みなさんは、処方薬や市販薬をどう保管していますか? 保管場所まではあまり気にかけないことが多いかもしれませんが、適切な環境で保管できていなければ、薬の品質が低下して効果を十分に得られないだけではなく、服用することでかえって健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。
とくに子どものいるご家庭では、子どもが間違って口に入れたり触ったりしないよう、絶対に手が届かない場所で保管することが大切です。とはいえ、具体的にどこに薬を置けば安全といえるのか、迷うこともあるかもしれません。
“知っているようで知らない”薬に関する基礎知識や、薬との上手な付き合い方についてお伝えする、本シリーズ。第4回目は、薬の正しい保管方法と保管時の注意点について、薬の劣化のサインや使用期限なども踏まえてわかりやすく解説します。
- 教えてくれるのは・・・
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- 笠原 志乃さん
- 株式会社アイセイ薬局 薬剤師 アイセイ薬局東十条店
研修認定薬剤師/スポーツファーマシスト
患者さんのお話を親身になってお聞きすること、患者さんとの信頼関係を築くことを大切にしている。
また、シロップ薬や坐薬、点眼薬、注射薬などで冷蔵での保管が指定されるものがあります。
冷蔵保管が指定されている薬は、冷蔵庫内での置き場所にも気を配ることが大切です。冷蔵庫の奥のほうは冷気が直接当たりやすく、凍結する可能性があります。また、冷蔵庫の扉部分も開け閉めの際に温度変化が起こりやすいため、避けたほうがよいでしょう。
ちなみに、医薬品の規格基準書「日本薬局方」では、室温は1℃~30℃、冷所は1℃~15℃、常温は15℃~25℃と定められています。薬の添付文書や袋に記載された保管方法に目を通して、適切な環境で保管できるようにしましょう。
薬の保管時に気をつけたいこと
薬の保管は、場所だけではなく、保管の仕方にも気を配りたいところです。温度や湿度の変化、光の影響を防げる場所で薬を保管できていたとしても、管理の方法が間違っていると、使用期限内であっても品質の低下やトラブルを招きかねません。
子どもの誤飲を防ぐために
子どもが大人用の医薬品を誤飲してしまうケースは多く、薬の保管においてとくに気をつけたいことのひとつですが、子ども用のシロップ薬など、甘い味がつけられた薬を服用したことで「おいしいもの」として認識し、自ら誤飲してしまった事例も見られます(※1)。
※1:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 「医薬品・医療機器等安全性情報 No.330」参照
まだ手が届かないだろう、口にしないだろうという油断が、思わぬ誤飲を招くことも考えられます。実際に、棚など高い場所に保管していた医薬品を、子どもが自分で足場を持ってきて誤飲した事例もあります(※2)。向精神薬や気管支拡張剤、血圧降下剤、血糖降下剤など、子どもが口にすると重い中毒症状を引き起こしかねない薬もあるので、十分に気をつけましょう。
※2:一般社団法人 日本病院薬剤師会 「子どもによる医薬品の誤飲事故に注意」参照
また、処方薬については、家族間での共用、誤飲を避けるために、各々が別々の容器に保管することをおすすめします。
注意したい、薬の劣化のサイン
これまでお伝えしたように、薬は温度や湿度、光の影響を受けて品質が変わりやすくなります。では、薬の劣化に関しては、具体的にどのような変化に注意すればよいのでしょうか。
薬の劣化を防ぐうえでは、薬の容器や包装シートの役割を知っておくことも大切です。
薬の保管期限はいつまで?
そもそも薬はいつまで保管できるのでしょうか。また、使わずに余ってしまった薬はどうすればよいのでしょうか。
薬局で処方された薬については、処方時に指定された日数が使用期限です。使わずに残った薬があっても、使用期限を過ぎたものは基本的に処分しましょう。
薬は安全に使用してこそ、本来の効果を得られます。薬をどこに保管すればよいかわからないとき、薬の異変に気が付いたとき、薬が余ったときなど、困った際に気軽に相談できるかかりつけの薬局があると安心です。
子どもに薬を飲ませるときの注意点については、本シリーズの第3回でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
- 第3回「子どもに薬を飲ませるときの注意点とコツ」
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「子どもが病気になったとき、薬を飲ませるのに苦労した」。そんな経験はありませんか? 薬を飲むのを嫌がられると「無理やり飲ませても……」とためらってしまうこともありますが、正しく服用しなければ薬の効果を十分に得られず、病気が長引いたり悪化したりしかねません。https://helico.life/feature/medicinebasics-child/
薬の味や食感など、子どもが薬を嫌がる理由はさまざまですが、ちょっとした工夫で飲みやすくなることもあります。
“知っているようで知らない”薬に関する基礎知識や、薬との上手な付き合い方についてお伝えする、本シリーズ。第3回目は、子どもに薬を飲ませるときの注意点や、上手な飲ませ方などをわかりやすく解説します。
「薬剤師が教えます!お薬のキホン」第5回目は、おくすり手帳の活用法について解説をします!