日々の生活のなかで「疲れたな」と感じたとき、あなたはどのように過ごしていますか? 元気が出るように栄養ドリンクを飲む、甘いものやお酒でストレスを発散する、とにかくベッドで1日中ゆっくり過ごすなど、さまざまな方法で回復しようとしているはずです。しかし、そうした行動は、「正しい休養」になっているのでしょうか? もしかすると、逆効果となっているかもしれません。
この記事では、疲れたときにやりがちなあれこれが、本当の意味で疲労の回復につながっているのか、解説していきます。
- 教えてくれるのは…
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- 片野 秀樹先生
- 一般社団法人日本リカバリー協会 代表理事
博士(医学)。東海大学医学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員などを経て、現在は博慈会老人病研究所客員研究員、一般社団法人日本未病総合研究所公認講師(休養学)、一般社団法人日本疲労学会評議員などを務める。日本リカバリー協会では、休養に関する社会の不理解解消のためにリテラシー向上を目指して啓発活動や教育事業として休養士の育成活動に取り組んでいる。著書に『休養学―あなたを疲れから救う』『疲労学―毎日がんばるあなたのための』(以上、東洋経済新報社)などがある。
[監修者]:https://x.com/98gaku_katano
一般社団法人日本リカバリー協会:https://www.recovery.or.jp/
栄養ドリンクを飲むと元気になれる?
A. 元気になる効果は一定期待できるが、常飲はオススメしない
日々の生活のなかで疲労を感じたとき、あるいは「今日は気合を入れなくちゃ!」というシーンで、栄養ドリンクを飲む人もいるでしょう。多くの栄養ドリンクには、疲労回復を助けるといわれるビタミンB群が含まれているため、その効果は一定程度期待できます。
一方、糖分による体への影響には注意が必要です。栄養ドリンクに含まれる大量の糖分を摂取すると、血糖値が急激に上昇します。すると、インスリンが分泌され、血糖値は急降下します。今度は下がりすぎた血糖値を正常に戻そうと、コルチゾールが分泌され、血糖値が再び上昇します。
コルチゾールは、体を覚醒させて活動の準備を促す「目覚めのホルモン」ともいわれており、活力がみなぎるような感覚になります。しかし、これは血糖値を上げようとして分泌されたコルチゾールの働きによるものなので、実際には疲労感を一時的に「マスキング(上から覆い隠す)」しているだけなのです。
さらに、栄養ドリンクを日常的に飲み続けると、「副腎疲労」と呼ばれる状態に陥ることがあります。これは、体を覚醒させる役割のコルチゾールが枯渇して分泌が不十分になることで、倦怠感や集中力の低下といった不調が現れやすくなるのです。
ときには栄養ドリンクを活用しても問題ありませんが、疲労感を消しているのではなく、あくまで「疲労感を一時的に隠すアイテム」ということを理解して、常飲は控えましょう。
スイーツやお酒はリフレッシュになる?
A. ご褒美のリフレッシュ効果はあるが、恒常的な糖分の過剰摂取やお酒の摂取は要注意
栄養ドリンクと同様、甘いものを口にすると血糖値の乱高下が起こります。コルチゾールの分泌により一時的に元気が出たような感覚にはなりますが、こうした習慣が続くとコルチゾールの枯渇(副腎疲労)につながる恐れがあります。そのため、恒常的に甘いものを摂るのはオススメしません。お酒も同様に、アルコールを分解する際に内臓に負担がかかってしまうため、体を疲労させる原因になります。
ただし、甘いものやお酒が好きなのに我慢ばかりしてしまうと、かえってストレスがたまってしまう場合もあります。休養は「活力を高める」ために行う側面も大きいため、甘いものを食べたり、お酒を飲んだりすることが、「明日の活力につながるか」という視点で考えてみると良いでしょう。
また、疲れを感じたときにはついつい味の濃いもの、脂っこくガッツリとしたものを食べたくなることもありますが、内臓への負担を考慮すると、むしろあっさりとして消化しやすい、軽めの食事を心がけるのがオススメです。
マッサージは疲労回復につながる?
A. 強すぎずリラックスできるようなマッサージは疲労回復効果あり
マッサージは血行促進効果が期待できるため、疲労回復につながると考えられます。マッサージを受けているときは安静な状態である一方で、血行が促進されるため、生理的休養の「休息タイプ」と「運動タイプ」の2つを同時に実現できる、バランスの良い休養方法だといえます。
ただし、強い痛みを感じるようなマッサージは揉み返しなどにつながることもあるため、あくまで「気持ちがいい」と感じる程度の刺激が望ましいです。また、マッサージの施術者との会話を楽しむことで「親交タイプ」の休養にもなります。
- 休む=寝るだけじゃない!知っておきたい「7つの休養モデル」
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休日は1日中ゴロゴロして体を休めているのに、休み明けどうも体がだるい……という経験をしたことはありませんか? あなたが「休養」と思って実行している休み方は、もしかすると逆効果になっているかもしれません。では、どうすればしっかり疲労を取り除けるのでしょうか。https://helico.life/monthly/251112rest-techniques-7models-of-restoration/
この記事では、「休養学」を研究されている片野先生が提唱する“7つの休養モデル”について解説をします。ぜひこれからの休養に役立ててみてください。
サウナで整うと元気が出る?
A. 休養よりは運動に近いため、疲労回復効果は期待しにくい
サウナのような、日常ではあり得ない高温環境や、冷水で急激に体を冷やすという一連の流れは、体にとっては負荷(ストレス)になり得ると考えられます。そのため、サウナは休養というよりも、強度の高い運動(スポーツ)をするのに近い、強い刺激であるといえます。
体が疲労してよく眠れるという点もあるので、必ずしも悪いわけではありませんが、「休養」として取り入れるのであれば、温泉や岩盤浴など、ゆるやかな刺激のリフレッシュがオススメです。
休日の寝だめは体力の回復につながる?
A. 平日よりも1~2時間程長く寝ることで体力回復につながるが、「社会的時差ボケ」には注意が必要
平日は仕事や家事、育児が忙しく、どうしても睡眠時間が短くなりがちという人も多いでしょう。その分、休日に寝不足を解消しようと長めに寝る場合もありますが、「社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)」には要注意です。
社会的時差ボケとは、平日と休日の生活リズムが大きくズレることによって体内時計が乱れ、体調不良を引き起こすことを指します。これを回避するためには、毎日の起床時間をできるだけ一定にすることが重要です。休日に長めに寝る場合も、1~2時間程度にとどめ、しっかりと起床して活動し、夜の睡眠の質を上げることをオススメします。
寝る前にスマホで「癒し動画」を見ると疲れがとれる?
A. 動画の内容には注意して
見ることで自分自身がリラックスできる動画であれば、リフレッシュにつながります。しかし、ニュースやオススメ動画・記事が次々と表示されるサイトやSNSの場合は、それを追いかけていくうちに脳が覚醒してしまい、睡眠の質を下げてしまう可能性があります。そのため、寝る前に見る動画の内容には注意しましょう。
また、スマホの画面から発せられるブルーライトによって、睡眠の質が下がるという見方もあります。その場合には、ブルーライトカット効果のあるシートを貼ることで、ある程度軽減できます。また、ブルーライトだけではなく、夜は過ごす部屋の明かりの照度を落とすことも重要です。
スキマ時間に1分からできる休養もある!
「疲れたから休む」という発想も大切ですが、「疲れる前にこまめにリフレッシュを挟む」といった考え方も持ち合わせるとよいでしょう。スキマ時間におすすめのふるふる体操をぜひこちらからチェックしてみてください。
- 10秒でリフレッシュ!からだゆるめる「ふるふる体操」
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肩や首の痛み、目の疲れ、むくみ、冷えなど、日頃から小さな不調に悩まされている人は多いもの。運動不足や長時間のデスクワークによる血行不良が、それらの原因の1つと考えられています。https://helico.life/monthly/251112rest-techniques-furu-furu-exercise/
そこでおすすめなのが、たった10秒でできる「ふるふる体操」です。体の一部分をふるふると揺らすことで筋肉をほぐし、血行を促進するというもの。短時間で手軽にできる上に即効性があるので、忙しい人や運動が苦手な人も実践しやすいです。
本記事では、「ふるふる体操」の効果や、女性に起こりがちな不調を和らげる7つの体操をご紹介します。
しっかりと「休養」ができるように習慣を見直そう
疲れたときについついやってしまう習慣はありましたか? 本当の意味で休養につながるのはどういったことなのか、あらためて自分の生活を見直してみるチャンスです。ストレス解消のためではなく、「明日の活力につながるか」という視点で、日々の習慣を見直してみてください。