子どもの行動一つをとってもイライラすることが多くなってしまう日々が続いていませんか。お母さんが疲れ切ってしまうと、子どもの行動を冷静に見つめるエネルギーが残っていない状態に陥りやすくなります。本連載では、女性、仕事、家庭生活におけるメンタルケアの支援に取り組む大美賀直子さんに、「親と子どもがやさしくいられるには?」をテーマに寄稿していただきます。第2回は、子どもにやさしく接するためのポイントを、子どもの年代別で具体例とともに教えてくださいました。
- 教えてくれるのは・・・
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- 大美賀 直子さん
- メンタルケア・コンサルタント
「こころと人生と人間関係」のベストバランスを提案する、メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士、産業カウンセラーの資格を持ち、作家やセミナー講師として活動。All Aboutの「ストレス」ガイドも行う。自身も子育てを経験し、女性、仕事、家庭生活における心理学とメンタルケア、自己成長の支援を得意領域とする。
- INDEX
- 子どもにやさしくしたいのに、そうなれないのはなぜ?
- 【赤ちゃん期】泣き声からメッセージを読み取り、穏やかに対応していく
- 【幼児期】「やってみたい!」を尊重し、危険に配慮しながら挑戦を見守る
- 【児童期】「やればできる!」という思いを支え、不安に寄り添っていく
- 心の成長プロセスを理解すれば、子どもの行動をやさしく見守ることができる
子どもにやさしくしたいのに、そうなれないのはなぜ?
「やさしいお母さん」でありたいのに、子どもを叱ってばかりで嫌になる……。お母さんたちがそう思うのは、子どもが「してほしくないこと」ばかりを繰り返してしまうから、ではないでしょうか。
でも、大人が「してほしくない」と思う子どもの行動は、子ども本人にとっては意味のあることが多いもの。そのことを理解していれば、叱ることが少なくなり、子どもにやさしいまなざしを向けることができます。
では、どのようにすれば、子どもの行動にイライラせず、おおらかな気持ちで子育てをすることができるのでしょう。じつは子どもの年代別で接し方のコツがありますので、今回は赤ちゃんから小学生までの心の成長プロセスに沿って、子どもの成長を上手にサポートするポイントを解説していきます。
【赤ちゃん期】泣き声からメッセージを読み取り、穏やかに対応していく
0歳児の赤ちゃんは、自分のやりたいことを言葉と体を使って自由に表現できるわけではありません。そのため、赤ちゃんは大人の世話に頼らざるを得ないのです。
赤ちゃんが泣いてばかりいると、親の立場としてはうんざりしてしまうかもしれません。しかし、「うるさい!」という気持ちに任せて冷たい態度で接すると、赤ちゃんは「ここは安心できる場所じゃないんだ……」という不安を強く感じるようになってしまいます。
赤ちゃんの泣き声は、お母さんへのメッセージです。そこで「お腹がすいたのかな」「遊んでほしいのね」などとやさしく声をかけながら、赤ちゃんの思いに沿って世話をすると、赤ちゃんは「わかってもらえた!」と感じて、お母さんに全幅の信頼を寄せることができます。この信頼感こそ、赤ちゃんがこの先、安心して成長していくためにとても大切なのです。
【幼児期】「やってみたい!」を尊重し、危険に配慮しながら挑戦を見守る
幼児期は、体を使って「自分の思うようにやってみたい」という気持ちが育つ時期。でも、状況によってはがまんしなければならないことも多く、特に3歳ごろまでは、体をまだ自分の思いどおりに動かせないため、たびたびかんしゃくを起こします。お母さんはその様子を見るたびにつらい気持ちになり、周囲の目などもあって日常生活で肩身が狭いと感じやすくなっています。
さらに、幼児期は友だちとたくさん遊びながら、外の世界への興味を増やしていく時期。そのため、泥だらけ、水浸しになっても遊び続け、危険を顧みずに何でもやろうとするので、お母さんはいつもハラハラした状態で「ダメでしょ!」「何度言ったらわかるの!」と叱ることが増えてしまいます。
でも、この時期の子どもたちは、好奇心をもってたくさんのことに挑戦しながら、積極性を伸ばしているのです。危険なことはきちんと伝え、ルールを示しながら、子どものやりたいことを可能な範囲で思うようにやらせてみましょう。たとえば、公園で遊ぶ際には、公園の外に飛び出してはいけない、危険な遊具で勝手に遊んではいけない。こうした約束を事前にきちんと伝え、そのルールのなかで思い切り遊べるようにしてあげるとよいでしょう。すると子どもの探求心はぐんぐんと伸びていき、意欲的に成長していきます。
【児童期】「やればできる!」という思いを支え、不安に寄り添っていく
小学校に入ると、子どもの心には勉強や運動、学校生活など、「いろんなことを頑張りたい!」という意欲が芽生えます。ですが、学校では「できる子」と「できない子」の優劣が目立ちやすく、劣等感も覚えやすいのです。
だからこそ、けっしてほかの子と比較したり、苦手なことを責めたりしないこと。焦りがち、自信を失いがちになる子の気持ちを察して、やさしく寄り添っていきましょう。そのためにも、ぜひ子どもの頑張る姿を見出し、大いにほめてあげてください。発表会や運動会に向けてコツコツ練習している姿が見られたら、「よく頑張ってるね」という温かい一言をかけてあげましょう。
そして、失敗したときにはギュッと抱きしめて、悔しさに共感してあげましょう。「頑張った自分をほめてあげようね」「きっと次はうまくいくよ」といった希望の一言を添えることで、子どもの心のなかに「前を向いて頑張ろう!」という意欲がぐんと伸びていきます。
心の成長プロセスを理解すれば、子どもの行動をやさしく見守ることができる
このように、子どもには年代ごとの心の成長プロセスがあり、日々の生活のなかでたくさんの挑戦をしながら前進しています。子どもの心の成長に合わせた接し方を年代別にまとめると、以下のような内容になります。
- 赤ちゃん期の子どもは、親の愛情によって自分がやさしく守られていることを知り、世話をしてくれる人との信頼関係を築きます。子どもがしてほしいことに気づき、やさしい言葉をかけながら世話をしていきましょう。
- 幼児期の子どもは、「やってみたい!」という好奇心を存分に発揮して、たくさんのことに挑戦しています。約束したルールのなかで、子どもが思いきり遊べるようにしてあげましょう。
- 小学生の子どもは、難しい課題に挑戦しながら、「やればできる!」という実感をつかんでいきます。頑張る姿を大いにほめ、悔しい気持ちに寄り添いながら、子どもの自信を伸ばしてあげましょう。
子どもの心の成長プロセスを理解しておけば、「どうして○○しないの?」「どうして○○できないの?」というように叱る機会は少なくなります。温かい目で子どもを見守り、おおらかな気持ちで成長をサポートできるようになれば、やさしい気持ちをもって生活していくことができるでしょう。
ぜひ、今日からこのテーマを参考にして子どもの行動を見守っていきませんか?
次回は「寄り添うコミュニケーションで、夫婦がやさしくなる方法」です。お楽しみに!