きず・やけどは「消毒しない・乾かさない」って知ってた?
「すりむいた!」「うっかりやけどした!」そんなとき、とにかく消毒薬で殺菌して、できるだけ乾燥させて…なんて思っていませんか?その手当は、もはや過去のもの。痛くない・かゆくない・早く・きれいに治る、イマドキの手当のしかた、お伝えします。
従来の手当が「消毒して乾燥させ、かさぶたをつくる」のに対して、2000年頃から新しい手当法として徐々に普及してきたのが「湿潤療法」。患部を消毒せず、傷口からしみ出てくる体液で潤いを保つことで、体が本来もっている治癒のしくみを最大限に引き出し、より早くきれいに治す、きず・やけどの新しい手当法です。
生きた細胞は湿った環境でしか増殖できないので、かさぶたの下にもぐり込んで少しずつきずを治していく(かゆい・治りが遅い)
傷口が体液で覆われていると、きずの表面で細胞が増えて広がりやすく、きずがより早く・きれいに治る(痛みやかゆみが少ない)
→大丈夫。むしろ傷口の消毒は、百害あって一利なし、です。
消毒は、傷口の殺菌を目的に行われてきたもの。ところが当然ながら、消毒薬には人体の細胞と細菌の細胞の区別はできません。また、細菌の細胞は細胞壁という強固なバリアに守られていますが、人体の細胞にはそれがないため、人体の細胞のほうが先に破壊され、痛みを伴う上に、かえってきずが深くなってしまうことも。きずに対してまずすべきは、消毒ではなく洗浄。流水できずや周りについた汚れをしっかり流すだけでOKなのです。
→傷口からしみ出てくる体液こそ、天然の“修復液”だからです。
きずができると、傷口からジュクジュクした透明の体液が出てくるはずです。この体液こそが、細胞の増殖や活性化を促す「細胞成長因子」と呼ばれる物質を含む、いわば体が自らつくりだす“修復液”。ガーゼなどでこの体液を吸収してしまうことは、貴重な修復液をわざわざ吸い取って傷口を乾燥させるようなもの。体液で傷口が適度に潤った状態を保つことこそ大切なのです。
→乾燥もかさぶたも、治癒を妨げる要因です。
きずはその表面に残っている皮膚の細胞が増えて広がることで治っていくもの。傷口を乾燥させてしまうと細胞は死滅し、増殖が妨げられて、ヒリヒリした痛みを伴うとともに治りが遅くなってしまうのです。かさぶたは、実はこの死んでしまった皮膚の細胞の塊。かゆみや傷痕が残りやすくなる原因にもなります。
【監修】手島 玲子 先生
(てしまクリニック 形成外科・皮膚科 院長)
きずをきれいに治すエキスパート。子どもを対象とした湿潤療法の講座や、保護者向けの講座を開催するなど、積極的に湿潤療法の普及活動を行っている。
●てしまクリニック:東京都文京区小石川1-3-23-B1F
URL: http://teshima-hifu-keisei.com/
ヘルス・グラフィックマガジンvol.30
「きず・やけど」より転載(2018年7月17日発行)