休日は1日中ゴロゴロして体を休めているのに、休み明けどうも体がだるい……という経験をしたことはありませんか? あなたが「休養」と思って実行している休み方は、もしかすると逆効果になっているかもしれません。では、どうすればしっかり疲労を取り除けるのでしょうか。
この記事では、「休養学」を研究されている片野先生が提唱する“7つの休養モデル”について解説をします。ぜひこれからの休養に役立ててみてください。
- 教えてくれるのは…
-
- 片野 秀樹先生
- 一般社団法人日本リカバリー協会 代表理事
博士(医学)。東海大学医学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員などを経て、現在は博慈会老人病研究所客員研究員、一般社団法人日本未病総合研究所公認講師(休養学)、一般社団法人日本疲労学会評議員などを務める。日本リカバリー協会では、休養に関する社会の不理解解消のためにリテラシー向上を目指して啓発活動や教育事業として休養士の育成活動に取り組んでいる。著書に『休養学―あなたを疲れから救う』『疲労学―毎日がんばるあなたのための』(以上、東洋経済新報社)などがある。
[監修者]:https://x.com/98gaku_katano
一般社団法人日本リカバリー協会:https://www.recovery.or.jp/
休養と合わせてチャージしたい「活力」
私たちは、日々の生活のなかで疲労を感じたとき、休養を必要とします。「休養=とにかくゆっくりと心身を休める(rest)」とイメージする方が多いのではないでしょうか。
しかし、これだけでは、休むことはできていても活動能力が向上した状態にはならず「ゆっくり休んだはずなのに、元気が出ないまま」という状態になり得るのです。
日々疲れを感じている人の場合、ただ休むだけでは、エネルギーが満タンにならないことも珍しくありません。そこで、意識したいのが「活力」を得るためのアクションを取り入れることです。
「攻めの休養」を取り入れてみよう!
活力を高めるには、「あえて自分に負荷をかける」ことが効果的とされています。もちろん、疲労困憊の状態であれば、まずは休んで疲労回復することを優先しましょう。
しかし、「少し疲れているけど、余裕がある」、あるいは「疲れは取りきれていないけど、何かやってみてもいいかな」と思えるときには、以下のポイントを意識しながら、軽い負荷をかけてみましょう。
- 自分で決めた負荷であること
- 仕事とは関係ない負荷にすること
- 挑戦することで学びや発見がある負荷であること
- 楽しむ余裕がある程度の負荷にすること
フィジカル面での負荷としては、ウォーキングやストレッチなどの軽い運動がよいでしょう。メンタル面での負荷としては、興味のある書籍を読んでみたり、気になっていた地域活動に参加してみたり、資格取得のために勉強を始めてみたりするなど、ポジティブなチャレンジがおすすめです。
思う存分寝たり、何もせずのんびりと過ごしたりして休むことを「守りの休養」とすると、適度な負荷をかけて積極的・主体的に休むのは「攻めの休養(アクティブレスト)」といえます。この「攻めの休養」を上手く取り入れることで、活力を高めることができるのです。
休養学が提唱する「7つの休養モデル」
ここからは、活力をあげる休養の具体的な方法をご紹介します。片野先生が研究する休養学では、休養の種類を大きく3つに分類しており、さらにそこから7つのタイプに分けています。
1休息タイプ
睡眠や休憩などで体の回復を待つ、受動的な休み方。疲労感が強いときには、まずはしっかりと休息を取ることが大切です。いかに体のエネルギーを消費しないかに焦点を当てるようにしましょう。ただ漠然とゴロゴロするのではなく、「●時間横になってしっかり休む」など意識的に休むのがポイントです。
また、なんとなくじっとしているだけでは、疲労回復はできても活力を高めることにはつながりません。それどころか、1日中横になることで体の機能が衰えてしまい、次に起き上がったときに「こんなに休んだのに体が重い……」と感じてしまうことも。また、睡眠時間を極端に延ばすことで太陽の光を浴びるのが遅くなると、本来人間が持っている生活リズムとズレが生じてしまい、自律神経の乱れやさらなる疲れにつながってしまうこともあるのです。
心身がリラックスできたなと感じたら、以降の休養タイプのいずれかも取り入れてみましょう。
2運動タイプ
適度な運動によって血流がよくなると、より疲労回復が進むことが期待できます。全身の細胞1つ1つに酸素と栄養が行き届くようになり、結果的に疲労感が軽減される、攻めの休養といえるでしょう。また、一時的に体が疲れることで、夜にはぐっすり眠れるという効果もあります。
運動といっても、疲労困憊になるほどの激しい運動は逆効果です。ストレッチやウォーキング、ヨガ、ピラティスなどゆったりとした運動にしましょう。血流を促すという意味では、ゆったりとお湯に浸かる入浴もこのタイプに分類されます。
3栄養タイプ
栄養学の観点から見ると、疲労回復には、栄養バランスの取れた食事をしっかりと食べることが重要です。一方で、休養学においては、「食べないこと」や「食事の量を減らすこと」が、結果的に体を休めることにつながると考えられています。
飽食といわれる現代において、私たちの内臓はつねに食べ物を消化し続けており、休む時間が少なくなりがちです。こうしたことから、食事量を抑えたり、胃腸に優しい食事や白湯を摂ったり、断食・ファスティングなどによって消化器官を休ませたりすることも、休養において大切な視点なのです。
また、自分へのご褒美としてスイーツやお酒を楽しむ方も多いですが、「休養」の観点では、これらは疲労回復には寄与しない可能性が高いといえます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
- 休んだつもりが逆効果!?勘違いリカバリー習慣Q&A
-
日々の生活のなかで「疲れたな」と感じたとき、あなたはどのように過ごしていますか? 元気が出るように栄養ドリンクを飲む、甘いものやお酒でストレスを発散する、とにかくベッドで1日中ゆっくり過ごすなど、さまざまな方法で回復しようとしているはずです。しかし、そうした行動は、「正しい休養」になっているのでしょうか? もしかすると、逆効果となっているかもしれません。https://helico.life/monthly/251112rest-techniques-mistaken-recovery-habits/
この記事では、疲れたときにやりがちなあれこれが、本当の意味で疲労の回復につながっているのか、解説していきます。
4親交タイプ
親交タイプは、人や自然と関わることでストレスを和らげ、活力を得る方法です。たとえば、友人や会社の人と共通の話題で楽しく話したり、家族や恋人、ペットとハグやスキンシップをしたりすることで、心の安らぎにつながります。
しかし、人づき合いが苦手な方は、無理に休日に誰かと過ごす必要はありません。あくまで、人と一緒にいることで心が安らぐ、楽しい気分になると感じる場合におすすめです。ご近所の方に挨拶や会釈をしたり、顔馴染みの店員さんと雑談をしたりするだけでも気持ちが明るくなることがあります。また、季節の花々を愛でたり、森林浴をしたりといった自然との触れ合いも、効果的とされています。
5娯楽タイプ
音楽を聴く、映画やドラマを見る、読書やゲームを楽しむ、「推し活」をするなどが、娯楽タイプになります。ここで重要なのは、「のめり込みすぎないこと」です。休養が目的にも関わらず、「続きが気になって徹夜でドラマを見てしまった」などは、本末転倒です。ゲームなどのやりすぎも肉体的な疲れにつながることがあるため、惰性で続けるのではなく、ある程度時間を決めてやるのが望ましいでしょう。
6造形・想像タイプ
料理やハンドメイド、DIY、絵を描く、詩や文章を書くなどといった創作活動全般が、このタイプに含まれます。何かに集中したり、好きなことに思いを巡らせたりすることで、疲労を忘れることができます。
必ずしも何かをつくり上げる必要はありません。たとえば、瞑想をする、旅行雑誌を読んでその土地に行った気分を味わう、美術館で絵を眺めながら作者の思いを想像する、好きなアイドルに思いを馳せることも、活力を高めることにつながります。
7転換タイプ
周りの環境を変えるのが、転換タイプです。旅行はもちろん、部屋の掃除や机の整理、模様替え、庭の手入れ、使っているアロマを変える、などといった日常生活のちょっとした行動も当てはまります。いつもより肌触りの良い素材の服を着てみる、自然に囲まれた場所に行ってみる、といったことでも効果が期待できます。
再現性をもって「休めるようになる」ことが大切
こうして7つの休養タイプを見ると、いままで自然とやっていたこともあるのではないでしょうか。ここで大切なことは、自分にとって「どんな行動が休養につながるのか」「休養を取りたいときには何をすればいいのか」を知っておくことです。
具体的な休養の方法とそのタイプを知っているだけで、「疲労を何とかしたい」と思ったときに、再現性をもって休養を取ることができます。また、少し意識をするだけで、普段の行動に+αで、あるいはより複合的に休養の要素を盛り込むことができるのです。
たとえば、胃腸を休めるために温かいスープを飲もうとしたとき、お湯を入れるだけのインスタントなスープでも、もちろん問題はありません。しかし、冷蔵庫にある材料を使ってスープを手作りすれば、「栄養タイプ」と「造形・想像タイプ」の2つを複合的に取り入れることができます。さらにそのスープを公園で家族と飲めば「転換タイプ」と「親交タイプ」、そして公園までの道のりを歩くことで「運動タイプ」の休養も取り入れることができるのです。
こうして、いろいろなタイプを組み合わせながら積極的に休養を取ることで、効率よく活力を高めることができます。ぜひ本記事で紹介した7つの休養タイプを意識しながら、休日を過ごしてみてください。
自分にとってベストな休養を見つけてみよう!
休養とは、ただ睡眠や休憩を取るだけではなく、さまざまなパターンがあります。自分に合った方法をいくつか見つけておくと、日々がより健康的に過ごせるのではないでしょうか。ぜひ次の休日から、いまの気分にぴったりな「積極的な休養」の時間を楽しんでみてください。