私たちの体には日々重力がかかっていることもあり、じつは“無意識の緊張”が起こりがち。この状態が続くと、それだけで「休んでいるのに疲れが取れない」「疲れやすい」と感じやすくなります。上手に体を休ませるためには、無意識の緊張を意識的にゆるめていきましょう。毎日の習慣に少しずつ取り入れたい「脱力トレーニング」を、部位ごとに紹介します。
- 教えてくれるのは…
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- 中野 崇さん
- 株式会社JARTA international 代表取締役
理学療法士。イタリアのトレーナー協会であるAPF(Accademia Preparatori Fisici)で日本人として初めてのSOCIO ONORATO(名誉会員)となる。2013年に、スポーツトレーナーやスポーツ選手の育成などを行う株式会社JARTAを設立。多くのプロアスリートおよびチームへの身体操作トレーニング指導に携わっている。著書に『40代からの脱力トレーニング~忙しくても体調がいい人の密かな習慣』(大和書房)などがある。
[監修者]
株式会社JARTA:https://jarta.jp/about_us/ceo/
Youtube:https://www.youtube.com/@JARTAnakano/featured
休養の妨げになる「無意識の緊張」とは
今回解説する「無意識の緊張」は、主に「筋肉の緊張(硬直状態)」を指しています。
私たちの体は、日々重力を受けているほか、成人であれば体重の約10%を占める頭が高い位置にあるため、姿勢が変わるたびに無意識にバランスを取り続けています。そのバランスを取る役割を担うのが「骨」と「筋肉」ですが、姿勢の乱れなどにより負荷が筋肉に偏ると「無意識の緊張」が強まります。
こんな人は無意識の緊張に要注意
以下に当てはまる人は、特に無意識の緊張をしやすいといえます。
□ 通勤などで電車やバスに揺られることが多い
□ 子どもを抱っこしたり、重い荷物を持ったりする機会が多い
□ ハイヒールや厚底サンダルなど、不安定な靴を履くことが多い
□ 脂っこい食事を好み、内臓疲労によってお腹が張ったり、凝り固まったりしがち
□ 責任感が強く真面目である
□ 「頑張る・我慢強い・頑固(3G)」な性質が強い
無意識の緊張を取り除く「脱力トレーニング」7選
脱力トレーニングでは、力を抜くべき部位と入れるべき部位を理解し、筋肉の過度な緊張をほぐすことが目的となります。
脱力トレーニングを行うときの注意点
以下の場合は無理にトレーニングを行わず、事前にかかりつけ医に相談をしましょう。
- トレーニングする部位に痛みがある
- 感染症や免疫系の疾患などによる炎症が体内で起こっている
腰痛や肩こりがある方は、痛みが少ないときに行うようにしましょう。トレーニングの途中で体に違和感が生じた場合は、中止してください。
脱力トレーニング1:足指開き
手順
- 足の指を、手で上下(反らす方向と曲げる方向)に動かす。そのまま3秒ほどキープ。
- 各指3回ずつ繰り返す。時間がない場合には、親指と小指のみでもOK。
- 足の指の間に手の指を入れて、足指をグー・パーと動かす。
ポイント
- 反る指よりも曲げる指を意識して動かす。
- 指の間にある「水かき」に刺激を入れる意識を持つ。
- 手順3は、手の指の根元を挟めるとベストだが、最初は難しいので無理をしない。
脱力トレーニング2:足裏の指圧
手順
- 足裏の中心、かかとの骨よりも少しつま先側を指圧する。
- その状態で20回、足の指をグー・パーと動かす。
ポイント
- 足裏の筋肉が動いているのを手の指で感じられればOK。
- ゴルフボールを使い、立った状態で足裏を刺激してもOK。
脱力トレーニング3:ふくらはぎの指圧
手順
- 内くるぶしから少しアキレス腱側にあるくぼみに指をおく。
- そこから、すねの内側にある溝(すねの骨と筋肉の隙間)に沿って指圧する。
- ふくらはぎの外側も、すねとふくらはぎの筋肉の間の溝に沿って指圧する。
ポイント
- 上下にほぐすような動きで押す。
- 特に痛いポイントがあった場合は、そこを押したまま、足首を反らして戻す動作を行う。
脱力トレーニング4:お尻の皮膚つまみ
手順
- 座っているときに特に圧迫されやすい部位を、縦や横など手の向きを変えながら3~5秒ほどつまむ。
- つまんだ際、痛みがある部位は10秒ほどつまみながら、上下左右に軽く手を揺らす。
脱力トレーニング5:お尻のストレッチ
手順
- あぐらをかくイメージで、片方の膝にもう一方の膝を近づける。
- 上に乗せている脚と反対の肘を合わせるイメージで、ゆっくり斜め後ろに10回体をねじる。
- 体を正面に戻し、胸と膝をつけるように体を前に倒した状態でゆっくり深呼吸をする。
- 1~3を左右合わせて1~3セットほど行うのが理想。
脱力トレーニング6:胸骨
手順
- 大きく深呼吸をする。
- 胸の辺りの皮膚を少し押し込みながら上に引き上げて、もう一度深呼吸をする。
- 手の位置を変えながら何度かくり返し、深呼吸がしやすいと感じる場所(特に息が吸いやすくなる場所)を探す。
- 深呼吸がしやすいと感じる場所や少し痛みを感じる場所を見つけたら、そこで3回深呼吸する。
- 手を離した状態で、もう一度深呼吸をする。
ポイント
- 1日のなかで複数回、気づいたタイミングで、頻繁に行うのが望ましい。
- 最後、手を離した状態で深呼吸をして、トレーニング前よりも息が吸いやすくなっていればOK。
- 時間があれば、いろいろな場所に手を置いてみて、何度も繰り返そう。
脱力トレーニング7:前腕
手順
- 右手のひらを上にした状態で、左手で右手首を持つ。
- 手のひらが外側に向くようにねじる(小指が上、親指が下になる)。
- その状態で10回、肘を曲げ伸ばしする。反対側も行う。
できる範囲でコツコツ継続して、疲れにくい体に!
脱力トレーニングは、少ない種類からでも、毎日続けることでより効果が期待できます。ぜひ1種類からでも、スキマ時間で実践してみてください。能動的な脱力方法をマスターして、効率の良い休養ができる、あるいは疲れにくい体での、快適な生活を目指してみませんか。