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飲みすぎ
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これまで、アルコールに関する健康問題には「断酒」が治療の大原則でした。でも今、「お酒をやめろ」と言わない、そんな治療を行っている医療機関が増えています。
お酒をやめなくてもいい、お酒による害や問題を減らすための飲み方を、医師と一緒に考える新しい外来です。
お酒に関する困りごとなら何でも相談できるのが減酒外来(アルコール低減外来)*。断酒しろと言われたくないな、依存症というほどでもないはず、でもお酒の問題は何とかしたい――そんなときに頼れる専門家がいたら、心強いですよね。もちろん本人だけでなく、家族の相談もOKです。 *医療機関によって名称は様々です。
まずは、今困っていることや、日々の飲酒量を具体的に伝えます。アルコールへの依存度や問題飲酒の程度を数値化する簡単なテストを受けたうえで、医師とともにお酒による問題や害を減らすための目標を決めていきます。減酒はもちろん、断酒に挑戦するのも、はたまたお酒の量は変えずに、今抱えている困りごとが起こらないようにするための飲み方を模索するのもあり。その人の生活や状況に合った方法で、お酒の害の低減を目指します。
断酒だけでなく「減酒」が治療の選択肢となってきた背景には、「減酒薬(ナルメフェン)」と呼ばれるお薬が保険適用となったことも大きく影響しています。従来アルコール依存症の治療に使われてきた「嫌酒薬」(お酒を飲むと体調が悪くなる)と異なり、お酒を飲み始める1~2時間前に服用して飲酒の欲求自体を抑えるもので、医師が必要と判断した場合には、こうしたお薬も使いながら、お酒の量や飲み方を見直した生活を続けていきます。
減酒に成功すると体調や気持ちも上向きになり、さらに自ら断酒を目指す人も多いそう。定期的な通院で、血液検査や呼気検査などとともに医師のカウンセリングを受けながら、お酒とのよい付き合い方を継続していきます。
アルコールに関する健康問題の診療を行っている医療機関であっても、減酒治療を実施していない施設もあります。お住まいの地域の精神保健福祉センターに問い合わせることで、近隣の減酒外来の情報を教えてもらうことができます。
【監修】吉本 尚 先生
(筑波大学医学医療系地域総合診療医学准教授)
従来精神科で行われてきたアルコール依存症の治療を総合診療医の視点から行う、アルコール関連障害診療のエキスパート。大学病院内などに「アルコール低減外来」を開設している。
ヘルス・グラフィックマガジンvol.42
「飲みすぎ」より転載(2021年12月15日発行)