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「痛風」の激痛に悶える前に!知っておきたい予防&対処法

痛風はかつて「ぜいたく病」とも呼ばれ、その病名の由来は「風が吹くだけで激痛が走る」という症状にあるともいわれています。男性に特に多い病気で、生活習慣などが大いに関係します。

痛風は、高尿酸血症という状態が進行することで発症するため、高尿酸血症にならないように、あるいは高尿酸血症とわかった段階できちんと尿酸値をコントロールすることが大切です。本記事では痛風の原因や治療法、日ごろから気をつけたい生活習慣について解説します。

教えてくれるのは・・・
内田 俊也先生
神田西口うちだ内科 院長

日本痛風・核酸尿酸学会痛風専門医。1978年東京大学医学部卒業。米国国立衛生研究所(NIH)への留学や併任総理府技官(昭和天皇侍医)、帝京大学医学部 腎臓内科学の教授などを経て2023年5月に神田西口うちだ内科を開業。
 
[監修者] 内田 俊也先生:https://kanda-uchida.jp/%ef%bc%92%e5%b9%b4%e7%9b%ae%e3%81%ae%e3%81%94%e6%8c%a8%e6%8b%b6

20~30歳代でも発症する痛風

痛風は、ある日突然足の親指などが赤く腫れ痛みが生じる病気で、その痛みは「風が吹くだけで激痛が走る」ともいわれるほど激烈なものです。1960年以前の日本では珍しい病気とされていましたが、アルコール摂取量の増加や食生活の欧米化によって患者数は急速に増加しています。

2019年に厚生労働省が行った国民栄養基礎調査によると、痛風患者は125万人、痛風のリスクとなる高尿酸血症患者は1,000万人にもおよぶと推定されています。

かつては50~60歳代での発症が多いとされていた痛風ですが、近年で発症が多いといわれているのは30〜40歳代です。

痛風の前段階「高尿酸血症」とは? 痛風になる仕組み

痛風の痛みが生じる前段階として、必ず「高尿酸血症」という状態になります。尿酸とは、プリン体といわれる遺伝子の骨格や代謝に重要な核酸が体内で分解されたあとにできる老廃物です。

通常、尿酸は尿から排泄されます。また、女性ホルモンは尿酸の排泄を促すはたらきがあるため、女性は男性と比較して尿酸値が上がりにくい傾向にあります。そのため、痛風は圧倒的に男性に多い病気なのです。

高尿酸血症はその名の通り、血液中の尿酸濃度が高い状態(7.0mg/dLを超えるもの)を指し、痛風のほか、尿路結石や腎障害の原因にもなります。なお、成人男性の約5人に1人高尿酸血症であるといわれています。

高尿酸血症が進行すると、血液中に溶け切らなくなった尿酸が関節内で小さな針のような鋭い形で結晶化して、刺激を与え、炎症を引き起こします。これが「痛風発作」です。足の親指のつけ根が赤く腫れて痛むことが多いですが、肘や膝、アキレス腱や手の関節などにも起こります。痛みや腫れのほか、関節や耳たぶにこぶのような「痛風結節」ができることもあります。

痛風になる仕組み

どのような方に痛風発作が起きやすいのか、明確なメカニズムはわかっていないものの、尿酸値を変化させる要因としては以下のことが挙げられます。

尿酸値を上げる原因①:食生活

肉や海産物は尿酸値を上昇させやすいのに加え、ラーメンのスープなどに含まれる、うまみ成分のイノシン酸も尿酸値を上げる要因になります。また、痛風患者の約60%に肥満があり、肥満度が高いほど尿酸値が高くなるため要注意です。

食品中のプリン体含有量

尿酸値を上げる原因②:飲酒

アルコールを摂取すると、尿酸値が上昇します。尿酸の元となるプリン体が多く含まれる、ビールにだけ気をつければよいと考える方もいますが、そもそもアルコール自体が尿酸値を上げる原因となるのです。

尿酸値を上げる原因③:筋トレ

筋トレや短距離走などの無酸素運動は、尿酸値を一時的に上昇させます。そのため、尿酸値のコントロールが上手くいっていない場合には、控えるように医師から指示されることもあります。対して、ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動では尿酸値の上昇は認められず、肥満度を解消するためにも積極的に行うとよいといえます。

尿酸値を上げる原因④:ストレス

ストレスも尿酸値を上昇させる可能性があるため、日常的にうまくストレス解消をしていくことが大切です。おそらく交感神経を興奮させることによる血流低下が原因と考えられます。

尿酸値を上げる原因⑤:遺伝的要因

特定の遺伝子が尿酸値に影響することがわかっています。これらの遺伝子は、「珍しい遺伝子で、尿酸値に強い影響を与える」ものと「よくみられる遺伝子で、尿酸値に弱い影響を与える」ものに大別されます。一方で、高尿酸血症でありながら痛風発作が起きない方が9割ほどいるようでそのほかの因子も重要と考えられます。

尿酸が私たちの体にある理由って?

尿酸は、痛風の原因として知られるので悪者扱いされがちですが、強力な抗酸化作用を持っており、体内で増え過ぎた活性酸素を消去する重要な役割を担っています。さらに、尿酸値が低い生物よりも尿酸値が高い生物のほうが寿命が長い、認知症になりにくいなど、適正範囲であれば良い面もあるのです。

痛風治療は、「炎症を抑える」「尿酸値を下げる」の2ステップが重要

高尿酸血症とわかった段階で、きちんと治療や生活改善などを行うのが理想ですが、それでも痛風発作が起きてしまった場合には、痛む箇所を冷やして、できるだけ心臓よりも上に挙げた状態を保ちましょう。しかし、そのまま放置していても痛みは続くため、必ず痛風を専門とする医療機関を受診しましょう。

痛風治療のポイント

炎症を抑える

痛風発作が起きた際にまず優先されるのは、尿酸値を下げることではなく、炎症を抑えることです。そこで実施されるのが、「NSAIDs(エヌセイズ)」という非ステロイド性の鎮痛薬を3日間という短期間で大量投与する「NSAIDsパルス」という治療法です。

火事の現場で大量の水をホースから一気に放出して鎮火するイメージで、まずは急性期の炎症を抑え込みます。ただし、腎機能が落ちておりNSAIDsを使用できない場合は、ステロイドを使用します。痛風発作による炎症が治まるまでは、個人差があるものの1~2か月ほどかかります。

尿酸値を下げる

こうした治療を経て炎症が落ち着いてから、尿酸値を下げる薬を服用します。尿酸値を下げる薬には「尿酸の産生そのものを抑える薬」と「尿酸の尿中への排泄を促す薬」の2種類があり、尿酸値が上がってしまっている病態を見極めてから、使い分けたり、併用したりします。

痛みがなくなった場合でも、尿酸値が6.0mg/dL未満になることを目指して治療を続ける必要があり、これを途中でやめてしまうと痛風発作が再発しやすくなります。それだけでなく、尿酸の結晶が血管の壁につくと、動脈硬化を進行させることもわかってきています。

尿酸値を6.0mg/dL未満にするまでには3か月ほどかかるため、痛風発作が起きてから炎症を抑えるまでの期間と合計すると、症状が安定するまで約半年ほどの時間をかけて、きちんと治療を継続する必要があります。その後も尿酸値が目標値にとどまっているか、観察を続けることが大切です。

痛風の予防に大切なことは?

痛風の原因となる尿酸値をコントロールするために、日ごろから気をつけたい習慣についてご紹介します。

痛風の予防ポイント

プリン体含有量の多い食材に気をつける

前述の表で示したプリン体が多く含まれている食材を意識して、食事メニューをセレクトしましょう。サプリメントに含まれていることもあるので、成分表示をしっかりチェックしましょう。

飲酒量を減らす

飲酒が尿酸値に影響を及ぼすことは前述の通りです。とはいえ、お酒好きの方がいきなり断酒するのはなかなか難しいもの。まずは1日の飲酒量を、男性なら純アルコール量20~30g、女性なら10~20gに収めるようにしてみましょう。

純アルコール20〜30gの目安は?

  • 日本酒(度数15%)では、180ml
  • ビール(度数5%)では、500ml
  • 焼酎(度数25%)では、約110ml
  • ワイン(度数14%)では、約180ml
  • ウイスキー(度数43%)では、60ml
  • 缶チューハイ(度数5%)約500ml、(度数7%) 約350ml

お酒の量とアルコール度数を入力すると純アルコール量が計算できるwebサイトなどを活用してみてください。

生活に運動を取り入れる

肥満を改善すると尿酸値を下げることが期待できるため、日ごろから運動を意識してみましょう。特にウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動を脈が少し速くなる程度の強度で1回10分以上、1日合計30~60分程度行うのが望ましいといわれています。たとえば、目的の駅の手前で降りて1駅分歩くなど、できる範囲で生活に運動を取り入れてみてください。

きちんと水分を摂る

尿酸は尿によって体外に排泄されます。また、体内の水分が足りていないと血中の尿酸の濃度が高まってしまうため、きちんと水分摂取をすることによって尿酸を下げることが期待できます。体格などにもよりますが、1日1.5〜2L程度を目安に水分摂取することを心がけてみてください。なお、一度に多くの水分を摂るのではなく、1日のなかでまんべんなく飲むことが大切です。

痛風発作が起こる前に生活改善を

痛風発作が起きてしまうと、その痛みで生活に支障が出るだけでなく、治療にも時間がかかります。尿酸値が高いと言われたことのある方や、健康診断の結果で尿酸値が7.0mg/dL以上だった方は、ぜひ痛風発作が起きる前に生活習慣の改善に取り組み、場合によっては痛風を専門とする医療機関の受診を検討してください。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:フクイヒロシ 図版:新藤麻実(linen inc.)
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