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あせもや金属アレルギー、汗による肌トラブルと対策

汗ばむ季節になると起こりやすい、「あせも」「肌荒れ・かぶれ」「金属アレルギー」などの肌トラブル。かいた汗をそのままにしていると、こうした肌トラブルの原因となることがあります。例年猛暑が続いているだけに、予防法や対処法を知って快適に過ごしていきたいもの。

本記事では、汗による代表的な肌トラブルの種類と症状の見分け方、汗で肌トラブルを起こさないために日頃から意識しておきたいことなどについて解説します。

教えてくれるのは…
稲澤 美奈子先生
小杉町クリニック院長

金沢大学医学部卒業後、東京医科歯科大学 助教(外来医長)を経て、2020年より小杉町クリニック勤務。日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医、医学博士。発汗異常など汗の疾患の治療を専門とし、子どもから高齢者まで幅広い世代の悩みに寄り添う皮膚科医。

[監修者] 稲澤美奈子先生:https://yism.or.jp/kosugicho/about/doctors/
小杉町クリニック:https://yism.or.jp/kosugicho/

汗が肌トラブルの原因になるのはなぜ?

ヒトには体や熱に弱い脳細胞を冷やすため、体温を一定に保つ機能がありますが、その大きな役割を担っているのが「汗」です。暑いときに汗をかいて、皮膚表面から汗が蒸発すると、体の熱が奪われ体温が下がります。熱中症を予防するためにも、汗をかくことは重要な機能といえます。

一方で、汗をかいたまま放置していると肌がふやけて傷つきやすい状態になり、化学物質や細菌が侵入しやすくなります。また、汗が蒸発するときに肌のうるおいも一緒に奪われるため、乾燥してしまいます。

つまり、汗を放置すると肌のバリア機能が低下して、外部からの刺激に敏感に反応しやすくなるのです。汗には塩分やアンモニアなどの成分がごくわずかに含まれており、それらが肌を刺激することで肌の荒れやかゆみにつながることもあります。

あせも、汗疱、金属アレルギー…汗による肌トラブルの種類

よくあるのが、「あせも」「かぶれ」「湿疹」「金属アレルギー」などの肌トラブル。汗による主な肌トラブルの種類と、それぞれの特徴・見分け方をみていきましょう。

「あせも」「かぶれ」「湿疹」「金属アレルギー」などの肌トラブル

1あせも(汗疹)

汗が正常に排出されずに起こる発疹のこと。大量の発汗などによって、汗を出すための汗管(かんかん)が一時的に詰まってしまい、皮膚の炎症を引き起こします。

あせもの特徴

  • 額、首まわり、脇の下、肘や膝、お腹、お尻など汗がたまりやすい部分で起こりやすい
  • かゆみやちくちくした痛みがある赤いあせもは、子どもから大人までできやすい
  • 透明の水ぶくれやポツポツができる白いあせもは、乳幼児に多く自然に治ることが多い

2汗かぶれ

汗の水分によって皮膚がふやけ、汗の成分や衣類のこすれなどの刺激により肌がかぶれる「接触性皮膚炎」の一つ。皮膚のバリア機能が低下している人に起こりやすい症状です。

汗かぶれの特徴

  • 赤みと強いかゆみがあり、かきむしって皮膚炎を悪化させてしまうケースもある
  • アトピー性皮膚炎や敏感肌の人、汗腺の密度が高い乳幼児に起こりやすい
  • 帽子をよく被る人、肥満や甲状腺機能亢進症など基礎疾患による多汗症の人にもよく起こる

3汗疱(かんぽう)

手足の指や手のひら、足の裏などに、かゆみを伴う透き通った1〜2mmくらいの水ぶくれ(汗疱)が繰り返し現れる皮膚疾患です。異汗性湿疹や手湿疹という診断名の場合もあります。汗疱は水虫と似たような症状ですが、菌やウイルスによる感染症ではないため、人にうつることはありません。

汗疱の特徴

  • 水ぶくれが左右対称に現れ、軽いものは2〜3週間で自然に治る
  • 水ぶくれが大きくなり破れて炎症を起こしている場合には、かゆみや痛みを伴う
  • 春から夏にかけて出やすく、秋になると症状が良くなるケースが多い
  • 思春期から若い世代に多い、手足に汗をかきやすい人やアトピー性皮膚炎の方で起こりやすい

汗疱の原因は汗の詰まりとされていますが、全身型の金属アレルギー(※)や金属接触アレルギー(後述)、アトピー性皮膚炎などが要因になることもあり、なかでも金属アレルギー対策が重要となっています。多汗症が原因の汗疱では、症状に対する治療のほかに、多汗症の治療も並行して行います。

(※)全身型の金属アレルギーとは、歯科治療の詰めもの(金属)や食物に含まれる金属が口から体内に吸収され、汗として肌から排出されるときにアレルギー症状を引き起こす皮膚疾患のこと

4金属接触アレルギー(接触皮膚炎)

アクセサリーに含まれる金属が汗と反応して肌がかぶれます。接触皮膚炎の一つで「金属接触アレルギー」といったりもします。汗の中の塩素イオンは金属を溶かす作用が強いため、発汗の多い夏になると金属アレルギーの症状を訴える人が増えます。

金属接触アレルギーの特徴

  • 金属が触れた部分にかゆみ・赤み・腫れなどが生じる
  • 汗をたくさんかく季節は特に症状が現れやすい
  • ニッケルやコバルト、クロムなどの金属元素はアクセサリー以外にも、化粧品や食品(チョコレートやコーヒー、ナッツなど)、サプリ、調理器具、大気中などにも含まれていて、人によりアレルギー発症の原因となる

自分がどんな金属に対してアレルギー反応をもっているかは、皮膚科でアレルギー検査を受けることで調べることができます。費用の目安は自費診療で3,000円、保険適用となる場合は3割負担で800円程度です。

こんなときには皮膚科を受診しよう

自然に治ることもある肌トラブルですが、「赤みが出ている」「ぶつぶつができてかゆみが強い」「水ぶくれがつぶれた」「痛みがある」など、症状が悪化している場合には、皮膚科を受診しましょう。

汗から肌を守る!汗による肌トラブルの予防&対処法

汗による肌トラブルを防ぐために最も重要なのは、汗をかいたままの肌を放置しないこと。汗をかいたらこまめに汗を拭き取り、肌を清潔に保つよう心がけましょう。汗によるトラブルを予防するポイントをご紹介します。

汗による肌トラブルの予防&対処法

1汗をかいたらウェットシートで拭き取る

汗をかいたらできるだけ早めに洗い流すことが大切です。外出先ではウェットシート(できればアルコールを含まずに水だけが含まれるもの)でやさしく拭き取るようにしましょう。濡れたもので拭うことで、汗に含まれる塩分やアンモニアの成分なども拭き取ることができ、肌のかぶれなどを予防します。

2体温調節がしやすい衣服を選ぶ

衣服はできるだけ風通しの良いものを選びましょう。インナー(肌着)は天然素材or化学繊維といった肌触りの好みのほか、通気性、吸水性、速乾性などの要素も考慮して、自分の肌に合ったアイテムを選ぶと快適に過ごせます。屋外レジャーでは替えの服などを用意し、汗をかいたら着替えることも有効な予防策になります。

3アクセサリーの着用時間を調整する

アクセサリーをつけた部分にかぶれやかゆみが起こる場合には、汗をかきやすい時期だけでも使用を避ける、着用時間を短くするなどで対処しましょう。または、ニッケルフリーや金属アレルギー対応素材の商品を上手に活用しましょう。

汗に負けない!夏のスキンケアのポイント

夏の肌は、汗によるうるおい低下や紫外線、エアコンなどの影響で肌のバリア機能が低下し、乾燥しやすくなります。汗が蒸発するときには肌のうるおいが逃げやすくなるほか、汗を拭くたびにゴシゴシ拭き取っていると必要な皮脂や水分も失われやすくなります。スキンケアのポイントをおさえて、健康的な素肌を目指しましょう。

夏のスキンケアのポイント

1顔も体もたっぷりの泡でやさしく洗う

洗顔は、肌に摩擦を与えないようにたっぷりの泡でやさしく洗いましょう。肌表面の皮脂を取り過ぎてしまうと肌が乾燥しやすくなるので、ゴシゴシ洗いや洗顔料の使い過ぎには気をつけて。体を洗うときは、汗がたまりやすい首まわり、肘や膝の内側、足の付け根なども忘れずに清潔を心がけましょう。

肌が敏感な方は、ナイロンタオルよりもガーゼ素材のタオルでやさしく洗うのがおすすめです。水分を拭き取るときも、摩擦が起きないように軽くタオルでおさえるようにしましょう。

2しっかりと保湿をする

肌を清潔にしたら、化粧水やボディローションなどでしっかり保湿しましょう。外出先ではスプレータイプのローションなどもおすすめです。化粧水の後は、油分を含む乳液などでうるおいを閉じ込めます。アトピー性皮膚炎や敏感肌で、皮膚のバリア機能がもともと弱い方は、汗による肌トラブルを起こしやすい状態にあるので、特に保湿をしっかり行いましょう。

皮膚科で相談すると、保湿剤として「ヒルドイド(ヘパリン類似物質)」のクリームやローション、スプレーなどの処方を検討してもらえるでしょう。

3紫外線対策をしっかり行う

紫外線は肌の炎症や日焼けといった目に見える変化だけではなく、皮膚のバリア機能そのものを低下させて、肌トラブルを起こしやすい肌の土台をつくってしまいます。日焼け止めをしっかり塗って紫外線をなるべく浴びないようにしましょう。日焼け止めは汗によって流れ落ちることもあるため、2~3時間を目安に塗り直すのがおすすめです。毎日のちょっとした積み重ねが肌トラブルを遠ざけます。

汗をかいたら、適切なケアを心がけよう!

暑い時期には汗を不快だと感じることもありますが、本来汗はヒトの体温調節に必要なもの。ただそのまま放っておくと、肌トラブルの原因となってしまうことがあります。汗の拭き取り方や日々のスキンケアなどを見直して、健やかな肌を保ちましょう。赤みやかゆみ、ぶつぶつが気になるときは、皮膚疾患の可能性もあります。症状が悪化する前に、皮膚科で相談してみてください。

CREDIT
取材・文:及川夕子 編集:HELiCO編集部+ノオト イラスト:Osaku
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