耳掃除の極意
耳掃除好きの方には悲報ですが、耳かきや綿棒によるセルフ耳掃除は、医学的には不要とされています。これは、耳には自浄作用があり、耳垢は奥から手前に、勝手に出てくる仕組みになっているため。自分では掃除しているつもりでも、実際にはかえって耳垢を奥へ押し込んでいたり、外耳道や鼓膜を傷つけてしまうことも少なくないのです。
そうは言っても、綿棒でぬぐうと黄色っぽい色がつくし、ニオイも気になる……という人もいるはず。耳垢は「垢」には違いないので、ぬぐえば色もつくし、嗅げばニオイもするもの。でもこの垢には、外耳道を保護する役割もあります。掃除のしすぎはかえってかゆみや炎症の原因にもなるのです。
耳掃除は不要とわかっても、その心地よさや耳掃除を愛する気持ちを止めるのは難しいもの。そんな人は、頻度を見直して、週1回~2週に1回程度の、「週末のお楽しみ」とするのはいかがでしょう? なお、掃除の際は、次のことに気をつけて。
耳掃除をする場合には、「そっとやさしく手前だけ(耳穴から一センチ以上奥の掃除はしない)」、また「お風呂上がりに行わない」を守って。耳掃除で気持ちよく感じるのは、実は耳穴から手前約一センチ、耳毛が生えている部分まで。鼓膜に届くほど奥まで耳かきや綿棒を入れないことが、耳を守る大切なポイントです。
お風呂上がりの耳掃除がNGなのは、水分で膨張した耳垢を、掃除によってさらに奥へ押し込んだり、日頃押し込まれた耳垢が水分で膨張した結果、耳垢が耳穴を塞いで起こる難聴(耳垢塞栓)が起こりやすいため。実際、お風呂上がりの耳掃除後に、急に耳がきこえなくなり受診する人は少なくありません。
それでもどうしても気になる場合には、耳鼻咽喉科で安全に耳垢を除去してもらうのが◎。「耳垢が気になって…」と受診してOK。プロの手で、耳を傷めずキレイにしてもらえば、安心&さっぱり爽快なのです。
※「耳掃寺」は実在のお寺ではありません。
【監修】小森 学 先生
(聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学教室 主任教授)
「耳」診療のエキスパート。耳科手術を多く手掛けるほか、小児の耳鼻咽喉疾患も専門とする。補聴器適合判定医・補聴器相談医。
ヘルス・グラフィックマガジンvol.52
「耳の不調」より転載(2024年6月17日発行)