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アイデンティティ見浦さん「汗っかきだと思ってたら、病気でした」

お笑いコンビ・アイデンティティの見浦彰彦さんは、2019年に手掌多汗症(※)の手術を受けたことを公表しました。手術の翌日、見浦さんは自身のブログで「やっと普通の人になれた気分です」と当時の心境を書き残しています。

※手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)……温熱や精神的負荷の有無いかんに関わらず、日常生活に支障をきたす程の大量の発汗が手のひらに生じる病気

手術により手汗はかかなくなったものの、代償性発汗(手術部位以外で多汗症になる症状)によって胸と背中に異常に汗をかくようになってしまったそう……。長い間「汗」と向き合ってきた見浦さんに、多汗症の体験談をお聞きします。

教えてくれるのは…
見浦 彰彦さん

1984年生まれ、広島県出身。芸人。東京アナウンス学院芸能バラエティ科在学中の2004年に、田島直弥さんとお笑いコンビ「アイデンティティ」を結成。2019年に手掌多汗症の手術を受けたことを公表した。

HP:https://www.ohtapro.co.jp/talent/identity.html
YouTube:https://www.youtube.com/c/identity5917
X:https://x.com/idenmiura

思春期は、手汗の悩みを言えなかった

―今回のテーマは『汗』です。手汗が気になり始めたのはいつ頃でしょうか?

見浦さん

小学3年生くらいです。教科書やプリントが手汗で“じめっ”と濡れてしまうことがあったのですが、当時は「これが普通なのかな」と思っていました。3歳上の姉貴にも「みてみて〜」と手汗を自慢じゃないですけど、披露していたのですが、気持ち悪いとかネガティブな言葉や態度を取らずに「すごいねー」と驚いてくれたんです。この頃は、まさか病気だとは気づいていませんでした。

―素敵なお姉さんですね。

見浦さん

いま思えば、気を遣ってくれたのかな? とか思いますけどね。ただ成長していくなかで「やっぱり人とは違うかもしれない」と思うようになってきて。一番嫌だったのは、運動会のフォークダンスでした。

小学5年生の見浦さん。当時は、手汗が教科書やプリントにつかないよう手と紙の間に下敷きやハンカチを挟み、"こっそり”対策をしていたそう。

―必ず手を繋がないといけないですもんね。

見浦さん

手汗がコンプレックスだったので、自分の番が回ってくると、相手にどう思われているのかが気になってしまって。周りに同じような症状の子もいないし、『手掌多汗症』なんて病名も知らなかったので、このモヤモヤを誰に相談したらいいのか……人には相談できませんでした。自分は汗っかきな体質なんだ、と思うしかなかったんです。

―どのように手汗対策していたのでしょうか?

見浦さん

対策というより、極力人に触れないようにして過ごしていました。部活も空手部だったので、とくに支障はなく隠せていたかな? 大人になってからは、先輩たちと飲みにいくとき、手汗に気づかれないよう、つねにおしぼりを握っていましたね。

小学生の頃は、手汗がひどく鉄棒など「握る」運動は大変だったそう。お付き合いした人とも、「手をつなぐのは好きじゃない」と腕を組むようにしていたのだとか。

―芸人さんになってからは握手を求められることも多いのでは?

見浦さん

そうですね。すごいありがたいし、できることなら喜んでお応えしたいんですけど……毎回「ちょっとすみません、僕汗っかきなんです」って必ず申告して、ズボンで汗を拭いてから握手していました。あまり汗が出てこなくて調子がいいときもあるんですよ! でも意識するとまた汗が出ましたね。

相方の「ちゃんと調べてみたら?」をきっかけに病院へ

―「病気だ」とわかったのはいつ頃なのでしょうか?

見浦さん

大人になってからなんです。お客さんにサイン色紙をお渡しするとき、色紙の端が湿っていたり、文字が汗でにじんでいたりすることがあって、相方から「仕事に支障が出るなら、なんとかしたほうがいいんじゃない? 病院で調べてみたら?」と。

「気づかないかもしれないけど、日常生活のなかで手って結構使うんですよ」と見浦さん。 スマホも指紋認証やタッチがうまくできず困ったこともあったと話してくれました。

見浦さん

相方にそう言われて、「たしかに、病名とかあるのかな?」と思って調べたら手掌多汗症っていうのが出てきて、そこで初めて「これは病気だったんだ」って知りました。

―相方さんの一声で病院へ?

見浦さん

そうです。手術できることがわかったので、「やってみようかな」と病院にいったのが2018年の暮れ頃ですね。カウンセリングをして、手術前後についてお医者さんから説明を受けて。手術費用も保険適用されたので、思っていたよりも「安い」と思えました。相談してから3か月後には、手術をしました。

―結構トントン拍子でしたね。

見浦さん

あまり躊躇しなかったですね。「この手汗が止まるなら」っていう思いが強かった。お医者さんから代償性発汗という手術の合併症についての説明もこのときにあったのですが、合併症のリスクは個人差があるのと、1か月もすれば体も慣れてくると聞いていました。なかには重度の症状が出る人がいるけれど、全体の1割くらいと聞いていたので、あんまり深く考えていなかったんですよね。……結果的には、1割の確率を引いてしまったのですが。

手汗はなくなったけれど……

―なるほど。重度の症状が出てしまったということでしょうか?

見浦さん

手術によって手の汗はびっくりするほどかかなくなりました。「あぁ〜普通の人間になれた」と思ったのですが、手術後、重度の代償性発汗になってしまったんです。

―代償性発汗とは、どのような症状なのでしょうか?

見浦さん

個人差があるものなのであくまで「僕の場合」ですが、お風呂上がりなど胸と背中から汗が止まらなくなってしまいました。汗って止め方がわからないでしょ? せっかくお風呂に入ったのに、しばらく経つと汗だらけ。夏場のお風呂上がりは、しばらく上半身裸で過ごしていますね。

「夏の営業や学祭など屋外のイベントも、汗が止まらなくて本当に大変なんです……」と、見浦さん。最近は、相方さんとも相談してラフな格好で漫才をするようになったそうです。

―夏場はとくに大変ですよね。どのように対策されているのですか?

見浦さん

ミラドライという治療も受けましたが、汗は完全には止まりませんでした。また日頃から洋服を何枚も持ち歩けないですし、キリがない。だから基本的には速乾性のある服を買うようになりましたね。最近はスポーツブランドがいい生地で作ってくれるんですよ。今日着ている服もサラサラの服なので、ほら、汗シミが目立ちにくいでしょ?

―ちょっと見浦さんの汗を期待してしまっていた部分もあるのですが……(笑)。めっちゃサラサラですね!

見浦さん

期待していたんですか!(笑)あと冬場の電車も意外と汗が出るんですよ。夏だけじゃないので、身体には結構負担かけちゃっていると感じるときはありますね。

打ち明けられたら、気持ちがラクになる。悩みすぎないで

―手術をしたあとにはどんな心境の変化がありましたか?

見浦さん

長年悩んでいた手汗のストレスは本当になくなりました。代償性発汗は残ってしまったけど、自分の名前を書くときに「手汗を気にしなくていいんだ!」とか、大好きな漫画本が手汗でシワシワにならずに読めるようになったのはうれしかったですね。あ、あとコンセントの抜き差しでも感電しなくなりました。

「昔はビリヤードのキューを指の間で滑らせることができなかったけど、いまは手がサラサラなので滑ります」と見浦さん。

―コンセントの抜き差しで感電?!危ない!!

見浦さん

いや〜安全に過ごせるようになって、本当によかったです。テレビで手掌多汗症のことを話したときも、反響があっていろんなコメントをいただきました。なかには「私も手術したほうがいいですか?」と聞いてくる人もいるのですが、メリット・デメリットを把握したうえで、自分でしっかりと考えて決断することが大事だと伝えています。

―「汗」ってわりとセンシティブなトピックスだと思っていましたが、見浦さんはとても明るくお話しされているのにちょっぴり驚きました。

見浦さん

妻の存在が大きいのかもしれませんね。彼女とつき合ったとき、なるべく手を握らないように避けていたんですけど、「私は乾燥肌だから、湿っている手があるとスーパーで袋を開けやすくて助かる!」とか、「うるおいをちょうだい〜」って言ってくれて(笑)。手術を受けると決めたときも、「やってみたら?」と背中を押してもらえました。代償性発汗も受け入れてくれているし、一人だったらまだ苦しんでいたかもしれませんね。妻の存在に救われています。あと相方も!

―周りの方々に相談できたことで、見浦さんの心も前向きになっていったのかもしれませんね。

見浦さん

汗の悩みってなかなか人に言えなくて、一人で抱え込みがちになると思うんです。僕自身がそうだったので。いまは、テレビCMでも手掌多汗症のことが紹介されていて認知度は高まってきています。汗のことでつらさを感じている方は、信頼できる人にまずは打ち明けてみると気持ちがラクになるはず。なかなか打ち明ける勇気がなくてもネット上には同じ悩みを抱えている人の情報も出てくるので、調べてみるだけでも「私だけじゃない」と思えるはずです。

―ありがとうございます。最後に、この記事を読んでいる読者の皆さんへメッセージをお願いします。

見浦さん

いま、手掌多汗症に悩んでいる方の気持ち、すごくよくわかります。とっても悩んでいると思います。でも、気にしてもしょうがないことなので、一人で抱え込むのをやめることから始めてみてください。気持ちが塞ぎ込んでしまうと、生活が制限されちゃいますからね。汗はずっとおつき合いしていくものだから、少しでも前向きに歩んでもらえたらうれしいな、と思いますね。

CREDIT
取材・文:つるたちかこ 写真:小野奈那子 編集:HELiCO編集部+ノオト
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