ノミスギー海賊団の怪しい言い訳
「大丈夫」と思っているアナタにこそ知ってほしい、お酒と健康にまつわるホントのところをまとめました。
これまで、確かに少量の飲酒がよいとされる研究もありましたが、2018年に発表された195の国や地域の人を対象とした飲酒と健康に関する最新の分析論文では、ついに「健康のためにはまったく飲まないのがベスト」という信頼性の高い結論が報告されました。お酒好きには悲報ですが、少量でもやはり「酒は百薬の長」ではなさそうです。
寝しなに飲むお酒(寝酒)は、寝つきをよくする作用はあるものの、眠りを浅くし、睡眠の量と質の両方に悪影響を及ぼすため、眠れないときの対策としてはお勧めできません。寝酒が習慣化するとお酒への依存度が次第に高くなり、眠るために飲んでいるお酒のせいでアルコール依存症に至ることも。
アルコールが体内で分解されて生じる「アセトアルデヒド」は毒性物質で、これをさらに無害な物質に分解する力の有無で「お酒に強い・弱い」が決まります。実は日本人の約4割は分解する力がまったくないか弱い人(=飲んで顔が赤くなる人)。毒性物質が体内にとどまりやすいため、よりお酒の害を受けやすいと言えます。
お酒はがんや認知症など、実に200以上の病気やケガと関連しており、たとえば肝硬変は、生涯で摂取した酒量(エタノール)が約1トンに至ると発症することや、女性ではお酒を1滴でも飲むことが乳がんのリスクを高めることなどが明らかにされています。無縁そうにみえても、体は静かにお酒の影響を受けているのです。
お酒好きな人でも、アルコール依存症(旧称:慢性アルコール中毒〔アル中〕)と自分は無関係だと思っている人は少なくありません。けれども、アルコールへの依存性が生じるお酒の量には個人差があり、飲酒習慣がある人であれば、老若男女問わず、誰にでも発症のリスクがある、実は身近な病気なのです。
お酒好きにとって気になる健康診断(血液検査)の値に「γGTP」(肝機能を示す値)がありますが、実はお酒のせいで肝機能が低下していても、そのうち約10%の人はγGTP値が上昇しないことが知られています。つまり、健診で正常値でも油断は禁物。また、正常値内でも年々値が上がっている場合は特に要注意です。
【監修】吉本 尚 先生
筑波大学医学医療系地域総合診療医学准教授
従来精神科で行われてきたアルコール依存症の治療を総合診療医の視点から行う、アルコール関連障害診療のエキスパート。大学病院内などに「アルコール低減外来」を開設している。
ヘルス・グラフィックマガジンvol.42
「飲みすぎ」より転載(2021年12月15日発行)