最近はスパイスカレーなどの「スパイス料理」が大人気ですが、「本格的なカレーを家でつくりたいけど、ハードルが高いなあ」と思っている人も多いはず。でも、じつは「スパイス」をおうちメニューに取り入れるのは意外と簡単なんです! 本連載では、さまざまなメディアで大注目の料理研究家・印度カリー子さんが、おいしくて手軽につくれて、ちょっと健康になれるスパイス料理を毎月2品紹介してくれます。
今月のテーマは「ターメリックで免疫アップ」。主役となるスパイス・ターメリックの鮮やかな黄色が、食欲をそそります。毎日のメニューで、スパイスを使い倒しましょう!
- 教えてくれるのは・・・
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- 印度カリー子さん
- スパイス初心者のための専門店・香林館(株)代表取締役、スパイス料理研究家
1996年11月、宮城県仙台市生まれ。著書の累計発行部数は26万部(2021年9月現在)を超え、各種メディアでも大注目。自身のスパイスショップ(ネットストア)では、初心者のためのスパイスキットや日本初の「クイックカレー」を販売している。2021年3月、東京大学大学院農学生命科学研究科修了。JAPAN MENSA会員。
Twitter:@IndoCurryKo
Instagram:@indocurryko
https://indocurryko.net/
ターメリックが「免疫アップ」に効果あり
今月の主役スパイスは「ターメリック」。ショウガ科の植物の根っこの部分で、「ウコン」とも呼ばれます。加熱すると発色が良く、お料理を鮮やかな黄色に染めてくれます(カレーの黄色も、じつはターメリックによるもの!)。肉や魚の臭みを取ってくれたり、味に深みを出してくれたりと大活躍なのですが、入れすぎると土臭くなるので要注意! 油との相性が良いので、油分を含む食材との組み合わせや、炒めものなどに使用するのがおすすめです。
そして、この特徴的な黄色い成分「クルクミン」が抗酸化物質を多く含むので、老化防止や免疫力を高める効果が期待されています。
ホールスパイス(粉砕してない粒状のもの)の場合は、先に炒めて香りを出す必要があります。今回使用したパウダー状の場合は、最初から炒めると焦げてしまいますので(ホールスパイスは先に炒める必要があります)、味つけの際にほかの調味料といっしょに入れてOK。気軽に使ってみましょう!
【メイン料理】サラミのターメリックピラフ
「ピラフにサラミ?」と思われたかもしれません。もちろん、インド料理にも「サラミピラフ」はありません。「油+ターメリック」「家で余っていそうな食材」というポイントから発想を得て、私が考案した独自メニューです。サラミとニンニクの風味がビックリするほどお米に合って、ターメリックライスが立派な主役になります。おつまみとして買ってきたサラミを、思わずピラフ用に残しておきたくなるおいしさ! 具材を海老に替えてもターメリックとの相性はバツグンですが、「油分」を補うためにバター(10g)を加えても良いかもしれません。
ニンニクにも抗酸化作用や免疫に良い効果があり、ターメリックとの相乗効果もあると言われています。また、単体では吸収率が良くないとされるターメリックですが、黒コショウと一緒にとることで吸収率が高まると言われています。
材料(2人分)
- サラミ 40g *ソーセージや海老などでもOK
- 米 2合
- ニンニク 3かけ
- 塩 小さじ1/2
- 黒コショウ 小さじ1/2 *粗挽きは風味が良く、細かく挽いたものは辛さが出る
- ターメリック 小さじ1/4
つくり方(所要時間:5分)※炊飯時間は除く
- 米を洗い30分以上浸水させておきます。
- サラミは細切り、ニンニクはスライスしておきます。
- 炊飯器にお米と水を2合の線まで入れ、残りの材料を加えて混ぜます。あとはいつも通りに炊く、たったこれだけ!
- 炊き上がったら完成です。仕上げに、お好みでパセリやバジルを振っても。
【副菜】ターメリックの塩豚汁
「油+ターメリック」の相性については先にも書いたとおりですが、今回つくる副菜は、具材の「豚肉」と、炒めるときに使用する「ごま油」、そして主役のターメリックを組み合わせることでおいしさアップを狙っています。味噌味の豚汁にもターメリックの風味は合いますが、野菜だけの味噌汁だと土っぽい香りが出てしまう場合もあるので、ぜひ油あげやひき肉などを加えてみてください(あるいは、肉の油の替わりとして、具材となる野菜を油で炒めても良いです)。なお、最後に鰹節を入れますが「ターメリック+鰹節」は最高のマッチング! じつはインドの南にあり、インドに次いでスパイス大国のひとつでもあるスリランカでは当たり前に使われているんですよ。基本的にはスパイスレシピに「出汁」は不要ですが、鰹節が入ることでさらに風味が豊かになります。
材料(2人分)
- 豚バラ薄切り肉 100g
- ニンニク 1かけ
- にんじん 1/3本
- 大根 10cm
- ゴボウ 20cm
- しめじ 1/4株 *野菜やきのこはお好きな具材で
- ごま油 大さじ1
- 塩 小さじ1
- ターメリック 小さじ1/2
- 鰹節 ひとつかみ(3gほど)
- 水 300ml
つくり方(所要時間:30分)
- 野菜は皮をむき、にんじんと大根は5mm厚の半月切りやいちょう切りに、ゴボウは5mm厚のななめ切りに、豚バラ薄切り肉は小さく切ります。
- 深めのフライパンにごま油を引き、みじん切りにしたニンニクを弱火で炒めます。
- ニンニクの香りが立ってきたら豚肉、根菜、ターメリック、塩を加えて、弱火で2分ほど炒めます。
- 水、しめじを加えたら、ふたをして20分ほど煮込みます。最後に鰹節を加え、火を止めたら完成。
いかがでしたか? とても簡単なレシピなので、スパイスを使いこなせるようになるまで、具材などをアレンジしながら何度でもつくってみてくださいね。今後のスパイステーマは、10月「クミンで食欲アップ」、11月「カルダモンでストレス解消&リラックス」です。どうぞお楽しみに!
おまけのおしゃべり〈印度カリー子さんインタビュー〉
撮影の合間に、スパイス料理の基礎知識や、印度カリー子さんのスパイスにかける思いなどをうかがいました。
―カリー子さんがつくるスパイスカレー(スパイス料理)は、主にどこの国の料理ですか?
「インド」ですね。インドカレーがベースのスパイスカレーをよくつくっているので、本当は「インドカレー」を広めたいんですけどね(笑)。同じインドでも地域によってカレーの特徴はかなり違いますが、いずれもスパイスを組み合わせて成立させるもの。スパイスが、ちょい足しの調味料じゃなくて、メインの要素なんです。最近、南インド料理を勉強していて、「これは人間が生み出した最高傑作だ!」と感じています。
―では、「インドカレー」の特徴を教えてください。
「つくるのが簡単」「アレンジが効く」「ヘルシー(カレールーに比べて油が少ない、小麦粉不使用)」「いつもの素材でつくれる」など、良いところばかりです。日本のカレーは煮込み料理ですが、インドカレーは「炒めもの」に近いですね。
でも日本では、「つくるのが難しそう」「スパイスをそろえるのが大変そう」と思われがちですよね。私もスパイス料理をつくりはじめた頃にそう感じていたので、よくわかります。そこで、初心者でも簡単につくれるレシピを提案したり、すぐに使い切れるように、少量・安価・これだけでカレーがつくれるといったスパイスセット「タクコスパイス(ターメリック・クミン・コリアンダー)」を販売したりしています。
―カリー子さんのレシピはとにかく簡単で、つくってみようという気になります。
上記3種類のスパイスがあれば、1年間いろいろなインドカレーやスパイス料理をつくって楽しめると思います。いまは徹底して初心者のためのレシピを考案しています。日本でもっとスパイス料理をつくる人が増えたら、中級者向けのレシピを出していこうかなと。スパイス料理は簡単だけど奥が深いので、簡単なレシピに飽きたら、いくらでも次のステップがあるんです。
―初心者にとっては、たくさんのスパイスを組み合わせた結果、どんな味になるかがイメージしづらいと感じます。何か法則はあるのでしょうか?
スパイスの使い方にも法則はあります。でもそれは、和食でも同じですよね。スパイスに限らず、味つけなんて最初はわからなくて当然です。まずは先人のレシピをマネし続けることで、少しずつわかってくると思います。新しいものを取り入れるときは、お手本どおりに! を忘れずに、ぜひトライしてみてくださいね。