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朝井麻由美さんに聞く「ソロ休日を満喫する」過ごし方

たっぷり働いて、やっとたどり着いた休日。しかし、遊びに出かける予定もなく、一緒に遊んでくれる友人もすぐには見つからない。せっかくの休日が漠然とゴロゴロするだけで終わっていく……。心も身体もどこか消化不良なまま、休日が過ぎてしまっていませんか?

そんなときにおすすめなのが、ひとりで自分らしい時間を過ごす「ソロ活」です。ソロ活の達人は、どのように休日を満喫しているのでしょうか? テレビドラマ化されたエッセイ『ソロ活女子のススメ』の著者である朝井麻由美さんに、これまでのソロ活や心得を伺います。

教えてくれるのは…
朝井 麻由美さん

フリーライター・コラムニスト。著書に『「ぼっち」の歩き方』(PHP研究所)、 『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA中経出版)。ひとり行動が好きすぎて、ひとりでバーベキューやスイカ割りをする日々。執筆テーマはソロ活、人見知り、ひとり旅、食、ゲームなど。『二軒目どうする?』(テレビ東京系)に準レギュラー出演中。ほか、テレビやラジオの出演多数。

X:https://x.com/moyomoyomoyo

どうしても「ラーメン」が食べたかった

―朝井さんはいつ頃から「ソロ活」を始められたのでしょうか?

朝井さん

私の場合、「ソロ活するぞ!」と意識して始めたわけではなく、「あとから振り返ってみたら、あれもこれもソロ活だった」という感じなので、「はじめてのソロ活は?」と聞かれると曖昧なんです。
 
高校生の頃には、都内にある自宅から自転車に乗って「今日は埼玉まで行こう」とこぎ出して、電柱の住所が埼玉になったら自宅に戻る遊びをしていました。当時はスマホがなかったので、紙の地図を見ながら。振り返ってみれば、この頃からソロ活っぽいことはしていました。

―楽しそう! ほかにはどんなことをしていましたか?

朝井さん

よく覚えているのは、大学生の頃に行ったラーメン屋ですね。当時は、女性がひとりでラーメンを食べに行くのはまだ珍しくて、結構勇気がいることだったんですよ。それで、「ひとりで行っちゃダメ」と自分で自分に「×(バツ)」を出していた感覚がありました。
 
でも、ラーメンって急に食べたくなりませんか?

―なりますっ!

朝井さん

突然思いつくから、一緒に行く友達がすぐには見つからなくて、「本当はいますぐ行きたいのに……」っていうモヤモヤを抱えていました。そんな時期に同級生が「私、ラーメンはひとりで食べに行くよ」とサラッと話していて、ハッとしたんです。ひとりで行っていいんだ、と。
 
私にとってソロ活の原体験は、「ひとりで何かしたい」というより、「ラーメンをどうしても食べたいから行く!」という欲望を優先したものだったんです。

―欲望に従った結果が「ソロ活」だったわけですね。

朝井さん

そうですね。ソロ活のためにソロ活をするのではなく、欲望を優先した結果がソロ活になっていた。ここは大事なポイントです。

ソロ活に、失敗はない

―初めてひとりでラーメン屋さんに行ったときのことは覚えていますか?

朝井さん

はい。デビュー当時は、ドキドキしましたね。

―デビュー当時(笑)。

朝井さん

この言い方が正しいかわからないですけど(笑)、ひとりで何かするって最初の一歩がドキドキのピークなんですよ。ラーメン屋さんでいえば、入店するまでが一番緊張します。そこがクリアできると、自分で自分に「×」を出すことは少なくなってきました。ラーメン屋さんに行けたから、ほかの店も行けるのではって思えるようになってきて。

―では、それ以降は勇気が必要だったこともなく?

朝井さん

いや、勇気が必要なときもありましたね。社会人になってから、焼肉を食べに行くことが増えたのですが、周りの空気を読みながらバランスよく注文しなければならないのが煩わしいなと思ったんですよ。カルビを食べ終わった後に、また同じカルビを食べたくなることだってあるのに。それで、誰にも邪魔されずに好きな部位(カルビ)だけをひたすらに食べたいと思ったんです。
 
でも当時の焼肉屋さんって、ひとりで行く仕様になっていない。いまなら「ひとり焼肉」という概念も広がって行きやすくなりましたが、15年前だったので……早すぎたんです。
 
「今日こそ行くぞ!」「(当時大好きだった)カルビをたらふく食べるぞ!」と意気込んでも、お店の前で「やっぱりやめよう」とファミレスに入ったこともありました。

―朝井さんにもそんなときがあったんですね!

朝井さん

ええ、ありましたよ。焼肉屋さんには、2〜3回目の挑戦でやっと入ることができました。

―休日に「ソロ活をしょう」と思っても、何から始めたらいいのかわからない人もいると思います。「ソロ活の最初の一歩」はどのように探したらいいのでしょうか?

朝井さん

私にとってのラーメンや焼肉のように、「どうしてもこれをやりたい」ということから始めるのがおすすめですね。たとえば、「推しのライブにひとりで行く」のは、推し活でありソロ活。好きなことがある人は、自分の好きな界隈でできることを探すと良いのではないでしょうか。
 
「好きなことがわからない」という人は、「失敗してもいい」っていう気持ちを持っておくのが大事だと思います。

―失敗してもいい気持ち、ですか?

朝井さん

よく「おすすめのソロ活を教えてください」って聞かれるんですけど、それは私にはわからないんですよ。なぜなら、私とあなたは別の人間だから。たとえば私は飲み歩きが好きだけど、お酒に興味がない人には、そういった提案は刺さらない。だから、「あなたの好きなことをやってください」が一番の答えになるんです。
 
好きなことを見つけるには、とりあえず何かやってみる、行ってみる、真似してみる。一発で「これめっちゃ好き!」が見つかるなんてことはほとんどないので、まずはいろいろ試してみるしかないんですよね。
 
やっているうちに、自分のなかで「これは好き」「この前やったことよりもさらに好きかも」「苦手かも……」といった濃淡が生まれて、好みや傾向が見えてくるはずです。合わなかったソロ活は「失敗」ではなく、「自分の好みを知るきっかけ」ととらえられるといいなと思います。

朝井さんがこれまでしてきたソロ活の例

  • カラオケ
  • プラネタリウム
  • アフタヌーンティー
  • バイキング
  • 動物園、水族館、遊園地
  • お花見
  • 屋外BBQ
  • ボウリング
  • リムジン
  • ナイトプール

ソロ活で、自分の「好き」が見つかった

―ソロ活をきっかけに、自分のやりたいことや好きなことに気づけるって素敵ですね。

朝井さん

すでにある「好き」に気づいていないこともあると思います。私自身、『ソロ活女子のススメ』を書いていくなかで、「食べ物の話は妙に筆が乗るな〜」と思い始めて、「……あれ、私って食べ歩きばかりしている!」って気がつきました。自分を振り返る機会って意図してつくらないとないので、意外と自分の好みを把握しきれていない人もいるのではないでしょうか。

―たしかに、そうかも……!

朝井さん

普段何気なくやっている動作にも「好き」は潜んでいるかもしれません。たとえば、お家で紅茶を入れて飲むのも、立派なソロ活だと私は考えています。
 
それが日常になっている人は「いやいや、お茶を飲んでいるだけよ」って思うかもしれませんが、お茶を上手に入れられない私からしたら、自分が飲むために茶葉を選んで、道具をそろえて、お湯を沸かして注ぐ……っていう工程を自然に楽しめるって尊敬の眼差しです。

―朝井さんがソロ活を続けていくなかで感じた変化はありますか?

朝井さん

気持ちが安定してきたことでしょうか。誰かと出かけると相手に合わせることもありますが、ソロ活の場合、舵を取れるのは自分だけ。そのぶん、自分で決めたことを実行する達成感を味わえるんですね。
 
その経験を積み重ねていくうちに、だんだん他者の言葉や行動に左右されなくなって、「私はこれが好き」っていう考えを軸に動けるようになりました。繰り返しているうちに、心の皮が分厚くなったのかな? と思います。

自分で決めて「できた」ことが自信になる

―休日のソロ活をさらに楽しむための心得はありますか?

朝井さん

自分で可能性を狭めることなく、なんでもやってみるのがいいと思います。できるなら、その都度自分の感情を見つめてあげると、好きの理解度が深まって、お休みの日に「次は何しようかな?」とワクワクできるのではないでしょうか。

―自分の感情を見つめる、ですか?

朝井さん

場所はどこでもいいので、日記みたいに書き残すのがおすすめです。SNSに投稿するのでもいいし、自分のなかだけで留めておきたい人はノートやスマホのメモ帳でもOK。ソロ活をしてどんな感情になったか書き出してみてください。振り返る時間を持つことは、自分の「好き」を把握していくうえで大切です。

朝井さん

自分が何を好きなのかがわからない人は、割と誰かのために生きてきた、他人に合わせている時間が長い人に多い気がするんです。批判されることが怖くて、堂々と自分の「好き」を言いにくい場合もあるかもしれません。
 
私自身も人目を気にして、周りに合わせていた時期がありましたが、他人に合わせる時間が長くなるほど「個性」って消えてしまうんですよね。いまはソロ活をしやすい環境が整いつつあり、自分の「好き」を探究しやすい時代になったと思います。「ひとりだから」とか「人と違うかも?」と気にしすぎなくても大丈夫。胸を張って生きていいのです。

―少しずつ個性が尊重される時代になってきましたからね。朝井さんのエッセイがドラマ化されたのもそんな背景があるのかもしれませんね!

朝井さん

ドラマ化のお話をいただいたときは、「どうやってドラマにするの?」と驚いたのですが、うれしかったですね。
 
いまでは五月女 恵(さおとめ めぐみ/ドラマ『ソロ活女子のススメ』(テレビ東京系列)で、江口のりこさんが演じる主人公の名前)が心からソロ活を楽しむ姿を見て、「これいいな」って私もやってみる、“逆輸入”みたいな現象も起こっています。シーズン5ともなると、五月女さんは私もやったことがないソロ活をしていることがあって(笑)。ドラマの“聖地巡礼”も楽しいですよ。

―素敵!

朝井さん

行きたい場所が思いつかないときは、ドラマ『ソロ活女子のススメ』で取り上げられたソロ活から気になるものを選んでみるのもおすすめです。

―ありがとうございます!
最後になりますが、次の休日に「ソロ活」をしてみようと思っている方にアドバイスをお願いします。

朝井さん

はじめてのソロ活に挑む人は、「明るい時間帯に行ってみる(飲食店ならランチタイム)」「自分と似たような属性の人が集まる店に行ってみる」「一度行ったことのある場所に行く」とスムーズな一歩が踏み出せると思います。「自分でやるぞ!」と決めて挑戦したことが自信になって、きっと自分をもっと好きになれるはずです。

※「ソロ活」は株式会社レッツエンジョイ東京の登録商標です。

CREDIT
取材・文:つるたちかこ 編集:HELiCO編集部+ノオト イラスト:aya.m
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