出産を経て体型が変化し、ダイエットに取り組んでも、なかなか効果が得られず悩んでいる方は少なくありません。産後ダイエットは、正しい開始時期や適切なダイエット方法を知ることで、より効率的に進めることができます。
この記事では、産後ダイエットを始めるタイミングや、産後が痩せにくくなる理由、無理なく続けられる食事法について詳しく解説します。専門家のアドバイスも交えて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 教えてくれるのは…
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- 新井 雅美先生
横浜国際福祉専門学校社会福祉学科卒業。知的障害者の生活支援員として働きながら社会福祉士を取得。その後、加圧トレーナーに転身し、産後女性のダイエットトレーニングを専門とし、延べ2万人にトレーニング指導をする。2020年、一般社団法人日本産後ダイエット協会を設立。北区ビジネスプランコンテスト2019最優秀賞。令和3年4年北区地域作り応援団事業に採択。令和7年度北区 区民協働事業採択。
Instagram:https://www.instagram.com/masami_bodytrainer/?hl=ja
日本産後ダイエット協会HP:https://j-sango-diet.jp/
産後ダイエットはいつから始めるのがおすすめ?
一般的な「ダイエット」という言葉から連想される、食事量の調整やカロリー制限、運動などを過度に行うと、産後の体に悪影響を及ぼす可能性があります。しかし、ダイエットという言葉は本来「食事療法」を指します。産後に食事から体調や体型を改善したい場合は、「出産した直後」から始めても問題ありません。
ただし、一般的なダイエットという言葉から連想される、食事量の調整やカロリー制限、運動などを過度に行うと、産後の体に悪影響を及ぼす可能性があります。あくまで産後の弱った体を回復するために、食事を見直す意識で取り組みましょう。
「産後1ヶ月」は安静にするべき?
インターネットやSNSでは、「産後2~3ヶ月からダイエット開始」や「産後1ヶ月は安静にするべき」という情報をよく目にします。
これは、妊娠期に膨らんだ子宮が、元の大きさに戻るまでには約1ヶ月半かかるとされており、産後2~3ヶ月目がダイエット開始時期に適しているとされているためです。また、出産後の悪露(おろ)は4週から6週で収まる方が多いように、産後1か月は身体の回復に時間がかかることから「産後1か月は安静に」という情報がネット上でよく見られるのです。
しかし、産後数か月動かない状態が続くと、筋力低下(フレイル)を引き起こしてしまう可能性があります。動けるようになったら、無理のない範囲で体を動かしましょう。筋肉を維持することは、産後の子育て期間の体力低下や産後うつなどのリスクを下げることにつながります。
運動の開始タイミングは出産方法によって異なる?
自然分娩と帝王切開では、産後の運動開始のタイミングを一概に分けることはできず、個人の状況によって異なります。
帝王切開の場合、縦切開か横切開かによっても術後の痛みや回復期間に違いがあり、自然分娩でも会陰切開などを伴うケースがあります。そのため、運動を始める際には医師と相談しながら体の状態を判断し、無理のないタイミングで運動を始めることが大切です。
産後痩せにくくなる3つの理由
産後に痩せにくくなってしまう理由は、主に以下の3つです。
妊娠中に脂肪を蓄える
妊娠中の体重増加(脂肪増加)は、ネガティブにとらえられがちですが、これは出産後に大事な赤ちゃんへ「栄養」をあたえるための「脂肪の蓄え」という、からだの優れた仕組みによるものです。
しかし、産後、母乳が出ない場合や、何らかの理由で母乳育児を選択しない場合には、この蓄積された脂肪を消費する機会が得られにくくなることがあります。
また、産後の身体の機能を回復させるときに、激しい運動や食事制限で脂肪燃焼させようと考えるのは危険です。
脂肪を蓄えすぎないように、無理のない範囲で適度な運動と、栄養バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
まとまった睡眠時間の確保が難しい
産後は赤ちゃんのお世話で忙しく、まとまった睡眠時間を確保するのが難しくなりがちです。しかし睡眠不足は、エネルギー消費量を下げて脂肪を蓄えやすくなる要因のひとつとされており、食事制限や運動よりも、体重や体型に与える影響が大きいとされています。
たとえ筋力トレーニングを行っていても、睡眠時間が短いと、その効果は表れにくくなります。筋肉の回復や成長、代謝の改善には、質の良い睡眠が欠かせません。できる範囲で休息をとり、体をいたわる時間を意識的に確保することが、産後の体型ケアにもつながります。
産後は安静にしている時間が長いため筋力量が低下する
出産直後は安静に過ごす時間が長くなるため、体を動かす機会が減り、筋肉量が落ちやすい状態です。さらに、女性ホルモンの急激な減少も重なり、筋力を保ちにくくなります。
筋肉が減ると基礎代謝が下がり、脂肪も産前のようには燃焼されません。また、妊娠中に伸びた腹筋が緩むことで内臓を支える力が弱まり、内臓下垂が起こりやすくなります。内臓の位置が下がると血流やホルモンの働きが悪くなり、代謝が落ちて痩せにくくなるのです。
産後ダイエットに適した食事法とは?
産後に変化した体型を妊娠前の状態へ戻すためには、食事面でもいくつかのポイントがあります。ここでは、特に意識したい3つのポイントについてわかりやすく解説します。
7色の食材を意識する
産後は体力が低下しているため、食材の栄養素やエネルギー量を考慮して食事をつくるのは難しいことがあります。そんなときは、「7つの色」を意識して食材を選んだり、毎食の献立を考えたりするのがおすすめです。
すべての食材の栄養素を細かく計算するのは難しくても、色で管理する方法なら手軽に取り入れやすく、買い物のときにも役立ちます。
たとえば、赤はβカロテン、緑はクロロフィル、紫にはアントシアニンを含むポリフェノールなど、それぞれの色に特有の栄養素が含まれています。色とりどりの食材を揃えることで、必要な栄養素を自然とバランスよく摂取しやすくなります。
タンパク質を多めに摂る
授乳は、母体の血液を赤ちゃんに与えていることと同じ状態ともいえます。そのため、血液中の栄養素の1つであるタンパク質の摂取がとても重要です。
タンパク質は、動物性の赤身肉から効率よく摂取できますが、産後の体調や消化機能の変化により、肉類が消化されづらい場合もあります。そのような場合は、大根おろしや塩こうじ、パイナップルやキウイなどと一緒に食べることを心がけましょう。食材に含まれる酵素の働きによって、消化を助ける効果が期待できます。
また、肉類以外では、魚介類も優れたタンパク質源です。特に貝類にはタウリンが豊富に含まれており、授乳期の母体や赤ちゃんの発達をサポートする栄養素として注目されています。
カロリーにとらわれない
産後に体重を落としたいからといって、カロリーや糖質を制限する食生活には注意が必要です。
育児中の体は多くのエネルギーを必要としており、栄養が不足すると力が出ず、日常生活に支障をきたすこともあります。また赤ちゃんへの授乳のためにも、母体には十分な栄養が必要です。
カロリーや糖質を制限しようとするのではなく、十分な栄養を摂取して、代謝を上げることで脂肪を燃焼させる考え方を持ちましょう。
産後でも、もっと美しくなれる
産後に自身の体型を鏡で見たとき、「ボディラインが崩れた」「あまりにも太ってしまった」「女性としての魅力が失われた」と自己肯定感が下がり、自分を責めてしまうケースがあります。
産後に体型が変わるのは珍しいことではありません。そして焦る必要もありません。食事を中心に努力を重ねれば、産前よりも美しい体型になることも可能です。
ぜひ「女性らしくいたい」「きれいでいたい」という素直な気持ちを大切に、適度にリフレッシュしながら食事や運動を継続してください。