いくつになっても髪の悩みは尽きませんが、30~40代で気になり出す人が増えるのが白髪のこと。「白髪が目立って老けて見られそう」「白髪はいつも抜いてるけど、染めたほうがいい?」「白髪を生かすヘアスタイルってどういうもの?」などなど、考え出すとキリがありません。 そんな疑問や悩みに寄り添うべく、赤須医院院長で皮膚科専門医の赤須玲子先生とMINX銀座店・美容師の八木花子さんに、髪が白くなるメカニズムや簡単ヘアアレンジなど、白髪にまつわるお話をうかがいました。
- 教えてくれるのは・・・
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- 赤須 玲子先生
- 赤須医院 院長
山梨大学皮膚科、トロント大学病理学教室を経て、1998年六本木に赤須医院を開設。確かな臨床経験と美容に精通したきめ細やかな診療が定評。専門はニキビ、シミ、ホクロ、スキンケア全般。著書に『赤ちゃん肌に変わる「顔そり」スキンケア』『2週間でつるつる美肌になる本』(マキノ出版)などがある。医学博士、日本皮膚科学会専門医。
「女性専門皮膚科クリニック 赤須医院」のホームページ:
http://www.akasu.or.jp/
- 教えてくれるのは・・・
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- 八木 花子さん
- ヘアサロンMINX銀座店 ディレクター
静岡県出身。「KAMI CHARISMA(カミカリスマ)」受賞者。手入れが簡単で、飽きがこないヘアスタイルを得意とする美容師。幅広い世代からの支持があり、MINXのなかでも絶大な人気を誇る。美容業界誌、カルチャー誌での連載などのメディア実績も多数。
どうして髪は白くなる? まずは白髪の基礎を解説!
「加齢にともない白髪が増えてくる」「どれくらい白髪になるかは人それぞれで、髪が真っ白になる人も、高齢になっても黒々としている人もいる」ことは皆さんご存じかと思います。では、そもそもなぜ髪は白くなるのでしょうか。
髪の色は「メラノサイト」と「メラニン」で変わる
まず、白髪になるメカニズムの前に、髪の毛にはどのようにして色がつくかを簡単に解説します。
頭皮にある毛穴の奥(毛根)には「メラノサイト」という細胞があり、そこで黒い色素「メラニン」がつくられています。髪に色があるのは、メラニンが毛のなかに取り込まれているため。メラニンの量が多いほど髪色は黒くなるので、もともと明るめな髪色の人は、髪が黒い人に比べてメラニンの量が少ないということになります。
メラノサイトの働きが加齢や病気などによって低下すると、つくられるメラニンの量が減り、それに伴って毛に取り込まれるメラニンも減少します。その結果、髪が白くなる……というのが白髪になるメカニズム。ただ、すべての毛根でこのような現象が一斉に起こるわけではありません。メラノサイトの働き度合いは毛根ごとに異なります。そのため、白髪が増え始めた方の頭髪は多くの場合、黒い毛と白髪、その中間のグレーの毛が混ざり合った状態になっています。
メラノサイトの働きが低下すると、毛に取り込まれるメラニン色素の量が減り、髪は白くなる
どんな人が白髪になりやすい?
加齢のほか、ストレス、無理なダイエット、高熱が続く病気などによって毛根に栄養が届かなくなると、メラノサイトの働きが低下して白髪になりやすくなります。加齢以外の原因で白髪になった場合、原因が取り除かれて毛根に栄養が届くようになるとメラノサイトが再び働き出すようになり、白髪だった髪が黒く戻る可能性も。白髪になったからといって、もう黒くなることはないとガッカリするのは少し早いかもしれません。
白髪に気づいたら、どうすればいい?
頭からピョンと飛び出した白髪に気づいて、どんよりした経験がある人は少なくないでしょう。こんなときは思わず抜いてしまいたくなりますが、それはNG。白髪かどうかにかかわらず、無理に毛を抜くことは毛根や頭皮に負担をかけ、次に生えてくる髪が縮れるなどの影響を与えかねません。1本だけ目立ってどうしても気になるような場合は、抜かずに根本からカットするのがおすすめ。毛根や頭皮へ負担がかかるのを避けられますし、一時的ではあっても白髪が目立たなくなります。
じつはあまり知らないかも? 白髪染めの基礎知識
白髪を染めるといっても、白髪染めやヘアカラー、ヘアマニキュアなど、その方法はさまざま。自分の髪にはどれが合っているのかわからない……という方もいるのではないでしょうか。それぞれどんな特徴があるのかを解説します。
白髪を染める方法はこんなにある!
「ヘアカラー」と「白髪染め」に大きな違いはない
まず、カラーリングの王道ともいえる白髪染めとヘアカラー。両者に大きな違いはありません。白髪も黒髪も染まるカラー剤を便宜上「白髪染め」と呼んでいると考えていいでしょう。「ヘアカラーより白髪染めのほうが、髪が傷みやすい」と思われがちですが、ヘアサロンで使っているものはそれほど変わりません。また、ダメージを減らすために白髪の生え具合や染める箇所(生え際や毛先など)によって、美容師が薬剤の割合を調整しています。
「市販のセルフカラー剤」はアルカリ成分が強め
市販されているセルフカラー剤は、誰にでも手軽に染められるようにつくられているので、色を浸透させるためのアルカリ成分が強いものが多いです。また、色味なども含めて自分の髪質に合っているかどうかを自分で判断するのは、簡単ではありません。どんなことで悩んでいるのか、染めた方がいいのかどうかも含めて、まずはヘアサロンで相談することをおすすめします。
髪にはやさしいけど、染まりにくい「ヘアマニキュア」
ヘアマニキュアはヘアカラーと違ってアルカリ成分が入っていないので、髪にはやさしいものの、その分染まりにくいというデメリットがあります。また、髪の表面だけに色素が吸着する仕組みのため、黒髪部分を明るくすることはできません。ただし白髪が多い人が、白髪部分を染めたい場合にはおすすめといえます。
髪や頭皮の負担は少なめ、だけどカラーチェンジしにくい「ヘナ」
植物由来のヘアカラー剤「ヘナ」は、トリートメント効果もあって、髪や頭皮の負担が少なめな点がポイント。ただしオレンジっぽく染まる特徴があるほか、色が強く沈着することが多いため、一度染まった部分のカラーチェンジがかなり難しくなります。
手軽だけど、徐々に色づいていく「白髪染めシャンプー」
白髪染めシャンプーは手軽に使えますが、一度では色が沈着せず、徐々に薄く色づいていくような染まり方なので、その特徴を理解したうえで使うかどうかの判断が必要です。
こんな白髪カバー法も!
髪の毛全体を同じ色に染めるだけでなく、部分的に明るくしたり(ハイライト)、髪の内側に色を入れたり(インナーカラー)することで、髪色が明るい箇所に視線を集めやすくして、白髪の印象をやわらげる方法もあります。比較的若い年代の間では、コロナ禍でリモートワークが進んで出勤の必要がなくなり、ヘアカラーの自由度が増したことなども追い風となって、ハイライトやインナーカラーを楽しむ方が増えています。
白髪を目立たなくするヘアアレンジが知りたい!
白髪を染めても新たに生まれる悩み、それは「根元の白髪」。見つけた瞬間からどうしても気になって、やがてそれがストレスに……ということもあるのではないでしょうか。そんなときに役立つヘアアレンジをご紹介します。
根元の白髪を目立たなくするヘアアレンジ
- 分け目をしっかり取らず、ジグザグに分けてぼかすようにする
- 前髪をつくる(額の生え際の白髪が目立たなくなる)
- ヘアバンドやカチューシャを使って生え際を隠す
- 結ぶときは、結んだあとに髪を少量引き出して後頭部にボリュームをつくる
- 耳や髪にインパクトのあるアクセサリーをつけて、白髪以外の場所に視線がいくようにする
最近よく聞く「グレイヘア」ってどうなの?
「白髪を目立たなくする」とはまったく逆のアプローチとして、最近では「グレイヘア」も話題になっています。白髪を染めずに自然体の髪色を生かせたら、ヘアカラーの手間がなくなるので気になる人もいるでしょう。ただ、グレイヘアにも定期的なヘアケアは必要です。白髪を染めていないことで老けて見えかねないので、むしろ染めているときよりも丁寧なケアをしなければならない可能性も。普段のファッションやメイクによっても似合うかどうかが変わってくるので、じっくり考えてから選択することをおすすめします。
年齢を重ねることと白髪の悩みは切っても切り離せませんが、できるだけ前向きにとらえておしゃれを楽しめるようにしていきたいですね。