「ダイエットを始めても長続きしない」「食事量を減らしても効果が出ない」と悩みを抱えている方は少なくありません。
そのような場合、自己流の食事制限に頼ってしまっていることが多く、結果として栄養バランスが崩れ、体調を崩してしまうケースが見受けられます。無理な方法では継続が難しく、かえってリバウンドを招いてしまうこともあります。
そこで今回は、管理栄養士として多くの食事指導を行ってきた岡田明子先生に、ダイエットの第一歩となる「食事の記録と見直し」、そして無理なく続けられる「食習慣の工夫」についてお話を伺いました。
- 教えてくれるのは…
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- 岡田 明子さん
- 一般社団法人NS Labo代表
管理栄養士として介護施設やサプリ開発に携わり、自身の13kg減量経験をもとに独自のダイエット法を確立。レシピ監修や講演、執筆など幅広く活動し、これまでに延べ1万人以上の支援を行う。2014年には、栄養士・管理栄養士の育成や健康事業を行うNS Laboを設立。著書に『朝だから効く!ダイエットジュース』がある。
[監修者]岡田 明子さん:https://okada-akiko.com/profile
一般社団法人NS Labo(栄養サポート研究所)HP:https://ns-labo.jp/
ダイエットの第一歩は食事の記録と見直しから
肥満対策やダイエットのために食事を改善しようとする際、食事量の制限だけに目を向けてしまう方は少なくありません。しかし、食事量を減らすことに偏ってしまうと、栄養バランスが崩れ、体の不調を引き起こす可能性があります。
健康的に減量を目指すためには、まずは自分の食事内容を記録し、食生活を客観的に把握したうえで、食事の内容を見直すことが大切です。それぞれのポイントについて、詳しく解説していきます。
自分の食生活を記録する
ダイエットを始めるうえで、食生活を記録し、見直すことは非常に重要です。自分が何をどれだけ食べているかを把握し、可視化することで、日々の食習慣を客観的に見直すことができるからです。
さらに、無意識のうちに食べてしまう「ながら食べ」や「つまみ食い」などの行動を自覚し、防ぐことも大切です。レコーディングを続けることで、「何を減らし、何を増やすべきか」といった改善点が明確になり、実際の成果につながりやすくなります。
食事の「量」ではなく、「質」を変えてみる
ダイエットを始める際は、食事の量を減らすよりも食事内容の質を見直すことが効果的です。食事の質を変えることで、ダイエット効果を得られるだけでなく、食生活の改善にもつながります。
「糖質制限をすれば痩せる」と考えて、いきなり白米を抜くなど極端な方法をとると、継続が難しくなり、途中で挫折してしまう原因にもなります。特に日本人は白米を好む傾向があるため、完全にやめてしまう方法は長続きせず、リバウンドのリスクも高まります。
栄養バランスが崩れる原因と整え方
健康的な食生活を送るためには、栄養のバランスを意識することが欠かせません。その基盤となるのが、タンパク質(Protein)・脂質(Fat)・炭水化物(Carbohydrate)の3大栄養素であり、これらをまとめて「PFC」と呼びます。これら3大栄養素からバランスよくエネルギーを摂取する必要があります。
積極的に摂りたい栄養素と控えたい栄養素
現代の食生活で特に不足しやすい栄養素として、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維が挙げられます。忙しい日常の中で、外食やコンビニ食を活用する機会が増えることで、手軽にエネルギーを摂取できる一方、脂質や糖質が多くなりがちで、必要な栄養素が十分に摂れないこともあります。
必要な栄養素を意識的に補いながら、糖質や脂質の摂りすぎを控えることが、健康的な食生活とダイエットの両立につながります。
栄養不足のサインは?
栄養が不足すると、体はさまざまなサインを出します。その中でも代表的な栄養不足のサインが、肌荒れです。
肌は体の中でも栄養が最後に届く部分であるため、肌荒れが続く場合は体の内側で栄養不足が慢性化している可能性があります。
また、病院に行くほどではないものの、口内炎が頻繁にできたり、何となく不調が続いたりする場合は、栄養が足りていない可能性があります。こうした小さなサインを見逃さず、早めに食生活を見直すことが大切です。
3大栄養素をバランスよく摂る方法と摂取量の目安
3大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物)はそれぞれ体内で果たす役割が存在し、1gあたりのカロリー数も異なります。体にとって重要な3大栄養素の摂り方のコツや目安について解説します。
タンパク質はさまざまな食材から摂取する
タンパク質は、健康的な体づくりや基礎代謝の維持に欠かせない栄養素です。推奨摂取量の目安は、成人女性(18~64歳)で1日あたり50g、成人男性(18~64歳)で1日あたり65gとされています。
ポイントは、多様な食材からタンパク質を摂ることです。魚、肉、豆腐、乳製品などはそれぞれに含まれるアミノ酸の種類が異なるため、組み合わせて摂取することが理想的です。
良質な「脂質(油)」を積極的に摂る
油はダイエットの大敵と思われがちですが、体にとって必要な栄養素でもあります。大切なのは種類を見極め、適切に取り入れることです。
油には大きく分けて、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。
飽和脂肪酸は常温で固体となり、バターや肉の脂身、生クリーム、加工肉などに多く含まれます。これらは摂りすぎないよう注意が必要です。
不飽和脂肪酸は常温で液体の状態を保ち、健康維持に役立つ脂質として知られています。特に、青魚に含まれるオメガ3系や、オリーブオイル・アボカド・ナッツ類に含まれるオメガ9系は積極的に摂りたい油です。
炭水化物はバランスを意識して摂る
炭水化物を極端に控えるようなダイエットは、継続が難しく、リバウンドを招くリスクも高いため注意が必要です。
また、炭水化物に含まれる糖質の摂りすぎの原因としては、白米そのものよりも、甘い飲み物や菓子類などの嗜好品によるケースが多く見られます。まずは、そうした「本当に減らすべき糖質」を見直してみましょう。
現代の食生活では、炭水化物を摂取しやすい環境にあります。だからこそ、炭水化物を無理に制限するのではなく、タンパク質や食物繊維と組み合わせて摂るなど、バランスを意識した食べ方が大切です。
肥満対策に役立つ、食生活の3つのポイント
摂取カロリーやPFCバランス以外でも、健康的な食生活を送るために気をつけるべきことがあります。
食事の習慣を改善する
健康的な食生活を続けるためには、食べ方や日常の行動習慣にも工夫が必要です。たとえば、食事の際には野菜から食べ始めることで、血糖値の急上昇を抑え、脂肪の蓄積を防ぐ効果が期待できます。
また、行動習慣としては、お菓子を買いだめしないことや、空腹時に買い物に行かないようにすることで、余計なものをストックしたり、衝動買いしたりしてしまうのを防ぐことができます。
さらに、食べすぎてしまった翌日には食事量を控えめにするなど、リセットする意識を持つことも重要です。食べすぎをそのまま続けてしまうと肥満につながるため、早めの調整が習慣づけにつながります。
毎日体重計に乗る
ダイエットに取り組む際には、まず自分自身の体の状態を把握することが大切です。そのために有効なのが、毎日体重を測る習慣です。特に、朝と夜の2回測定することが理想的とされています。
朝の体重よりも夜の体重が大きく増えている場合は、食べすぎのサインだと考えられます。多少の増加は自然ですが、朝の体重と比べて夜の体重に3kg以上の変化が見られる場合には注意が必要です。
一方で、前日の朝と比べて翌朝の体重がなかなか減らない場合は代謝が悪くなっている可能性があります。便秘や尿の回数の少なさ、むくみなどもサインとして現れるため、生活習慣の改善が必要となります。
活動量の多い朝昼の食事をしっかり摂る
活動量の多い朝と昼にしっかりと食事を摂り、夜は控えめにすることが理想的な食事の配分とされています。
朝食をきちんと摂ることで、自然と夜の食事量を抑えられる可能性があります。食事の時間配分を工夫することは、体重管理だけでなく、代謝を整えるうえでも効果的です。ただし、生活スタイルや体調は人それぞれ異なるため、無理のない範囲で調整しましょう。
栄養バランスの整った食生活を
健康的に肥満を対策するには、食事の質を見直すことが重要です。極端な糖質制限などに頼るのではなく、タンパク質や良質な脂質、炭水化物をバランスよく取り入れるようにしましょう。
また、食べたものを記録する習慣をつけることで、自分に必要な栄養素が見えてきます。まずは、できることから少しずつ始めてみましょう。