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親子関係を整える!介護のためのコミュニケーション術

突然訪れるかもしれない親の「介護」。親自身がどのように考えているか、尋ねてみたことはありますか? 将来の介護について考える際には、やはり本人の意向を聞いておくことは欠かせません。そこで今回は、親とどんな話をしておけばいいのか、どんな点に気をつければいいのかについて考えます。

親は自身の介護についてどう考えている?

必ず確認しておきたいのが、将来、介護が必要になったときのことを、親自身がどう考えているのか、という点です。介護の計画を立てる際の大事なポイントになるでしょう。

なお、話をする際には、問いただすようにして尋ねるのではなく、一緒に考えるようにして進めるのが◎。場合によっては、インターネットや関連書籍などで調べながら、ゆっくりと話を進めていくといいかもしれません。

介護を受けるとしたら、どこで受けたいか?

今住んでいる「自宅」で介護を受けたいのか、特別養護老人ホームなどの「介護保険施設」を希望するのか、介護付きの有料老人ホームなど「民間の高齢者施設」に入居したいのか、といった点を確認します。現在、子と「別居」の場合は、「同居」についての希望の有無についても話し合っておくといいでしょう。(同居の希望有無については、親とだけでなく、自分の家族やきょうだいとも話し合っておくことが欠かせません)。

また、回答があったら「なぜそう思うのか」という理由についても耳を傾けるようにしましょう。

親が在宅での介護を希望している場合は、ホームヘルパーなどのプロに介護をしてもらう心構えがあるかどうかも確認を。家族だけで介護することは困難なので、もし家族だけでの介護を望んでいるようなら、少しずつ考え方を変えてもらう必要があります。

施設に入居したいと考えている場合、重視したい点は?

施設での介護を希望している場合には、どんな点を重視したいかについても話し合っておきましょう。
例えば、

  • 立地は、現在の住まいの近く? それとも……?
  • 大規模なところ? それとも小規模なところ?
  • 食事は自炊する? 食堂で食べたい?
  • レクリエーションは充実しているほうがよい?
  • 高級な民間施設? リーズナブルな公的施設?
  • 個室? 相部屋?
  • いま、主治医がいる場合、違う先生になってもOK?

その他にも、「自分で入れるうちは毎日お風呂に入りたい」とか、「ペットを連れていきたい」、「お気に入りの家具を持っていきたい」など、それぞれの親に譲れないこだわりがあるものです。もちろん、すべてをかなえることはできませんが、聞いておけば親を支えていく際の参考になります。

介護に使うお金についても話し合っておきたい

もう一つ、大切なのは親のお金事情です。上記の希望をかなえるための資金をどうするか。介護は子が担うケースが多いとしても、あくまでも親の自立を応援するために行うもの。かかる費用は親自身のお金を使うことが基本と考えましょう。
この点については、本連載第4回『親が元気なうちから知っておきたい「介護とお金の話」』で詳しく解説しています。

介護についての対話を深めるためのポイント

介護の話を嫌がる親は少なくありません。普段はなんでも気軽に話せる関係でも、「介護」となると、話題を逸らしたり、本音をいわなくなったり、中には「年寄り扱いしないで」と怒り出してしまう人もいます。

それもそのはず、高齢の親にとって「介護」の話は、自らの“老い”を意識させられるデリケートなテーマ。できれば先送りにしたいと考えるのも当然です。とはいえ、避けて通るわけにもいきません。それでは、どうすればうまく話を進めていけるのか、3つのポイントを紹介します。

ポイント1.親の自立を願っていることを伝える

【参考フレーズ】「この先もずっと元気にしていてほしいから、今のうちに介護のことを考えよう」

介護とは親の自立を応援することでもあります。元気な親には「これからも今のままでいてほしい」という気持ちをまず伝えましょう。その上で、事前の情報収集や検討の重要性をきちんと説明することができれば、「私はまだまだ元気なのになぜ介護の話をするの?」といった、親の疑問にも答えることができるでしょう。

ポイント2.親の立場に立って考えている姿勢を伝える

【参考フレーズ】「どんな生活ができるか一緒に考えてみよう」

介護は、人生の締めくくりが近づく大事な時期に行われるものです。どう過ごしたいか、人それぞれの希望があるはず。なかには、いろいろな理由で実現が難しいこともあるかもしれません。ですが、それを最初から否定するのではなく、まずは「親の希望をどうすれば実現できるか」という視点から一緒に考えてみようと提案します。こうした姿勢は親の信頼を生み、対話を深めるきっかけになるでしょう。

ポイント3.親だけでなく、子もまた自身の問題として考えてみる

【参考フレーズ】「将来自分が受けるなら、こういう介護のカタチがいいと思っている」

介護の話をしていると、知らず知らずのうちに、親を問い詰めるような一方通行の対話になってしまい、親との信頼関係を壊してしまうことがあります。そうならないために、いずれは自分自身も老いるのですから、介護を自分の問題として考えてみることをおすすめします。親と同じ目線に立つことで親の思いを理解できるようになり、対話の一方通行を防ぐことができます。

以上のような点に注意しながら、親のペースに合わせて話を進めてみてください。いつしかしっかりとした対話ができるようになるはずです。

話がうまく進まないときは……

とはいえ、親と話しているうちに、ついつい感情的になってしまうことがあります。親の言い分に納得できず、会話をしているうち喧嘩になってしまう……そんなケースです。しかし、言い争いをしていても、お互いに消耗してしまうばかり。

そんなときは、親のことを「仕事上で付き合いのある、クライアント(お客様)」ととらえて、「どう話せば耳を貸してくれるか」と考えてみるのがおすすめです。感情はいったん横に置いて、“介護はマネジメント”という視点で取り組むと、うまく対処ができるはずです。

 
いかがでしたか? 「介護について話したこともなかった」「気にはなっているけれど切り出しにくい……」という人がほとんどではないでしょうか。まずは親と「話す」前に、自分だったらどんな介護を受けたいか、親だったらどう考えるか、という視点で「考えてみる」だけでも大きな一歩です。ぜひ、親との現在の関係性や、今後のコミュニケーションのとり方を考えるきっかけにしてください。

合わせて読みたい

『親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(第二版)

『親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(第二版)
翔泳社・刊/太田差惠子・著/1,540円

本連載の監修者・太田差惠子さんの著作である同書は、親の入院・介護に直面したときに必要な知識を「短期的戦略→中期的戦略→長期的戦略」と、時系列に沿ってわかりやすく紹介した一冊。制度の仕組みや手続き、サービスや施設の費用、専門職とのやりとり、仕事や子育てと介護の両立など、本当に知りたい情報が詰め込まれています。

教えてくれたのは・・・
太田 差惠子さん
介護・暮らしジャーナリスト

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。「遠距離介護」「高齢者住宅」「仕事と介護の両立」などの情報を発信。AFP(日本FP協会認定)の資格も持ち、「介護とお金」にも詳しい。一方、1996年に遠距離介護の情報交換の場、NPO法人パオッコを立ち上げ、2005年法人化。現理事長。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社)、『親の介護で自滅しない選択』(日本ビジネス人文庫)、『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)、『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門』(KADOKAWA、安藤なつ・共著)など多数。

https://www.ota-saeko.com/

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部 イラスト:栗原 慶太(mokume)
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