40歳ごろから自覚しやすい体力の衰え。疲れやすい、気力がわかない、無理がきかない……など、若い頃とは違う体とどう向き合っていくのがよいのでしょう。
この記事では、普段の生活で無理なくできる「体力づくり実践法」を紹介。体力アップにつながるストレッチや姿勢のコツなども紹介していきます。上手に取り入れていきましょう!
- 教えてくれるのは…
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- 中村 格子先生
- Dr.KAKUKO Sports Clinic 院長 整形外科医・医学博士・スポーツドクター
横浜市立大学医学部卒。第一線の臨床整形外科医として勤務後、スピードスケート日本代表チームのチームドクター、JOC強化スタッフとしてスポーツドクターと病院勤務を行う。その後、国立スポーツ科学センターの医学研究員などを経て現職。現役臨床整形外科医として25年以上のキャリアとトップアスリートのコンディショニングの経験から独自のエクササイズを提案。メディア出演も多数。著書に『大人のラジオ体操』『医師が教えるゼロポジ座り 疲れない、太らない、老けない』などがある。
Dr.KAKUKO Sports Clinic:https://www.dk-sc.com/
[監修者] 中村 格子先生:https://www.dr-kakuko.com/
年齢とともに感じる「体力の衰え」
私たちの活動の源である体力。一般的には「人間として生存、生活するための基礎能力」と定義されており、大きく分けて2つの要素があります。
- 身体的な体力:体格、姿勢、筋力、持久力や柔軟性、病気に対する抵抗力など
- 精神的な体力:意思や判断力を維持する力、意欲、精神的なメンタルの強さなど
アクティブに過ごしていくには、身体面と精神面の両方が充実していることが欠かせません。
40代からはこんな変化に注意!
40代の心身には、以下のような変化が現れやすいといわれています。
□ 筋肉量・筋力が低下し、体脂肪率が上昇する
□ 柔軟性が低下してくるため、身体のバランスが悪くなる
□ バランスの悪さから、ひざ、腰の関節痛や肩こりなどの悩みが増えていく
□ 「変形性膝関節症」が増える(特に女性)
□ 性ホルモンの分泌が低下し、身体・精神面ともにさまざまな不調を感じやすい
□ 仕事や家庭などで責任のある役割を担うことが多く、ストレスを抱えやすい
□ 忙しさや加齢の影響で、睡眠時間が短くなりやすい
身体的な体力は、若い頃の生活習慣や運動経験なども影響してくるため、個人差が大きいのも事実ですが、一般的には年齢とともに落ちていきます。
40代からの体づくりは、「疲れにくい体」を目指す
年齢とともに落ちてくる筋力、バランス力、柔軟性を維持するためには、日常生活のなかで効率よく活動量を増やすこと、運動を取り入れることが大切です。
有酸素運動はすべての人にやってほしい運動
体力アップに欠かせないのが、心肺機能を高め全身の血流をよくする、ウォーキングや水泳などの有酸素運動です。血流の改善は、疲労の軽減にもつながります。運動をする時間がない人は、毎日の歩数が大事な目安に。早く歩くことやたくさん歩くことを意識しましょう。
日常にサッと取り入れられる!ストレッチ4選
関節が硬くなると動きが制限され、歩行に必要な下肢の筋力が落ちてきて、身体のバランスも崩れやすくなります。座っている時間が長く、運動もままならないという人は、1時間に1回、またはトイレに行くタイミングなどに、関節をほぐし筋肉を刺激する下記のストレッチを取り入れてみましょう。
気持ちいいと感じる程度に留めて、痛みがある場合は無理をしないのがポイントです。
1ひざのストレッチ
期待できること
美しい姿勢、ひざの痛み軽減、むくみ・冷え解消
手順
- 椅子に浅く腰掛けて、片方の足を伸ばす。ひざと足首をまっすぐ伸ばし、つま先を天井に向ける。
- 背筋を伸ばした状態で、上半身を前に倒す。ひざ裏が気持ちよく伸びたところで15〜30秒(5呼吸ぐらい)キープ。
- 反対の足も同様に行う。(片脚×3回が目安)
※1:お尻の付け根から太ももの裏側、ひざ裏周辺にある筋肉
※2:太ももの前面に位置する4つの筋群
2股関節&前もものストレッチ
期待できること
美しい姿勢、ひざを曲げる動作や股関節の柔軟性向上
手順
- 立った姿勢で片足のひざを後ろに曲げ、足の甲を両手で持つ。
- かかとをお尻に近づける。太もも前と股関節が気持ちよく伸びたところで15〜30秒(5呼吸ぐらい)キープ。
- 反対の足も同様に行う。(片脚×3回が目安)
3胸を開くストレッチ
期待できること
美しい姿勢、血行促進、胸郭(※)や呼吸筋をほぐし呼吸機能アップ
※胸郭:胸部を取り囲む、かご状の骨格。肋骨・胸椎・胸骨・助骨からなり、骨格腰部や頸椎の運動にも関わる身体運動の要
手順
- 立った姿勢で息を吸いながら、腕を斜め後ろへ伸ばす。
- 息を吐きながら、腕を体の前で交差させる。
- 1と2を4回程度繰り返す。
- 最後に息をフーッと吐きながら、手を体側に戻す。(ズボンの縫い目に中指がくる位置)
4背伸び&お腹伸ばしストレッチ
期待できること
美しい姿勢、疲労感やコリの回復
手順
- 足を開いて立ち、息を吸いながら両手を組んでまっすぐ上げる。腕と足で背筋を引っ張り合い、おへその穴を縦に伸ばすようなイメージで行う。
- 息を吐きながら、腕を横からゆっくり下ろす。
- 1と2を数回繰り返す。
じつは筋肉や骨からもうれしいホルモンが出ている!
近年、筋肉を刺激したり骨に負荷をかけたりすることで、さまざまな臓器に対してよい影響を与えるホルモンが分泌されることがわかってきました。たとえば、運動によって骨格筋から分泌されるホルモン「マイオカイン」は、脳を活性化したり、骨を丈夫にしたりと、全身の健康によい働きをもたらします。
座り方を意識するだけでも、疲れにくい体づくりはできる
股関節が詰まる姿勢を長時間続けていると、歩行や姿勢に悪影響が出てしまいます。そこでおすすめなのが、中村先生考案の「ゼロポジ座り」。骨盤を立てるようなイメージで、上体と太ももの角度を110度にする座り方です。関節の病気などの予防になるほか、疲れにくい、体幹が鍛えられる、フットワークも軽くなるなどメリットがたくさん。長時間のデスクワークをしている方は、この座り方を意識してみてください。
体づくりは食事や睡眠とセットで!
体力アップには運動が欠かせませんが、運動の効果は、栄養と睡眠をしっかり摂らないと現れません。3つのバランスが取れてはじめて、動きやすく疲れにくい体をつくることができます。
食事のポイント
Protein(タンパク質)、Fat(脂質)、Carbohydrate(炭水化物)の「PFCバランス」を意識して摂ることで栄養バランスが整い、太りにくくもなります。カロリーだけにとらわれていると、栄養バランスを崩してしまうので気をつけましょう。
18歳から49歳の男女の理想的なPFCバランス
タンパク質13~20% / 脂質20~30% / 炭水化物50~65%
毎食ごとにこのバランスを目指さなくても、1日または1週間でこのバランスになればOK。主食、主菜、副菜を取るようにするとバランスを取りやすくなります。
睡眠のポイント
朝目覚めたとき、体が休まったと感じられる「睡眠休養感」があるかどうかは大切なポイント。成人(65歳未満)は6時間以上の睡眠をひとつの目安にしましょう。
ワクワク感を大切に、「マイペース」で行こう
40代からの体づくりは、ハードに鍛えるというよりも、「痛みのない体」「動きやすい体」「姿勢のいい体」を目指していくと、継続しやすくうまくいきそうです。そして、調子のいい状態をキープできれば、いろんなことにポジティブに活動的に過ごしていけるでしょう。
運動が苦手な人やこれまで運動習慣がなかった人は、散策、旅行、ハイキング、ダンスなどの習い事といったワクワクすることを見つけて、趣味として楽しみながら運動量や活動量を上げていくのも一案です。それを40代から始めて50代、60代と続けていく。10年、20年積み上げたら大きな財産になるはずです。