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休むのが苦手…罪悪感を手放して休養を取るためのヒント

日々働くなかで、「最近疲れている」「休みたい」と感じても、休むことに対して罪悪感を覚えたり、休養のための時間をうまくつくれなかったりした経験はありませんか? 周囲に心配や迷惑をかけたくないと、頑張り続けてしまう人も多いのではないかと思います。

一方で、疲れている状態で働いても思考力の低下などから生産性が上がらず、余計に時間がかかり、休む時間がとれない悪循環に陥ることもあります。本記事では、「休むことが苦手」な人が、うまく休養を取れるようになるヒントをご紹介します。

教えてくれるのは…
薮野 淳也先生
Stay fit clinic 院長

産業医・心療内科医。職場のメンタルヘルスと運動療法を得意分野とする。産業医としてスタートアップ系企業から東証プライム上場企業まで、多くの企業に携わる。南青山にビジネスパーソンのための内科・心療内科「Stay Fit Clinic」とフィットネスジム「CrossFit Aoyama」を開設し院長・オーナーを務める。
 
Stay Fit Clinic:https://www.stayfitclinic.tokyo/

休むことが苦手な人の特徴

誰しも、日々仕事などに追われるなかで「疲れたな……」と思うことはあるでしょう。そんなときには、きちんと休養を取り、また元気に働けるように体や心を回復させることがとても重要です。しかし、日本においては、「休むこと=怠けている」と捉えられてしまう風潮も一部あり、休みにくいと感じる人も多いのではないでしょうか。

薮野先生

産業医面談やクリニックでの診療をしていると、休むのが苦手な方には、「真面目で、責任感が強い」「完璧主義」「人に相談できず、自分だけで抱え込んでしまう」といった性格的な特徴が多く見受けられます。
 
こうした特徴は決してネガティブなものではありませんが、どうしても頑張りすぎてしまったり、ON/OFFを切り替えられなくなってしまったりすることが多いようです。
 
加えて、「仕事で役職に就いている」、あるいは「家庭内で代替の難しい役割を担っている」場合、元々の性格と立場的な要因が重なることで、より「休むのが苦手」になりやすいと感じます。また、役割的な問題だけでなく、職場が休みにくい雰囲気といったケースもあり、環境面の影響も考えられます。

特に近年は、スマートフォンの普及により、絶えず情報が入ってくる環境にもなっています。その情報量の多さから、息をつく暇もなくなり、精神的に疲弊してしまう側面もあります。そのような状況で、仕事や育児、介護など、複数の役割を担わざるを得なくなると、休む間もなく走り続けることとなり、体調を崩してしまうのです。

薮野先生

実際に患者さんのお話を聞いていると、「それは体調崩してもおかしくない」と感じるほど、頑張り過ぎている方が多くいらっしゃいます。

休むのが苦手な方には、「真面目で、責任感が強い」「完璧主義」「ひとりで抱え込んでしまう」といった性格的な特徴が多く見受けられます

思い切って休むことで結果的に生産性は上がる

休むことが苦手、もしくはどうしても休む時間がとれない方にぜひ意識してほしいのは、「休むことも仕事である」ということです。

薮野先生

「休むと迷惑をかけてしまう」「休んでも仕事がたまっていくだけ」と感じて、休むことを躊躇する方もいらっしゃいます。しかし、疲労によって、仕事の生産性は確実に下がります。時間内に仕事が終わらず、毎日残業を繰り返して疲れがたまり続ける、という悪循環に陥るケースも見受けられます。
 
たとえば、元気なときの生産性を1とします。生産性が0.5の状態で働くと、2日かけて1に達します。そして、ここで休みをとらなければ、生産性はさらに下がっていきます。やがて生産性が0.1まで落ちると、10日働いてやっと生産性が1になります。結果的に9日間休んでしっかりと心と体を回復させ、1日だけ働くのと変わらないのです。

長期間疲れを感じながら頑張りすぎることで、心身はダメージを受けていき、そのダメージが大きくなればなるほど、回復に時間がかかります。こうしたことから、無理して頑張り続けるのではなく、こまめに休んで、心身の状態を整えながら働くことがベストと考えられます。

休日や有休を使って休息をとるときには、「休みの質」にも気を配れると良いでしょう。

薮野先生

たとえば、おいしいご飯を食べに行ったり、自然のある場所に行ったり、好きなアーティストのライブに行ったり。アクティブに過ごすことで「精神的な回復」が期待できます。ただし、楽しい予定を詰め込みすぎると、今度は体力的に消耗し過ぎてしまう懸念も。自分の体力や気分と相談したうえで、上手にバランスをとれるようにしてみましょう。
 
もしも、何もしないことに罪悪感がある場合は、体を動かす(体を鍛える)ようにすると、達成感や充足感を得やすいです。いきなりハードな運動をする必要はないので、ゆったりとした散歩などから試してみてください。

休み方のポイントについては、ぜひ下記の記事も参考にしてみてください。

休む=寝るだけじゃない!知っておきたい「7つの休養モデル」
休日は1日中ゴロゴロして体を休めているのに、休み明けどうも体がだるい……という経験をしたことはありませんか? あなたが「休養」と思って実行している休み方は、もしかすると逆効果になっているかもしれません。では、どうすればしっかり疲労を取り除けるのでしょうか。

この記事では、「休養学」を研究されている片野先生が提唱する“7つの休養モデル”について解説をします。ぜひこれからの休養に役立ててみてください。
https://helico.life/monthly/251112rest-techniques-7models-of-restoration/

周囲を巻き込むことは悪ではない

周囲への影響を考えて、仕事を休むことができないという人は多いものです。しかし、休むために「周囲を巻き込むこと」は、決して悪いことではありません。むしろ、心身に不調をきたして長期間の休養が必要になる前に、計画的に周囲の協力を得ながら休むことが大切です。

薮野先生

頑張り過ぎで心身の不調が現れてしまっている人が周囲にいた場合は、「強制的に休ませる」ようにしてあげることも必要です。産業医面談やクリニックでの診療で心身を壊してしまっている方は、あまり有給休暇を取得できていない傾向にもあります。
 
生活をしていくなかで、誰しも大なり小なりストレスを感じています。だからこそ、「お互いさま」の気持ちが大切ではないかと思います。休むべきときにきちんと休み、その代わり、他の人が休むときにはしっかりフォローをするという考え方がよいのではないでしょうか。自分自身の体調はもちろん、職場や家庭など、身近な人の状況を気にかけるのも大切です。

不調をきたして休養が必要になる前に、周囲の協力を得ながら休むことが大切

こんな症状は赤信号!いますぐ休むべきサイン

疲労した状態が長期間続くと、心身の不調となって現れます。以下のような症状がみられるときは、心や体がSOSを出しているサイン。赤信号の場合にはすぐに医療機関の受診を、初期サインが出ている、もしくは黄信号に該当する場合は休むようにしましょう。

初期サイン:疲れが取れない状況が続く

黄信号:仕事や日常生活においてミスが増える、何に対しても意欲が低下する、体調不良による突発的な休みが増える、身だしなみを気にしなくなる、以前と比較して会話中のリアクションが乏しくなる、感情が不安定になる等

赤信号(重度):不眠や気分の落ち込みといった症状の程度が重く、日常生活や仕事に支障をきたす期間が約1週間を超える

特にミス、勤怠・服装の乱れ、会話の減少、表情の変化は、周囲が気にかけることでそのサインに気づける可能性が高まります。

薮野先生

日頃から「横(他者と)のつながり」をつくっておくことで、他の人の異変に気づきやすく、そして自分自身のことも周囲がサポートしてくれるようになります。自身の異変に気がついたときには、一人で抱え込まずに周囲に相談することが大切です。周囲を巻き込みながら、「みんなで課題をどう解決していくか」を考え、各々の健康を守るようにしましょう。

体調が悪いときの具体的な相談方法

慢性的に疲労が取れなくなったときや、実際に心身の不調が現れてきたとき、誰に、どのように相談するのが良いのでしょうか。具体的な流れを解説します。

上長への相談

もし企業に属しているのであれば、まずは、日頃コミュニケーションを取っている上長に相談してみましょう。率直に体調が悪いということを伝えればOKです。その原因(仕事量や社内の人/クライアントとの関係性など)が自分で分かっていれば、それも合わせて伝えることで、上長も業務調整などがしやすくなります。

人事・総務、産業医への相談

上長がストレスの原因となっている場合や、相談したにも関わらず対応がなされない場合には、人事や総務、あるいは産業医に直接相談しましょう。

薮野先生

上長以外に相談する場合、上長がそれを知らないことで後々話がこじれる可能性もあります。事前、事後どちらでも良いので「最近少し体調が悪いので、人事(あるいは総務・産業医)に相談してきます/してきました」と伝えておくのがおすすめです。
 
なお、産業医とは働く人の健康管理を行う医師のこと。職場に50人以上の労働者がいる場合、産業医を選任することが法律で定められています。会社の規模に応じて非常勤もしくは常勤の医師がいますので、保健室に行くような感覚で尋ねてみてください。

家族やパートナーへの相談

企業に属していない場合や、社内の人に相談しにくい場合は、家族やパートナー、友人などに相談するのもひとつの方法です。負担を減らすために、家事代行やシッターを頼むという方法もあります。各自治体で助成しているケースもあるので、お住まいの自治体の取り組みについて調べてみるのも良いでしょう。

専門家への相談(医療機関の受診)

心療内科や精神科(メンタルクリニック)への受診は、心理的なハードルが高くなりがちです。しかし、心身の不調が仕事に影響を及ぼしている場合は、早めに医療機関を受診し、専門家に診てもらう必要があります。

気分が落ち込むことや不安になることは誰しもあると思います。しかし、それが週単位で続き、頭がいっぱいになり眠れないといったことがあれば、専門家に相談すべきタイミングです。そのような場合には、周囲の人への相談の前か後かという点は気にせず受診しましょう。

大切なのは、「体調を整えること」と「休める(あるいは負荷を調整したうえで働ける)環境にすること」の2軸で進められるようにすることです。

長期の休みが必要になる前に、こまめに休もう

長期の休みが必要になる前に、こまめに休もう!

疲れが取れないまま頑張り続け、心身の調子を大きく崩してしまうと、回復までの時間も長くかかります。「休むことは悪」と考えるのではなく、「今後も健やかに頑張るための準備」などと捉え方を変えて、こまめに休み、元気な状態が長く続くようにしてみましょう。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:おさつ
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