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渡辺美奈代さん「自覚症状がなく、即手術になった卵巣嚢腫」

人気アイドルグループ「おニャン子クラブ」のメンバーとして一世を風靡し、解散後もソロ活動、俳優業、バラエティ番組出演など、幅広いジャンルで多くのファンを魅了してきた渡辺美奈代さん。

そんな渡辺さんが、下腹部の「ちょっとした痛み」を自覚したのは、2016年の秋。デビュー30周年記念コンサートという一大イベントを無事に終え、ようやく一息ついたタイミングでした。

「念のため」のつもりで病院を訪れると、経過観察中だった卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ:卵巣内に液体や脂肪がたまったもの)が急激に肥大化していることが発覚。医師からは「すぐに摘出手術を」と勧められる深刻な事態となります。

人生初の手術をきっかけに、健康と検診の大切さを再認識した渡辺さんにお話をお聞きしました。

渡辺美奈代さん

1985年、フジテレビ 『夕やけニャンニャン』 の 「アイドルを探せ!」 に合格。アイドルグループ 「おニャン子クラブ」 のメンバー(会員番号29番)として一世を風靡。芸能活動と並行して経営者・プロデューサーとしても幅広く活動。2016年には長年、経過観察中だった卵巣嚢腫の手術を受ける。現在はYouTube、TikTokなどのSNSでも積極的に発信を行う。2024年にソロデビューから38周年を迎える。
 
渡辺美奈代のMinayo チャンネル:
https://www.youtube.com/channel/UCGNYjdUr39sNOSzM_3uyMUg

30周年コンサートを終えて気づいた違和感

―2016年に卵巣嚢腫の手術を受けたそうですが、不調を自覚したきっかけは何でしたか?

渡辺さん

2016年の9月にデビュー30周年記念コンサートを開催したのですが、それが終わって少し落ち着いたころに、下腹部に痛みを感じるようになりました。
 
ただ、我慢できないほどの激しい痛みではまったくなくて、「女性なら、こういう痛みあるよね」という程度だったんですね。痛みの度合いを比べるならば、私にとっては生理痛のほうがずっと痛かった。
 
だから自分ではあまり気にしていなかったのですが、「最近、お腹がちょっと痛いんだよね~」と何気なく主人に話したら、「婦人科できちんと診てもらおう」と勧められ、病院で診てもらうことになったんです。

―それまで婦人科検診などは定期的に受診されていましたか?

渡辺さん

2013年に定期検診を受けたときに、「卵巣に嚢腫のようなものがありますが、ほとんどの人は良性ですから経過観察で大丈夫ですよ」と診断されて以来、毎年検診は受けるようにしていました。30周年記念コンサートの前の年の暮れにも診てもらって「問題なし」でしたので、そのときも本当に「念のため」くらいの軽い気持ちだったんです。
 
ところが、医師から告げられたのは、「深刻な状態なのですぐに手術がしたほうがいい」という診断でした。前年の検診では「問題なし」だった卵巣の嚢腫が、わずか数か月で10cmほどまで大きくなっていたんです。

―通常の卵巣の大きさが約2~3cmですから、ほとんど自覚症状はないまま、猛スピードで嚢腫が大きく成長してしまったのですね。

渡辺さん

先生のお話によると、卵巣にできる嚢腫はだいたい2~3cmほどのサイズが多く、ほとんどが良性だそうです。ただ、嚢腫が5cmを超えると手術の検討が必要になるそうです。私の場合はその倍以上の10cmのサイズにまで大きくなっていましたから、「一刻も早く手術を受けるべき」と病院側から強く勧められました。
 
卵巣は子宮を挟んで左右に2つある臓器ですが、「あまりに嚢腫が大きすぎて、右の卵巣にあるのか、左の卵巣にあるのかすら現段階ではわかりません」「このまま放置すると、嚢腫が破裂するリスクも高まる」とも告げられました。自分ではちょっと痛いかな、くらいしか症状がなかったので、そこまで深刻な事態だとはまったく想像していませんでしたね。
 
先生「こんなに嚢腫が肥大化していたのであれば、膀胱も圧迫されていたはず。下腹部が腫れたり、トイレが近くなったりしたでしょう?」
私「いえ、トイレはむしろ人より遠いくらいです」
先生「ライブで飛んだり跳ねたりする動きのときは、さすがに痛みがあったのでは?」
私「いえ、全然。普通にステージで飛び跳ねていましたね」
 
そんなやり取りがあったくらいに、先生も驚かれていました。私が特別に鈍感なのかもしれませんが(笑)。そこから急遽、仕事のスケジュールを調整して、約1か月後には手術を受けることになりました。

仕事復帰を見越して、腹腔鏡手術を希望

―卵巣嚢腫の摘出には、開腹手術と腹腔鏡下手術の2種類があります。渡辺さんはどちらの方法を選ばれたのでしょう。

渡辺さん

私の場合は嚢腫が10cmまで大きくなっていましたから、本当であれば開腹手術で摘出するのが一般的だそうです。
 
ですが、私の仕事の事情を理解してくださった先生が、「水着になることもあるかもしれないお仕事であれば、傷が小さい腹腔鏡下手術で摘出しましょう。ただし、嚢腫の状態を見てどうしても無理だと判断したときは、途中から開腹手術に切り替えます」と提案してくださいました。
 
手術の1週間後にはテレビの地方ロケ、その後には歌のステージを控えていましたから、仕事復帰に向けた体力を考えると腹腔鏡下手術のほうがありがたかったですね。

―手術はどれくらい時間がかかったのでしょうか。

渡辺さん

全身麻酔でおよそ2時間かかりました。場合によっては開腹、「状況が悪ければ卵巣を摘出する可能性もある」と先生から事前に聞かされていましたが、幸いなことに腹腔鏡下で無事に嚢腫だけを摘出してもらうことができました。執刀医の先生の腕が素晴らしかったのだと感謝しています。
 
術後に意識が戻ってからは、さすがに痛みや気持ち悪さがありましたね。ただ、付き添ってくれた主人が帰り際に「痛み止めはずっと止めないであげてください」と看護師さんにお願いしてくれたので、入院中はずっと痛み止めのお世話になっていました。その後は予定通り、2泊3日で退院できました。

「いつも元気なお母さん」が入院、家族の変化は?

―2泊3日の入院中に印象に残っていることはありますか。

渡辺さん

主人と2人の息子たちが毎日欠かさず、お見舞いにきてくれたことです。毎日といっても3日間ですけど、「優しい男の子に育ってくれたなあ」という嬉しさがありましたね。
 
それまでの私は、家族のなかではずっと「いつも元気でニコニコしているお母さん」だったんです。生理のつらさや痛みは「耐えるもの」という意識があったので、生理がどれだけ重くても、寝込むような姿を息子たちに見せたことはほとんどなかったと思います。
 
ただ、振り返ってみると、私の場合は、30代までは生理の悩みはそんなになかったんです。生理の重さや痛みが急激につらくなったのは、40代になってからでした。それでも痛み止めの服用や、体を温めることでなんとか乗り切っていましたね。

―開腹手術より傷跡は小さくなるとはいえ、腹腔鏡下でも体に傷口ができることに変わりはありません。退院後の体調はいかがでしたか。

渡辺さん

退院後はリハビリ代わりに家事をこなせるくらいには元気でしたが、階段を昇り降りするときだけは傷跡が引きつるような痛みが10日間ほど続きました。それだけがちょっとつらかったので、下の階にある寝室からお布団を持ってきて、しばらくはキッチンの横で寝起きしていました。あとは「重い荷物は持たないこと」とお医者さんから言われていましたから、そこは守りました。
 
でも、私はもともと家で過ごすのが大好きなので、それ以外はそんなにストレスもたまりませんでしたね。順調に回復できたおかげで、術後に予定していた地方ロケも問題なく行くことができました。

一人でも多く検診に行ってほしいから

―手術直前に、ご自身の病気をブログで報告されています。どんな病気であれ世間に公開することは勇気が必要だと思いますが、あえてオープンにされたのはなぜでしょう。

渡辺さん

卵巣嚢腫はほとんどが良性ですから、「経過観察」になっている女性は意外とたくさんいると思います。でも私のように、嚢腫が急激に大きくなって手術をするケースだってありうる。そうした事実を知ってもらうことで、検診に行く人が一人でも多く増えたら、との気持ちが強くあったからです。
 
卵巣嚢腫は10〜20代の若い世代にも多い病気ですが、自覚症状がないケースがほとんどです。だからこそ、検診が本当に大切なんですね。でも、婦人科の検診や診察に抵抗を感じてしまう女性は決して少なくないと思います。私だって、主人に強く勧められてようやく重い腰を上げたくらいでしたから。でも、あのときに痛みを甘く見て放置していたら……と想像するとちょっとゾッとします。

―近年は、病名を公表する芸能人も増えています。病気はプライバシーに関わる情報ですから公表しなければならない義務はありませんが、メディアを通じて広く知られることで病気の認知度が上がり、受診率の上昇に貢献する部分も少なからずある気がします。

渡辺さん

そうですね。やはり公表するまでには少し勇気が必要でした。ですが、病院の先生も「渡辺さんのように表舞台に立つお仕事をされている方が、病気を公表される意義は大きいです」とおっしゃってくださったので、それならば少しでも私ができるお手伝いをできたらと思い公表を決めました。
 
結果的には公表してよかったと感じています。SNSなどで「私も美奈代さんのニュースを見て検診に行きました」「今まで逃げていたけど病院に行ってみます」などの声をいただくと、少しでもお役に立てたのかな、と嬉しく思えます。

―手術からもうすぐ8年が経過しますが、その後の検診などは?

渡辺さん

年に1度は必ず定期検診に通っています。嚢腫はきれいに取ってもらいましたが、卵巣は残っているので再発の可能性はまだあるんですね。
 
卵巣嚢腫の手術をきっかけに、婦人科検診以外にもいろんな検査を受けるようになりました。昔は「アイドルだから大腸カメラ検査なんてできない!」なんて言い訳で逃げ回っていたのですが(笑)、「大腸がんになる女性は多い」と聞いて以来、ちゃんと受けるようにしています。
 
主人はクリニック巡りが好きなので、すごくリサーチしてくれることもありがたいですね。

夫婦のコミュニケーションで早期発見

―積極的に発信されているYouTubeやTikTokの動画からも、ご夫婦の仲の良さが伝わってきます。

渡辺さん

卵巣嚢腫の手術前後もずっと付き添ってくれましたし、出産のときも立ち会ってくれた主人なので、普段から体や健康のことも彼にはすごく話しやすいんですよ。病院嫌いだった私がちゃんと検診を受けるようになったのも、主人がいつも体を張って、いい病院を調べてきてくれるおかげが大きいです。
 
これもブログで公表したことですが、この冬に私の目に異変があって、視界に黒い丸いものや糸のような異物が見えるようになったんですね。そのうちに治るかなと放っておいたのですが、主人に話したら「眼科で検査をしてもらおう」とすぐに予約を取ってくれたんです。
 
受診したところ、網膜から硝子体が剥がれている状態(後部硝子体剥離)でした。手術の必要性はありませんでしたが、「いま以上に異物が見える割合が増えたら、すぐにまた診察してくださいね」と言われています。
 
逆のパターンで、私が主人の病気を発見したこともありました。病院に行ったら「もう少し遅かったら人工肛門になっていたかもしれない」と言われるくらいに深刻な状況だったので、早期発見はやっぱり本当に大切だなとそのときも実感しましたね。

―夫婦や家族、身近な親しい人とのちょっとした会話が、早期発見の入口になるかもしれませんね。最後に、渡辺さんがタレントとしてこれから力を入れていきたいことを教えてください。

渡辺さん

今後もこのままのナチュラルなスタイルで、いろんな活動を続けていけたらなと思います。息子たち(タレントの矢島愛弥さん、矢島名月さん)も成人しましたから、今後は子どもが巣立った後の夫婦の関係性の変化やスタイルなどをどんどん発信していきたいですね。見てくださる皆さんのモチベーションがちょっとでも上がるようなことを伝えていけたらと思います。

【連載】なんで私が?著名人が語る大病との闘いの一覧はこちら!

CREDIT
取材・文:阿部花恵 写真:小野奈那子 編集:HELiCO編集部+ノオト
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