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介護保険のサービスを活用して「抱え込まない介護」を

親の介護について考えるとき、“自分で介護をする”ことを前提に考えていませんか? 介護は体力的にも精神的にも負担が大きく、仕事や子育てといった普段の生活と並行して行うのは大変です。介護保険で受けられるサービスをしっかり活用して、プロの手を借りながら進めていくことが、息切れしないポイントです。そこで今回は、具体的にどのようなサービスがあるのかご紹介します。

介護サービスには「居宅」と「施設介護」がある

介護保険で受けられるサービスは大きく分けて、自宅で受けられる「居宅サービス」と、特別養護老人ホームや老人保健施設に入居して受けられる「施設介護サービス」があります。

居宅サービスには「訪問」「通い」「宿泊」があり、それらを組み合わせながら利用することも。ここからは、まず居宅サービスの種類や特徴について説明していきましょう。

【居宅サービス その1】介護のプロが住まいを訪れる「訪問」サービス

「訪問」サービスには下記の表のようにいくつかのサービスがありますが、いずれも、介護のプロが自宅を訪れて支援や介護をしてくれます。

なかでも代表的なのが、身の回りのことを広くサポートしてくれる「訪問介護(ホームヘルプ)」サービスです。内容は、大きく「身体介護」と「生活援助」に分けられます。

「身体介護」とは、たとえば入浴やトイレでの排泄、食事の介助といった、利用者の身体に触れながら行うサービスのことをいいます。一方、「生活援助」は掃除や洗濯、食事の準備、買いものといった日常的な家事を代行するサービスを指します。なお生活援助は、元気な家族と同居している場合には利用できない自治体が多いです。

サービスを利用できる量(回数)や1カ月あたりの上限額は、要介護度によって決まります。ケアマネジャーや地域包括支援センターの担当者に相談して、ケアプランを立てましょう。

【居宅サービス その2】外出や交流の機会にもなる「通い」サービス

「通い」サービスとは、日帰りで施設などに行って受けられるサービスのこと。「デイサービス(通所介護)」「デイケア(通所リハビリテーション)」があり、これらを専門に運営している施設や、老人保健施設などで受けることができます。

デイサービスは、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護の負担軽減などを目的としています。施設に通うことで運動する機会が生まれたり、利用者同士の交流を楽しむことができたりとさまざまなメリットが。通常、ワゴン車などで利用者宅を巡回して自宅前まで送迎してくれます。

【居宅サービス その3】短期間入居して介護・援助を受ける「宿泊」サービス

「宿泊」サービスは、短期間、特別養護老人ホームや老人保健施設に宿泊して生活をしながら、身体介護や生活援助を受けるものです。「ショートステイ」と呼ばれることもあります。

介護をする人が病気になってしまった場合や冠婚葬祭・出張などの際に、また精神的・身体的負担を軽減するためにも利用できます。なお、連続利用は30日までと定められています。

ただし、需要に対して供給が追いついていない現状があり、希望通りの日時に利用できないケースも少なくありません。利用の際には事前の情報収集が必要です。

介護保険で利用できる「施設介護サービス」の種類

親の状態や介護する側の状況によっては、自宅(実家)を出て「高齢者施設」で暮らすことを検討する必要もあるかもしれません。介護保険サービスで利用できる高齢者施設には2022年3月現在以下の4種類があり、介護を必要とする度合いや状況によって、適する施設は異なります。

【施設介護サービスその1】人気が高い「特養」とは?

「特別養護老人ホーム(特養)」は、介護が必要な人のための公的施設で、原則として65歳以上で要介護3以上、自宅での介護が困難な人が入居できます。掃除や洗濯、食事の準備といった生活援助のサービスに加えて、入浴やトイレでの排泄、食事の介助といった身体介護のサービスもしてくれます。

※要介護度については『親を支える、あなたを支える「介護保険」の基礎知識』で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

比較的低コストで入居できるために人気が高く、全国に10,000施設以上あるものの(2019年時点)、入居するには長い待機期間が必要となることも。ただし、入居は申込順ではなく“緊急性の高さ”で決まるため、状況によっては早期に入居できる場合もあります。

【施設介護サービスその2】「老健」と「介護医療院」の特徴

「介護老人福祉施設(老健)」は、病院から退院した高齢者がリハビリに取り組んで在宅復帰をめざすための施設で、入居期間は原則として3カ月程度と決まっています。すぐに自宅での生活に戻るのが不安と感じている人に向けた施設ですが、特養への入居待ちの期間に利用する人もいます。

一方、「介護医療院」は、長期の療養が必要な高齢者に対し、医療と介護を提供する施設として2018年度に創設されました。生活の場としての機能に加えて、診察室や機能訓練室、処置室といった医療ケアのための設備も用意されています。なお、現在運営されている「介護療養型医療施設」は2024年3月31日までにこの介護医療院に転換されていく予定となっています。

介護保険施設以外にも介護サービスを受けられる施設

ここまで介護保険サービスで利用できる高齢者施設を紹介してきましたが、この他にも介護が必要な人に向けた施設があります。

例えば、主に民間事業者が運営する「介護付き有料老人ホーム」は、行政から認可を受けた介護付きの高齢者施設で、介護スタッフから24時間体制で生活援助や身体介護サービスが受けられます。また「グループホーム」も、身体介護や生活援助などのサービスを受けることができる施設です。

HELiCOを運営するアイセイ薬局のグループ会社・愛誠会でも、介護付き有料老人ホームやグループホームを展開しています。
下記ページから、それぞれの特長や1日の流れなど具体的な内容をご覧いただけます。(別サイトへ移動します)
愛誠会の介護付き有料老人ホーム
愛誠会のグループホーム

その他、「住宅型有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」「ケアハウス」などさまざまな施設があります。物件ごとにかかる費用やケアの内容は異なるので、検討する際には見学をして、不明点はしっかりご確認を。それぞれの物件の詳細については「重要事項説明書」に書かれているので、見学の際にもらって読みこみましょう。

今回は、介護保険で受けられる「居宅サービス」と「施設介護サービス」についてご紹介しました。いざというときに備え、全体像をおおまかに理解しておきましょう。わからないことは地域包括支援センターやケアマネジャーなどのプロにご相談を。次回は、介護とお金の話について、さらに踏み込んで考えてみます。

合わせて読みたい

『親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(第二版)

『親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(第二版)
翔泳社・刊/太田差惠子・著/1,540円

本連載の監修者・太田差惠子さんの著作である同書は、親の入院・介護に直面したときに必要な知識を「短期的戦略→中期的戦略→長期的戦略」と、時系列に沿ってわかりやすく紹介した一冊。制度の仕組みや手続き、サービスや施設の費用、専門職とのやりとり、仕事や子育てと介護の両立など、本当に知りたい情報が詰め込まれています。

教えてくれたのは・・・
太田 差惠子さん
介護・暮らしジャーナリスト

京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。「遠距離介護」「高齢者住宅」「仕事と介護の両立」などの情報を発信。AFP(日本FP協会認定)の資格も持ち、「介護とお金」にも詳しい。一方、1996年に遠距離介護の情報交換の場、NPO法人パオッコを立ち上げ、2005年法人化。現理事長。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社)、『親の介護で自滅しない選択』(日本ビジネス人文庫)、『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)、『知っトク介護 弱った親と自分を守るお金とおトクなサービス超入門』(KADOKAWA、安藤なつ・共著)など多数。

https://www.ota-saeko.com/

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部 イラスト:栗原 慶太(mokume)
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