幼い頃から、泥酔する父の姿を「普通」だと思って育った漫画家の菊池真理子さん。
けれども、父の死後に「父はアルコール依存症だったのかもしれない」と気づき、依存症が家族に与える影響や、その苦しみを描いたコミックエッセイ『酔うと化け物になる父がつらい』を発表。同作は映画化もされて話題となりました。
菊池さんはそのあとも、アルコールだけでなく、薬物やギャンブルなど、さまざまな依存症について取材し、専門家や当事者の声を漫画で表現してきました。当事者に近い距離から、依存症についてさまざまな思いを巡らせてきた菊池さんに、「依存症」の難しさにどう向き合えばいいのかをお聞きします。
- 教えてくれるのは…
-
- 菊池真理子さん
東京都出身。実体験を漫画化した『酔うと化け物になる父がつらい』(秋田書店)をはじめ、『依存症ってなんですか?』(秋田書店)『うちは「問題」のある家族でした』(KADOKAWA)など著書多数。最新作は、依存症、宗教2世、発達障害などをテーマにした対話集『「ほどよく」なんて生きられない』(共著:横道誠、二村ヒトシ/明石書店)。
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アルコール依存症だった父は、昔もいまも「?」の人
―菊池さんは『酔うと化け物になる父がつらい』で、アルコール依存症の父と過ごした日々を描いて話題となりました。娘の目から見てお父さまはどんな人でしたか。


『酔うと化け物になる父がつらい』©菊池真理子(秋田書店)2017

『酔うと化け物になる父がつらい』©菊池真理子(秋田書店)2017

―ご自身の中で「区切りがついた」と実感できたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。


『依存症ってなんですか?』©菊池真理子(秋田書店)2021
―「お酒を飲む」こと自体は日常の楽しみでもあるため、どこからが依存症になるのかの見極めが難しい気がします。

―酔いが覚めてから、「昨日は酔っ払ってごめん」と謝って許してもらうような形でも?


家族にとっても認めきれない「否認の病」
―漫画という表現手段でアルコール依存症に向き合ったことで、ご自身の心境の変化などはありましたか?

―なぜでしょう?

―本来ならブレーキ役になってくれるお母さまが不在となったことで、長女である菊池さんが責任を負う形になってしまったのかもしれません。


「病気」と「被害」を分けて考える
―作品や講演などを通じて依存症当事者の方たちと直接話す機会も増えたそうですが、何か発見はありましたか。

―同じ立場の人同士で本音を打ち明け合うことで、前向きになれる作用もあるのでしょうか。


『依存症ってなんですか?』©菊池真理子(秋田書店)2021
―過去の菊池さんのように、「依存症かもしれない家族に困っている人」は、まずどこに相談するとよいと思われますか。

全国の相談窓口・医療機関を探す(依存症対策全国センター)
https://www.ncasa-japan.jp/you-do/treatment/treatment-map/
全国の精神保健福祉センター(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubutsuranyou_taisaku/hoken_fukushi/index.html

身近な人が依存症になったとき、すべきこと
―アルコールや薬物、ギャンブルなど、特定の物質や行動に依存する状態が続く依存症は「精神疾患」であるとWHO(世界保健機構)でも定義されています。近年は「依存症」の理解も進んでいるように感じますが、菊池さんは世間の認識の変化をどう感じていますか。

―たしかにそうですね……。では、健やかな範囲の依存と、病気としての依存症の違いはどこにあるのでしょうか。

―依存症に限らず、なるべく早い段階で相談窓口などにつながる。それが当事者のためにも、家族のためにも一番の近道になる。
