、親が気になることとして「性感染症」の問題があげられます。近年は、梅毒をはじめ性感染症が若年層で増加傾向にあり、性感染症の拡大が懸念されています。

性行為のあとに何か異常があっても、子どもは親や学校に相談してくれるとは限りません。また大人のなかにも性感染症についてよく知らない人もいるでしょう。本記事では性感染症の予防や適切な対応を紹介するとともに、家庭でできる性感染症教育について、大阪府枚方市保健所の白井千香先生が解説します。
https://helico.life/monthly/240102sexeducation-disease/

スソワキガ

ワキガの原因となる「アポクリン汗腺」は、性ホルモンの影響を受け思春期頃から活発になる汗腺です。アポクリン汗腺は脇のほかに、陰部、乳輪などに分布しており、外陰部から分泌されるニオイをスソワキガといいます。ただ、アポクリン汗腺の大きさや数は遺伝に関連しており、ニオイの強さは個人差が大きく、気になる・ならないは人それぞれです。

稲葉先生

腟炎や、淋病、クラミジアといった性感染症では、症状があまり出ない場合や分かりにくいことが多々あります。かゆみから気づく人もいれば、おりものの異常で気づく人も。症状は分かりづらいですが、もし淋病やクラミジアなら治療が必要です。ニオイだけで判断するのは難しいので、「おりものやニオイがいつもと違ったら婦人科を受診」と覚えておいてください。

デリケートゾーンの正しいお手入れ方法

デリケートゾーンは清潔にしておきたいものですが、洗いすぎると腟の自浄作用を弱めてしまいかねないので注意しましょう。ビデやシャワーで過剰に洗ったり、タオルでゴシゴシと擦ったりはしないでください。

デリケートゾーンの正しいお手入れ方法

敏感な方はデリケートゾーン用のソープを使ってもいいですが、そうでなければ1日1回、入浴の際にボディソープで洗い、ぬるま湯で洗い流すことで十分清潔を保てます。ひだの間も優しく洗いましょう。

デリケートゾーンのお悩みQ&A

Q: 更年期など年齢によってニオイの変化はありますか?

A: 年齢による変化はありませんが、腟炎のリスクが高まりニオイにつながることもあります。
ホルモンの変動そのものがニオイに直結するというよりは、年齢を重ねていくと腟分泌物や腟内環境が変化していくため、閉経以降の年代では細菌性腟炎を起こしやすくなります。そのせいで、ニオイやおりものの状態が気になることがあります。不快な症状があれば婦人科で治療できます。

腟が乾く!40代以降は「ドライバジャイナ」に要注意
「ヒリヒリする」「性交痛がある」「においが気になる」など、人にはちょっと相談しにくいデリケートゾーンの悩み。このようなトラブルは、放っておくと日常生活に支障をきたしたり、深刻な症状を引き起こしたりすることも少なくありません。特に、腟の粘膜が乾燥する「ドライバジャイナ」は、40代以降の女性に多く見られ、意識しておきたい症状のひとつです。今回は、そんな「ドライバジャイナ」の原因と対処法について詳しく解説します。
https://helico.life/monthly/220910drysyndrome-vagina/

Q: デリケートゾーンの悩みには、ニオイのほかにどのようなものがありますか?

A: おりものの量が多くて困っている人もいます。
病気ではなく、体質的におりものの分泌量が多い人もいます。日常生活に支障をきたすほどであれば、生理痛の治療のための薬でおりものの分泌量も減ることがありますので、婦人科でご相談ください。

ニオイは人それぞれ、気にしすぎないことも大事

デリケートゾーンのニオイは、他人より本人が気にしすぎていることが多いようです。清潔にしようと思うあまり、洗いすぎるとかえって乾燥などのトラブルを招いてしまいます。

生理中はナプキンやタンポンの長時間使用を避け、こまめに取り替えるように注意しましょう。ムレやニオイの発生を防いで、デリケートゾーンを清潔に保つことにもつながります。一方で、嫌なニオイがしたりおりものの変化に気づいたら、性感染症など病気のサインと考えて、放っておかずに早めに婦人科で診察を受けましょう。

CREDIT
取材・文:及川夕子 編集:HELiCO編集部+ノオト イラスト:AZUSA
0

この記事をシェアする

関連キーワード

HELiCOとは?

『HELiCO』の運営は、アイセイ薬局が行っています。

健康を描くのに必要なのは「薬」だけではありません。だから、わたしたちは、調剤薬局企業でありながら、健康情報発信も積極的に行っています。

HELiCOをもっと知る

Member

HELiCOの最新トピックや新着記事、お得なキャンペーンの情報について、いち早くメールマガジンでお届けします。
また、お気に入り記事をストックすることもできます。

メンバー登録する

Official SNS

新着記事のお知らせだけでなく、各SNS限定コンテンツも配信!