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子どものスマホデビュー、購入前に親が知っておきたいこと

現代の子どもは、習いごとや友達付き合いから小学校高学年〜中学生頃にスマートフォンデビューすることが多いもの。一方で、まだ判断力が危うい未成年はスマホ依存になりやすかったり、ネットでトラブルに巻き込まれたりなど、適切に使用するためにはいくつかの注意点があります。

思春期の子どもがスマホを利用するうえで、保護者が気をつけておくべきこと、ルールの決め方とは?

子どものスマホデビューが増える新年度を前に、10代のネット利用の実態やトラブル対策に詳しいITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さんに、保護者が注意すべきポイントについて具体的に教えてもらいました。

教えてくれるのは…
高橋 暁子さん

ITジャーナリスト。成蹊大学客員教授。SNSや情報リテラシー教育が専門。SNS、10代のネット利用実態とトラブル、スマホ&インターネット関連事件等をテーマとして、『あさイチ』『クローズアップ 現代+』(いずれもNHK)他、テレビ、雑誌、新聞、ラジオ等のメディア出演多数。
 
[監修者]高橋 暁子さん:https://www.akiakatsuki.com/

スマホは「買う前の話し合い」が大事

これからお子さんのスマホデビューを控えている、もしくはお子さんが「自分のスマホが欲しい!」と言い出したご家庭であれば、ぜひ実践してほしいのが「購入前の話し合い」です。

なぜかというと、スマホはいったん持ってしまうと後戻りができないから。

高橋さん

スマホは本体が高額かつ、月々の利用料金も発生します。「みんなが持っているから」となし崩し的に持ち始めてしまうと、どうしてもダラダラした使い方になりがちです。だからこそ、なぜスマホが欲しいのか、何のために必要で、どうやって使うつもりなのかを、子ども自身にしっかり考えてもらい、本人の言葉でプレゼンしてもらいましょう。
 
「やりたいゲームがある」「友達とLINEがしたい」「塾の送り迎えで連絡が取りたい」など、子どもはさまざまな理由をあげてくるはずです。中学生ともなれば習いごとや部活の連絡網がLINEの場合もあるでしょう。保護者として、まずは子どもの主張に耳を傾けてください。
 
そのうえで、「たしかに必要かもしれないね」と納得できる部分はうなずきつつも、「ゲームによって睡眠や勉強の時間が削られない?」「SNSにはこんなリスクもあるから心配だな」など、大人としての意見を伝え、どうすればそれらの懸念をクリアできるのかを一緒に探ってみましょう。
 
いきなりスマホを買い与えるのではなく、一緒に使い方のルールをつくっていく。スマホは、買う前のこのステップが、じつはとても重要なのです。

事前に話しておきたい心配ポイント

  • 勉強がおろそかにならないか?
  • 睡眠時間が減らないか?
  • 視力や姿勢は悪くならないか? など

たとえば、「ゲームをやりたい」と主張する子どもに対して、「ゲームのやりすぎで勉強時間がなくなったら困る」と親が心配しているのであれば、「ゲームは1日1時間までにする」と利用時間を制限する。

「夜遅くまでSNSに夢中だと、睡眠時間が短くなりそう」と心配なのであれば、「夜9時を過ぎたら、スマホに触らない」「寝るときは、部屋にスマホを持ち込まない」などのルールを決める。

このように、さまざまな心配ポイントを親子で一緒に話し合い、いったんルールを決めてから購入することをおすすめします。

高橋さん

気をつけたいのが、最初から絶対に守れそうもない厳しいルールにしないこと。「これなら守れそうだな」と思えるくらいの設定でスタートすることがポイントです。
 
一度決めたルールを絶対視する必要はありません。「塾帰りの夜9時以降にスマホが使えないのは不便」「ゲームが1日30分では短すぎる」などの不便や不満が出てきた場合は、その都度、親子で話し合ってルールを変更していきましょう。
 
また、これはスマホに限らない話ですが、オンラインゲームはその道のプロである企業の大人たちが、「どうすればユーザーに夢中で遊んでもらえるか」を本気で考えて工夫を凝らし、世に送り出している娯楽です。子どもが夢中になってしまうのは、ある意味では当たり前のこと。その前提を踏まえたうえで、子どもの意志任せにせず、ルールを話し合いましょう。

スマホ依存にさせないための最低限の設定は?

食事や睡眠、学業などの生活よりもSNSやインターネットを見ることを優先したり、スマホが使えない状況に不安を感じたりする状態は、「スマホ依存」ともいえます。このような状態に、医学的な定義や診断基準はまだないものの、若年層ほどこうした傾向が見られやすいという研究や調査報告があります。

子どもにスマホを持たせる際には、年齢にあわせた適切なフィルタリングや一定の機能制限が必要です。通信キャリアは18歳未満のユーザーとスマホ契約する際は、有害サイトなどへのアクセスを制限する「フィルタリング」設定が義務とされていますが、それ以外にも購入後は次の設定をしておきましょう。

ペアレンタルコントロール

保護者の端末から、子どものデバイスやアカウントを管理する機能。利用時間の上限設定、不適切なコンテンツのブロック、アプリのインストール宣言、プライバシーの保護などの設定を保護者が管理できる。

スクリーンタイム

デバイスや各アプリの起動できる時間帯、利用時間などを管理・制限する機能。自分のデバイスでどのくらいの時間を費やしているのかを確認できるので、長時間利用の防止に役立つ。

いずれもiPhone(スクリーンタイム)、Android(ファミリーリンク/デジタルウェルビーイング)のどの端末でも設定できます。スクリーンタイムは年齢に関係なく使えるため、スマホのダラダラ見を防ぐために利用している大人も多いでしょう。

スマホの「適切」な利用時間、正解はある?

ペアレンタルコントロールやスクリーンタイムなどの機能は、あくまで最低限の初期設定であり、万能の策ではありません。「フィルタリングや初期設定はしたから、あとは好きに使っていいよ」と放置してしまうのは少々危ういといえるでしょう。

デジタルネイティブの子どもたちは、ともすれば親の世代よりもデジタル機器の扱いに長けています。「親が設定したパスワードをいつの間にか子どもがこっそり突破して、スクリーンタイムを解除していた」というケースもよくあるそう。だからこそ、どうすればスマホの使いすぎを防げるか、適切な時間制限の決め方が重要になってくるのです。

「ゲーム時間は最低1日3時間は絶対に欲しい!」
「ダラダラとTikTokを見る時間が癒やしだから、寝る時間ギリギリまで見たい!」

このような子ども側の主張に対して、どこまでがOKでどこからがNGと線を引くのは、なかなか難しいでしょう。親子で見解の相違もあるはずです。

高橋さん

そこで私がおすすめしているのは、子どもの1日を円グラフにして「可処分時間」から逆算する方法です。
たとえば、中学1年生の平日で考えてみましょう。毎朝起きる時間、学校に行って帰って来る時間、部活、塾や習いごとの時間、宿題をする時間、食事をする時間、お風呂に入る時間、ベッドに入る時間などを、円グラフにして書き出してみてください。
 
親の目から見て「睡眠時間が7時間だと翌日いつも眠そうだから、8時間はあったほうがいいな」と感じているのであれば、それを子どもにも伝えて、就寝時間を決めてしまいましょう。睡眠不足は体調不良だけでなく、記憶力や集中力の低下にもつながります。睡眠中は成長ホルモンが分泌される大事な時間でもありますから、ここは本人が「6時間睡眠でも大丈夫」といっても極力、削るべきではないでしょう。

そのようにタイムスケジュールを埋めていくと、自由時間がどれくらいか見えてくるはずです。中学生であれば平日はおそらく1〜3時間程度ではないでしょうか。タイムスケジュールを可視化させたうえで、「じゃあこの可処分時間から、どれくらいをスマホを見る時間にあてたいか」と話し合ってみるとよいでしょう。

塾がある日であればゲームは1日1時間に、部活がない土日はもっと長くしてもOK、というように、本人が納得できる「適切な使用時間」が浮かび上がってくるはずです。

「YouTubeを見ながらでも勉強はできる」は本当?

ここからは、高橋さんと中学生の息子さんの実体験を紹介しましょう。

高橋さん

その結果を踏まえ、しょんぼりした息子とあらためて話し合った結果、「あったらどうしても見てしまうから、テスト期間中はタブレットを親に預ける」と本人から言い出したので、現在はそのルールで運用しています。
 
あのとき、私が無理やりタブレットを取り上げていても、本人は納得しなかったでしょう。失敗は大きな学びにもなりました。10代はまだまだ未熟な時期ですから、経験してみないとわからないことがたくさんあるのが普通です。大切なのはそのことに、自分で気づくこと。
 
ちなみに、スマホやタブレットの使用時間が長くなるほど脳の発達が損なわれ、テストの正答率が下がるなどの悪影響があることは各種の調査結果でも明らかになっています。こうした情報を親子で共有するのも大切でしょう。

一方的な「スマホ禁止ルール」は思春期の子に逆効果

スマホの使い方に限った話ではありませんが、思春期の子どもに一方的に厳しいルールを押しつけ、問答無用で禁止するのはむしろ逆効果です。

なぜなら親が厳しく押さえつけるほどに、子どもは必死になって“抜け道”を探し始めるから。

YouTubeの視聴を制限しても、スクリーンタイムの制限を勝手に解除する、別のアプリからYouTubeにアクセスするなど、ちょっと検索すれば抜け道はすぐに見つかります。友達同士で「親バレしないで○○ができる方法があるよ」と情報交換するのも当たり前。「厳しく制限していたのに子どもが夜中にこっそり動画を見ていた」「ゲームに勝手に課金していた」などの体験談も山ほど聞きます。

そうならないために、子どもも親も納得できる使い方のルールをしっかり話し合って一緒に探していきましょう。

続く後編(3月27日公開予定)では、 10代ならではのスマホ事情やSNSトラブル対策について、具体的に解説していきます。

CREDIT
取材・文:阿部花恵 編集:HELiCO編集部+ノオト イラストマンガ:原あいみ
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