感覚器から、もの忘れ対策
「噛む・嗅ぐ・聴く」役割を担当している感覚器は、その衰えが脳への刺激の減少につながります。大切に使い続けるために、注意したいポイントと対策をご紹介します。
口の中は非常に鋭い感覚があり、複数の筋肉や神経と連動して食べ物の味や硬さ、温度などを脳に伝えています。よく噛んで食事をすると、脳に多くの情報が送られ、脳の活性化につながります。
また、歯周病や虫歯などで歯を失ってしっかり噛めなくなると、栄養状態も悪化。自分の歯の数が少ない人ほど認知機能が下がる傾向にあるという報告もあります。できるだけ長く自分の歯でしっかり噛めるように健康な歯を維持しましょう。
●歯ブラシ、フロスでのケアで、歯の健康を大切に
●1本でも抜けたら入れ歯の検討を
●サイズの合った入れ歯を使い、定期的なメンテナンスを
●よく噛んで食べる
●柔らかいものばかり食べない
鼻の奥にある嗅神経からの情報は、ダイレクトに脳に伝わります。アルツハイマー型認知症では、最初に嗅神経がダメージを受け、においが感じられにくくなる点からも、においに意識的になっておくことは大切です。
●花の香りなど、日常生活の中で感じる自然なにおいを意識する習慣を
●カレーやミントなど、特徴の強いにおいが分かるかどうかチェックし、気になる場合は耳鼻咽喉科へ
聴覚は、言語の聞き取り、会話内容の理解などで、脳の広い範囲を使っています。そのため、聴覚が衰えると、脳への刺激が減ることに。聴力を保つことを意識した生活がポイントです。
近年の補聴器は高性能で、大きさや耳への装着方法もさまざまなタイプが販売されています。聴きたいものや使う環境に合わせて選びましょう。早めの段階から補聴器を使うことで、脳への刺激を保つことができるとともに、使いこなすまでのハードルも低くなります。
●大きな音を長時間聴かない
●血行を促進し、聴力キープに役立つ有酸素運動の習慣化を
●聞こえにくいと感じたら早めに補聴器を検討
●騒音のある場所では耳栓などの防音具を活用する
【監修】浦上 克哉 先生
(鳥取大学医学部保健学科認知症予防学講座教授)
日本認知症予防学会理事長も務める、認知症診断・予防のエキスパート。著書に『科学的に正しい認知症予防講義』(翔泳社)など。
ヘルス・グラフィックマガジンvol.43
「もの忘れ」より転載(2022年3月15日発行)