40歳を超えると「食べられる量が減った」「お酒が弱くなった」という声や、「太りやすくなった」「体重が減らない」という悩みが聞こえてきます。40代以降は、体にさまざまな変化が起きる時期。将来の健康に備えつつ、若々しく元気な体を維持するにはどのような食べ方・飲み方が理想なのでしょう。アイセイ薬局の管理栄養士チームが、40代から意識・実践したい食生活のポイントを紹介します。
- 教えてくれるのは…
-
- 株式会社アイセイ薬局 管理栄養士チーム
アイセイ薬局 認定栄養ケア・ステーション:https://www.aisei.co.jp/initiative/health-care-station/
40歳から食生活の見直しが必要なワケ
心と体を元気に保ち、健康を維持するためには、普段の食事から栄養素をしっかり摂取する必要があります。特に女性の40代は、女性ホルモンの分泌量低下から体調が不安定になりやすいうえに、骨や筋肉、神経などの老化が進んでいく年代です。老年期の健康のためには、40代からの食生活の見直しが重要となります。
いま、そして将来の体のために、ちょっとした意識や工夫で、毎日の食生活をより健康的にしましょう。アイセイ薬局の管理栄養士による6つのアドバイスを紹介します。
1カルシウム&たんぱく質の摂取量を増やそう
40歳からは、「カルシウム&たんぱく質」の摂取量をいかに増やせるかが、鍵になります。
普段の食生活でカルシウムやビタミンDが不足すると、骨密度低下の原因に。それに加えて女性は閉経後に女性ホルモンが激減することで骨密度が減少し、骨粗しょう症のリスクが高まります。年齢とともに「腸管でのカルシウム吸収が悪くなる」ことや、カルシウムの吸収を助ける「ビタミンDをつくる働き」が弱まることも骨が弱くなる要因です。老年期の骨折や寝たきり対策のためにも、骨の強化・維持を意識したいところ。カルシウムと、骨の形成をサポートするビタミンDとビタミンKの摂取を心がけましょう。
また、加齢による筋肉量と筋力の低下に欠かせないのが、たんぱく質。筋肉が落ちたところに脂肪がつくと、体脂肪率が高くなり、いわゆる「隠れ肥満」の状態に。疲れやすくなったり、体が重たく感じたりと、さまざまな不調の原因にもなります。たんぱく質の摂取量を増やし、日々の運動量や活動量も確保したいものです。
カルシウムやたんぱく質を効率よく摂取するには、食事をバランスよく毎食しっかり摂ること、さらに間食も上手に活用することがポイントになります。外出先では手軽なカルシウム源&たんぱく源として牛乳などの乳製品を、昼食にはビタミンDが豊富でたんぱく源にもなる鮭の弁当やおにぎりなどもおすすめです。
カルシウムが摂れる食品:牛乳や乳製品、野菜、小魚、干しエビ、しらす干し、納豆、小松菜など
ビタミンDが摂れる食品:魚、キノコ、乾燥きくらげなど
ビタミンKが摂れる食品:小松菜、ブロッコリー、わかめ、納豆など
たんぱく質が摂れる食品:肉、魚、大豆、卵、チーズなど
たんぱく源であるお肉は太るというイメージがあるかもしれませんが、エネルギー(カロリー)を気にしてお肉を避けていると、筋肉量の低下につながりかねません。体重が減ったとしても、リバウンドしやすい体になってしまうので、この後に紹介する「手ばかり栄養法」を参考に、お肉を摂ることを意識しましょう。胃がもたれてたくさん食べられない人は、プロテインなどを活用してもいいでしょう。
2主食、主菜、副菜をそろえよう
「一汁三菜」を徹底しなくても、主食、主菜、副菜がそろった「定食風の献立」を意識するだけで栄養バランスが整いやすくなります。ご飯やパンなどの主食を中心に、主菜(魚、肉、卵、大豆製品)、副菜(野菜、キノコ、海藻、イモ類など)、その他(乳製品や果物など)と、多様な食材と料理を組み合わせた献立に近づけるようにしましょう。
単品になりがちなランチも、定食風にすれば栄養バランスが整いやすくなります。たとえば、おにぎり2~3個ではなく、おにぎり1~2個+ゆで卵や豆腐バー+野菜サラダにする、丼物なら中華丼のように野菜とお肉がそろったものを選ぶなど工夫してみましょう。
3手ばかりを基準に食べよう
カロリーも栄養摂取量も気になるけれど、毎食計算をしながら食べるのは大変です。そんなときは、自分の手を使った「手ばかり栄養法」を覚えておくと、1食分や1日の食事の適量をすぐにチェックできて、カロリーコントロールも簡単です。大人一人分の1日の目安量は下記の通りです。
あくまで目安となります。疾患のある方は、主治医の指示に従ってください。
主食
ご飯、パン、麺類などエネルギーとなる炭水化物を多く含む食材。適量は、1食あたり両手1杯分(ご飯なら普通茶碗1杯、食パンなら6枚切り1.5枚、うどんなら1玉)。
主菜
卵、肉、魚、豆腐などたんぱく質を多く含むメインディッシュのこと。適量は、1日に両手に乗る程度
※そのうち肉、魚は手のひらの大きさ1切れ分(肉や魚の厚みは、手の厚みを目安に)
副菜
ビタミン、ミネラル、食物繊維を摂れる野菜、きのこ・海藻類などを使ったおかず。適量は、1日に両手3杯分(加熱する前の量)
※緑黄色野菜、きのこ・海藻類、淡色野菜は1:1:1 の割合で合わせて350g程度が目安
※芋類・かぼちゃなどは糖質が多いため、握りこぶし1つ分以上食べる場合には主食に含める
その他の食事の目安量
- 牛乳・乳製品は、1日に人差し指の長さ程度(200ml)
- 果物は、1日に片手に乗る量(または握りこぶし1つ分)
- 間食(菓子パンやお菓子など)は、1日200kcal以内(クッキーなら2枚、チョコなら3粒など)
4食事の回数や時間を自分で決めよう
以前は通説として、「中年太りは年齢とともに代謝が低下することが原因」といわれてきましたが、近年の研究から基礎代謝は20代半ばから60歳まではほぼ変わらないことがわかってきました。太りやすくなったと感じている原因は、日ごろの「栄養の偏り」「ちょっとした食べ過ぎ(間食)の積み重ね」「活動量不足」などにあるかもしれません。
太りにくい食べ方の一つは、欠食をしないこと。空腹時間が長くなると軽い飢餓状態になり、次の食事で一度にどか食いをしやすくなります。朝から脳や体を元気に動かすためにも、朝食からしっかりと1日3回のバランスの良い食事を習慣にしましょう。
また、夜遅い時間の食事も要注意です。余ったエネルギーを脂肪として体に蓄える働きを持つ「BMAL1(ビーマルワン)」というたんぱく質は、夜22時以降に増えるとされ、夜遅い時間の食事は脂肪増加につながりやすく太る原因に。仕事の事情などで22時以降に夕食を摂る人は、夕方におにぎりやサンドイッチを食べておき、帰宅後は野菜や脂の少ないたんぱく質を摂るようにするといいでしょう。
5食べ方のクセを見つけて弱点を補おう
ライフスタイルや好みによって一人ひとり違う食べ方のクセ。毎日が忙しく食事は単品メニューに頼ってしまう、子どもに合わせた食生活になってしまうなど、40代によくある偏食になりがちなケースごとに、市販品や身近な食材を上手に活用しながら理想の栄養バランスに近づける方法を紹介します。
子育てや仕事が忙しく食事が十分取れていない、運動する時間も取れていない
野菜嫌いの子どもに合わせた食生活になりがち
仕事が忙しく、昼食はパンやおにぎりなど炭水化物が中心になりがち
デスクワーク中心の仕事で、ついついお菓子をつまんでしまう
アイセイ薬局の管理栄養士に、栄養相談をしてみよう!
より具体的に自分のライフスタイルや悩みを踏まえた、管理栄養士のアドバイスが聞きたい! という方は、アイセイ薬局の取り組み「認定栄養ケア・ステーション」をぜひご活用ください。栄養相談、食事分析、レシピ/献立考案などをご用意しています。
詳しくは、こちらをチェック!
アイセイ薬局 認定栄養ケア・ステーション
https://www.aisei.co.jp/initiative/health-care-station/
6「お酒が飲めなくなった」は本当。酒量を減らす工夫を
年齢を重ねるごとに、お酒に弱くなる、二日酔いが増えた……。こんな実感の背景には、いくつか原因があります。1つは加齢により肝機能が弱くなり、アルコールを分解するスピードが遅くなるため。もう1つは体内の水分量の低下です。特に女性はもともと体脂肪が多く、男性よりも体の水分量が少ないために、血中のアルコール濃度が高くなりやすい=早く酔いやすいのです。さらに、加齢によって筋肉量が減ってくると、以前よりもお酒に弱くなったと感じやすくなるのかもしれません。
体が変化してきた40代では「自分はお酒に強い」と自覚していても、無茶は禁物。お酒の適量は個人差がありますが、1日平均で女性は純アルコール量で20g以上、男性は40g以上の飲酒を続けていると、糖尿病や高血圧、肝障害、がんやうつ病などのさまざまな健康問題のリスクが高まるとされています。
飲酒は乳がんなど女性特有の疾患にも影響します。多量の飲酒は骨密度を低下させ、骨粗しょう症や骨折の原因になることにも注意が必要です。高齢者やもともとお酒に弱い人は、適量よりも少なくする、あるいは飲まないのがおすすめです。
純アルコール量(g)は、飲んだ容量(ml)×アルコール度数(%)×アルコール比重(0.8)で計算できます。アプリなども活用して、お酒を飲むときに意識しましょう。
40代からの飲酒で気をつけるべきポイント
急激な血中アルコール濃度の上昇を抑えるためにも、お酒を飲むなら料理も一緒に楽しみましょう。おつまみは、胆汁酸の分泌も促す「タウリン」を含むイカやタコなどの食材がおすすめです。また、以下のポイントを意識することで体への負担を減らすことができます。
● 年齢とともに酒量を減らす
● 小さいコップで飲む
● 夜○時以降は飲まないと決める
● 脱水症予防のためにも、水分を取りながら飲む
● 休肝日は2〜3日まとめて取って、肝臓を休める
● お酒の強い人とは一緒に飲まない
● 翌朝、目覚めた時にお酒が残っているような飲み方はしない
食事は健康づくりの基本!
40代になり、以前とは食の好みや量、体型が変わってきた実感があるなら、食生活を見直すチャンスかもしれません。いきなり大きく変えるのではなく、できることから少しずつ、年齢にあったバランスのよい食生活を取り入れましょう。