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衝突しやすい思春期の親子関係、どうすればよくなる?

話しかけてもろくに返事もしない、ちょっとした一言に過敏に反応する、何を言っても反抗的でイライラ……。思春期の子どもとのコミュニケーションは、どこの家庭もなかなか一筋縄ではいかないもの。

子どもの思春期は家族にとって難しい時期ですが、保護者が40代以上の場合、自身の更年期の不調と子どもの思春期というお互いに不安定なタイミングが重なり、不穏な空気が長引いてしまうことも。

では、誤解や摩擦が生まれやすい、思春期の親子間コミュニケーションを円滑にするためには、どうすればよいのでしょうか。親子関係の相談やカウンセリングを得意分野とする臨床心理士・公認心理師のたかだちかこさんに教えてもらいました。

教えてくれるのは…
たかだ ちかこさん
臨床心理士・公認心理師

心療内科や児童相談センター、学校、被害者支援施設など、多くの現場で相談や心理検査を経験。親子・夫婦関係・子育て・発達障害・ハラスメントやDV被害など様々な相談を得意としている。うららか相談室にてビデオ・電話によるオンラインカウンセリングを受付中。
 
うららか相談室HP:https://www.uraraka-soudan.com/
[監修者]たかだちかこさん:https://www.uraraka-soudan.com/counselor/102

思春期にこじれやすい親子のタイプは?

まず、思春期と一言でいっても、どんなかたちで「思春期らしさ」が現れるかは個人差があります。反抗的に振る舞う子もいれば、無口になって自分の殻に閉じこもる子もいるでしょう。思春期らしさの現れ方は、その子自身の性質や、親の性格との組み合わせにも左右されます。

カウンセラーとしてさまざまな思春期の親子の悩みに向き合うたかださんは、「思春期に親子関係がこじれる」パターンには、次のような組み合わせやタイプの傾向があると教えてくれます。

1のんびりマイペースな子に、せっかちな親がモヤモヤ

マイペースでのんびり屋さんなわが子を見て、「なんでもっと頑張らないの!」「いつになったら宿題をやるの!?」と親側がついイライラしてしまう。テキパキと物事をこなすのが得意で、少々せっかちな親御さんほど、自分と正反対に振る舞うわが子を見てあせってしまい、親子関係がこじれるケースは多く見受けられるそう。

保護者が気をつけたいポイント

親側が気をつけておきたいのは、お子さんの性質を否定しないこと。「どうしてあなたは●●ができないの」と日々しつこく否定の言葉を投げ続けると、子どもは徐々に自信を失ってしまいます。その子なりのペースで考え、行動し、その結果としてなんとか帳尻が合っているのであれば、手と口を出すのはぐっとこらえて見守りましょう。

2「外ではいい子⇔家ではダラダラ」なわが子に、親がモヤモヤ

「学校や塾ではそれなりに頑張っているようだけれど、家ではスマホや動画を見てダラダラしてばかり。うちの子、このままで本当に大丈夫でしょうか?」と嘆く親御さんも少なくありません。ですが、外で頑張って家では完全にスイッチオフできるのは、オンオフを上手に切り替えられているということ。健全に育っている証拠ですので、見守ってあげましょう。

保護者が気をつけたいポイント

つい口を出してしまいたくなる親御さんは、「頑張り」を実際に見る機会を持つようにしましょう。学校行事や部活の試合、習いごとの発表会などはできるだけ参加し、子どもの頑張りを目の当たりにすれば、「いつもはこんなに頑張っているんだ」とうれしい驚きを感じられるはず。「家でも同じように頑張って」とプレッシャーをかけるのではなく、頑張りを認めることが大切です。

3とにかくあれこれ口出しをしてくる親に、子がモヤモヤ

子どもの性格や性質に関係なく、とにかく親が子どもの言動を細かく把握・管理して口を出さずにはいられない家庭もまた、親子関係がこじれやすい傾向にあります。子どもが話したテーマについて、子ども自身の意見を聞く前に「お母さんはこう思うけど」「お父さんのときはこうだった」とアドバイスしてしまう親御さんは注意が必要かもしれません。

保護者が気をつけたいポイント

親側が喋りすぎない。このパターンの注意点はこれに尽きます。良かれと思っての指摘やアドバイスも、子どもから見ればうんざりするもの。「次からは親にこの話をするのはやめよう」となってしまうかもしれません。雑談が説教になる、自分が話しすぎてしまう自覚がある親は、意識して「聞き役」にまわるよう心がけてください。

小・中・高、子どもの年代別コミュニケーションの秘訣

ここまでは「思春期」と一括りにしてきましたが、小学生と高校生では、同じ思春期でも親との向き合い方が変わってきます。もちろん個人差はありますが、子どもを小学生・中学生・高校生の年代別に分けたとき、どのようなコミュニケーションを心がけるとよいかもぜひ知っておきましょう。

小学4~6年生

思春期のファーストステージにあたる小学校高学年は、「家族で楽しく会話ができる」状態であれば十分です。「今日学校でね、こんなことがあったんだ」と子どもが話始めたら、「へえ、そうなんだね」「それでどうなったの?」としっかり耳を傾けてあげてください。途中で遮られたり否定されたりすることなく、自分の話や意見を受け止めてもらえる安心感は、その後の信頼関係を構築するうえで重要な経験になります。

一方で、善悪の判断があやふやで、口が悪くなるのもこの時期の子どもの特徴です。差別的な発言や偏見を悪気なく口にしているのであれば、「そういう言い方は誰かを傷つけることもあるよ」とやんわり訂正するようにしましょう。

中学生

中学生ともなると、学校や友人関係のことを親にまったく話さなくなる子、家では必要最低限のことしか言わなくなる子も珍しくありません。絶対的存在だった親を、一人の人間として冷静に見るようになるのもこの年代です。

「子どもには偉そうなことを言うわりに、親自身だってできてない部分がある」と気づくことで父母の存在が疎ましくなり、いままで親を無条件に信じ切っていた自分に嫌悪感や自己否定感を感じることもあります。親からすれば反応の鈍さや薄さがもどかしいかもしれませんが、わが子が自分の世界を守りながら大人になろうとしている通過儀礼のステージだと捉えて、我慢強く見守りましょう。

親側は無理に話させようとはせず、本人の意思を尊重してフラットな態度を心がけるのがポイントです。そのうえで、「困ったときは相談してね」「いつでも助ける準備があるからね」というメッセージをさりげなく送り続けてください。

高校生

高校生ともなると活動範囲が一気に広がり、体格も大人とほぼ同じになります。もちろん判断能力はまだまだ危うさが残りますが、基本的には対等な個人として向き合うのがいいでしょう。

一方で、アルバイトができるようになり、外部からの誘惑が増える時期でもあります。脱毛エステのような「契約」が絡む判断は、「必ず親に相談してからにしてね」と常日頃から伝えておくほうが安心です。もし、子どもが軽はずみに契約してしまった場合でも、怒る前に「相談してくれてありがとう」と一言伝えることが大切です。

いずれの年代にも共通するのは、適度な距離を保ちつつ、子どもを一人の人間として尊重すること。その姿勢が子どもにきちんと伝われば、難しい時期はそう長くは続かないはずです。

親子ゲンカするときにやってはいけないこと

ひとつ屋根の下で毎日顔を合わせる家族ですから、親子ゲンカが起きる日も当然あるでしょう。ケンカはあって当たり前のもので、悪いことでは決してありません。

ただし、思春期の子とケンカをするうえでは、次の2つを行わないよう注意が必要です。

1人格否定はしない

「お母さんはこう思うよ」「私は違う意見ではあるけど、あなたはそう思うんだね」などの意見を言うこと自体はまったく問題ありませんが、「そんな子に育てた覚えはない」「なんでそんな子になっちゃったの」「産まなければよかった」など、子どもの存在を全否定するような言葉は避けましょう。

逆に、感情的になった子どもが親に辛辣な人格否定の言葉を投げかけてくることもあるでしょう。その場合は無理に我慢せず、「そんな言い方をされると傷つく」「なぜそう思ったのか教えて」と率直に伝えても構いません。その場では伝えられなくても、数日後に冷静になってから話してみてもいいかもしれません。

2翌日に引きずらない

どれだけ激しい言い合いになっても、ケンカを長く引きずらないことも重要です。子ども側があからさまな無視の姿勢を貫いても、親は翌日には普段通りに接するようにしましょう。その繰り返しによって、子どもは「どれだけ意見をぶつけても元に戻れる、大丈夫なんだ」と学んでいくはずです。

思春期と更年期が重なったら?

子どもが思春期に突入する時期に、親も40~50代を迎えて心身の不調を感じ始める時期と重なるご家庭もあるでしょう。更年期に入り、性ホルモンのゆらぎに悩まされる人もいます。そうでなくとも、慢性的な疲労や心身の衰えを感じる年代です。

子どもも大変だけど、親だって大変。そんな状況にある場合は、無理に抱え込まず、素直に子どもに不調であることを打ち明けてもいいかもしれません。

「10代が思春期と呼ばれるように、人生には更年期っていう時期もあって心や体がしんどくなったりするんだ。お母さんも、いまそうかもしれない」と隠さずに伝えてみる。そのうえで「だから、しんどいときはちょっと手伝ってくれるとうれしい」とお願いする。こんなふうに対等な目線で向き合うことも、親子のコミュニケーションのかたちです。

更年期の不調が理由でなくとも、「しんどい」と感じたときは正直に伝えて助け合い、できるだけ休めるようにする。そんな家族の在り方を子どもに伝えることも、親の大切な務めであるはずです。

ただし、子どもによっては親の加齢や更年期に拒否反応を起こし、揶揄するような発言もするかもしれません。その場合は、「あなたの体が思春期で変化していることをパパやママにからかわれたら、どう思う? それと同じだよ」と率直に伝えてもいいでしょう。成長も加齢も、生き物の一生のなかで起きる自然な変化なのです。

子どもの思春期が親に教えてくれること

ここまで紹介した思春期の子とのコミュニケーションの秘訣を読んで、「そうそう、頭ではわかっているんだけど、なかなかうまくできない」と感じた保護者の方も多いのではないでしょうか。

大丈夫、子育て中の親は、皆さん同じように感じているはずです。

腹落ちまではできていない、それでもとりあえず頭では理解できた。まずはそれで十分。そこを出発点に、日々の繰り返しのなかで少しずつ実践してみてください。それを続けていくことで、健やかな親子関係がつくられていくはずです。

子どもは親とは別の人格を持つ別の人間であり、子どもには子どもの人生がある。わが子の思春期は、親自身がそのことを学ぶ大切なステージでもあるのです。

CREDIT
取材・文:阿部花恵 編集:HELiCO編集部+ノオト イラストマンガ:原あいみ
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