年齢を重ねると、「以前より痩せにくくなった」「そんなに食べていないはずなのに体重が減らない」と感じる人も多いのではないでしょうか。
その背景には、偏った食習慣や加齢による基礎代謝の低下が関わっていることがあります。基礎代謝が下がると、同じ量を食べていても太りやすく、痩せにくい体質につながってしまいます。
今回は、管理栄養士として延べ1万人以上の食事指導を行い、「食べてキレイに痩せる」メソッドを提唱する岡田明子さんに、痩せにくさの原因と、基礎代謝を落とさないための工夫についてお話を伺いました。
- 教えてくれるのは…
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- 岡田 明子さん
- 一般社団法人NS Labo代表
管理栄養士として介護施設やサプリ開発に携わり、自身の13kg減量経験をもとに独自のダイエット法を確立。レシピ監修や講演、執筆など幅広く活動し、これまでに延べ1万人以上の支援を行う。2014年には、栄養士・管理栄養士の育成や健康事業を行うNS Laboを設立。著書に『朝だから効く!ダイエットジュース』がある。
[監修者]岡田 明子さん:https://okada-akiko.com/profile
一般社団法人NS Labo(栄養サポート研究所)HP:https://ns-labo.jp/
それほど食べているつもりはないのに痩せないのはなぜ?
「それほど食べているつもりはないのに、なかなか痩せない」と感じる背景には、無意識のうちに見落としている食習慣や、基礎代謝の低下が隠れている可能性があります。
食習慣の例として挙げられるのが、スマートフォンやテレビを見ながら食事をする「ながら食べ」です。このような習慣は、何をどれだけ食べたかを把握しづらく、結果として食べ過ぎにつながることがあります。また、間食や飲み物、高糖質な調味料を知らず知らずのうちに摂っていることも少なくありません。
さらに、カレーライスや牛丼などの単品メニューは炭水化物に偏りやすく、ソースやドレッシングなどの濃い味付けは高カロリーの原因となります。
食習慣の乱れは、基礎代謝の低下も引き起こす可能性があるため、食事のバランスを見直すことで、基礎代謝の向上にもつながります。ビタミンやミネラル、食物繊維をきちんと摂取すると代謝が促されるため、自然と体重管理がしやすくなります。
年齢とともに落ちる「基礎代謝」
「加齢とともに痩せにくくなった」「脂肪が気になる」——これらの体重の悩みが出てくる原因のひとつとして、基礎代謝量の減少が挙げられます。
基礎代謝とは?
基礎代謝とは、生命活動を維持するために最低限必要なエネルギーのことです。睡眠中でも呼吸や血液循環によってエネルギーは消費されており、身体を動かさなくても常に代謝が働いています。
この代謝を円滑に保つには、バランスのとれた食事が欠かせません。ところが近年は食生活の変化により、脂質や糖質を多く含む食品が増加しています。
女性の場合は、ダイエットを意識してサラダ中心の食事になりやすく、結果としてタンパク質が不足し、基礎代謝の低下を招くケースも多くみられます。
代謝の種類とその役割とは
私たちの体は、食べたものから得たエネルギーを使って、呼吸をしたり、動いたり、体温を保ったりしています。これが「代謝」と呼ばれる働きです。消費カロリーは基礎代謝、活動代謝、食事誘発性熱産生の3つに分けられます。
この3つの代謝を理解することで、「どうすれば効率よくエネルギーを使えるか」が見えてきます。ダイエットは、「食事管理」と「運動」の両方をおこなうことが大切です。消費エネルギーが摂取エネルギーを上回れば体重は減るというしくみをまずはしっかり押さえておきましょう。
自分の基礎代謝を計算してみよう
基礎代謝量は、年齢・身長・体重から計算できます。
一般的には「ハリス・ベネディクトの式」が知られていますが、日本人には体格や生活習慣に合った国立健康・栄養研究所の式が推奨されます。計算式は以下の通りです。
基礎代謝量(kcal/日)= 基礎代謝基準値(年齢・性別) × 参照体重(kg)
たとえば40歳女性の場合、基礎代謝基準値は「21.9kcal/kg/日」、参照体重は53.3kgとされています。そのため、40歳女性の場合の基礎代謝量は[21.9 × 53.3 = 1,168kcal/日]が目安となります。
基礎代謝基準値は年齢や性別ごとに異なるため、実際の計算には以下の一覧表を参照してください。
基礎代謝はホルモンバランスの影響も受け、更年期に入ると低下しやすく、痩せにくくなる傾向があります。基礎代謝を把握し、自分に合った生活改善を心がけましょう。
基礎代謝が落ちる3つの原因
基礎代謝が減少する原因は、主に以下の3つが挙げられます。
筋肉量や活動量の減少
年齢を重ねるにつれて、筋肉量が減少し、それに伴って内臓の働きも衰えるため、基礎代謝は自然と低下していきます。
基礎代謝を維持するためには、筋肉量を保つことが重要です。加齢によって筋肉は減りやすいものの、適切なトレーニングによって筋肉を増やすことができ、基礎代謝の向上にもつながります。
さらに、近年ではスマートフォンの普及やリモートワークの増加により、日常の活動量が減っている人も多く、消費エネルギーが以前より少なくなっている傾向があります。だからこそ、日常的に運動習慣を取り入れることが、基礎代謝を維持するための重要なポイントとなります。
誤った食事制限
無理な食事制限は、身体に深刻な悪影響を及ぼします。
摂取エネルギーを極端に減らす「我慢状態」が続くと、代謝が低下し、筋肉量も減少して痩せにくい体質になる可能性も否定できません。「食べないダイエット」は、一時的に体重が減少したとしても、筋肉を失った状態で食事を再開することで脂肪がつきやすくなり、リバウンドの原因にもなります。
また、必要な栄養素が不足した状態は、エネルギー不足や代謝の低下を招きやすくなります。無理な制限ではなく、栄養バランスを考えた食事管理を心がけることが大切です。
不規則な生活やストレス
生活習慣の乱れによって睡眠時間が十分に確保できず、慢性的なストレスを抱えた状態が続くと、ホルモンバランスが崩れ、基礎代謝の低下を引き起こすおそれがあります。
また、過度なストレスもホルモンバランスを崩す原因のひとつです。強いストレスを感じることで、代謝機能に悪影響を及ぼすことがあります。
健康的な代謝を維持するためには、規則正しい生活とストレスへの適切な対処が欠かせません。
基礎代謝が落ちる前に取り組むべきこと
年齢を重ねると代謝は徐々に低下しますが、早めの対策や正しい習慣づけで将来の体型や健康状態は大きく変わります。
そこで、岡田さんに今から始められる工夫を伺いました。
日常生活での活動量を上げる
基礎代謝を維持・向上させるためには、まず日常生活での活動量を増やすことが重要です。
たとえば、通勤時の電車では立つようにする、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使うようにする、姿勢を正すなど、ちょっとした工夫が効果的です。歩数計で目標を立てるのも、活動量を意識する良い方法です。
さらに、筋肉をつけることも基礎代謝の向上には欠かせません。スクワットなど、自宅でできる簡単な運動を取り入れるだけでも、代謝アップに効果的です。
食事内容を記録(レコーディング)する
基礎代謝を維持させるためには、日頃の食事内容を客観的に把握することも重要です。
まずは1週間ほど食事内容を記録することで、食べ過ぎや不足している栄養素が明確になります。その際、朝食から夕食までの食事内容だけでなく、飲み物や間食もすべて含めて記録することで、食べすぎや不足している栄養素が見えてきます。記録が面倒に感じる場合は、スマートフォンで食事の写真を撮るだけでも十分です。実際に、記録するだけで体重が減少したケースも報告されています。
こうした記録をもとに、間食や甘い飲み物の摂取を見直し、「食生活の中身」を改善することが基礎代謝の維持に繋がります。
良質で十分な睡眠を取る
基礎代謝を維持するためには、良質な睡眠と、十分な睡眠時間の確保が欠かせません。
睡眠不足は食事制限による筋肉量の減少と同じくらい、基礎代謝を低下させるとされています。見過ごされがちではありますが、睡眠を整えることは代謝の改善や体重管理において重要な要素のひとつです。
睡眠中には成長ホルモンが分泌されるため、適切な時間に十分な睡眠をとることで、代謝や脂肪の燃焼がスムーズに進みます。
子育て中などで長時間眠ることが難しい場合は、就寝前のスマホ使用を控える・入浴で体温を上げてから寝るなど、できる範囲で睡眠の質を高める工夫を意識してみましょう。
基礎代謝の維持は減量のカギ
基礎代謝を維持するためには、日常の活動量を増やす、食事を記録して振り返るといった生活習慣の改善から始めることが大切です。
「食べ過ぎていないのに、なかなか痩せない」と感じるときは、無意識の間食や甘い飲み物、加齢による代謝低下が原因になっていることもあります。自分の基礎代謝量を把握し、できることから生活に取り入れていくことで、体重管理がしやすくなり、健康的な毎日を送れるようになるでしょう。