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その咳、ストレスが原因かも?「心因性咳嗽」チェックリスト

「咳が長引いているけれど、明確な原因が分からない」という経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。もしかすると、その咳は心理的なストレスが負担となって起こる「心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)」かもしれません。本記事では、心因性咳嗽の原因や特徴、予防・改善策を解説します。

教えてくれるのは…
一林 大基先生
はじめのメンタルクリニック院長

世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSにて情報発信をしながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10〜20代の若者への情報発信と支援を行うことで、多くの反響を得ている。テレビや雑誌の取材・出演もあり。主な著書に『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』(ダイヤモンド社)がある。
 
[監修者]一林 大基先生:https://hajime-mental.jp/guide/
はじめのメンタルクリニック:https://hajime-mental.jp/

心因性咳嗽とは?ストレスがかかる場面で出る乾いた咳に注意

長期間にわたって乾いた咳が出る場合に考えられる病気として、アレルギーや胃食道逆流症のほかに、心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)が挙げられます。心因性咳嗽はその名の通り、心に負荷がかかることで咳の症状が引き起こされる病気です。会議前の緊張する場面や、通勤・通学前の心理的負担の高まる時間など、その人にとってストレスがかかる場面で、痰の絡まない乾いた咳(空咳)が止まらなくなるという症状が、2週間から数か月以上にわたって慢性的に起こります。

心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)に苦しむ女の子

ストレスによって咳が出るメカニズムは、まだすべてが解明されているわけではありません。しかし、人によっては緊張すると汗が出たり腹痛や頭痛を引き起こすなど、さまざまな症状が現れるのと同様に、緊張が自律神経に影響を及ぼすことで、脳にある咳中枢や気道の粘膜が敏感になり、咳を引き起こすと考えられています。そのため、頭痛やめまい、吐き気、腹痛、汗などの緊張時の自律神経症状が、咳と一緒に現れることもあります。

こんな咳をしていない?心因性咳嗽のセルフチェックリスト

呼吸器内科などで呼吸器に明らかな異常がないと言われ、以下の項目が複数当てはまる場合には、心因性咳嗽の可能性も考慮して、心療内科や精神科の受診を検討しましょう。

心因性咳嗽のセルフチェックリスト

□ 2週間から3か月ほど、痰の絡まない乾いた咳(空咳)が続いている
□ ストレスを感じると咳の症状が悪化する、あるいは、現在ストレスを感じている
□ 通勤や通学前、会議前などに空咳が出ることが多い
□ 寝ている間や休日は咳が治まる

心因性咳嗽の特徴、ほかの病気との違い

心因性咳嗽は、ストレスを感じることが根本的な原因のため、リラックスしているときや寝ている間は咳が治まるという特徴があります。一方で、感染症や呼吸器の異常によって起こる咳は就寝時にも起こり、咳によって目覚めてしまうこともあります。自身が寝ている間に咳をしているかどうかは、一緒に住んでいる人に聞いたり、自分で就寝時の音を録音したりして確認してみてください。

心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)のセルフチェック方法

子どもの頃はストレスがかかると腹痛を起こすなど、咳以外の症状が現れていた場合でも、大人になるとストレスによって体に現れる症状が変わることがあります。たとえば会議のような緊張する場面の前に咳をすることで緊張を和らげようとしたり、ストレスフルな状態を周囲に気づいてもらうために、無意識にヘルプサインを出したりしているのです。

一林先生

心因性咳嗽は、以前は子どもによく見られましたが、近年は大人にも見られるようになりました。特に20代から40代は、就職や昇進など心に負荷がかかる出来事が多く、それが咳を引き起こす原因になっているケースも。環境の変化が重なるタイミングである4月や、仕事の繁忙期となることが多い12月、3月などに増える傾向があるので注意が必要です。

止まらない咳の対処法

心因性咳嗽を止めるために大切なのは、ストレスそのものを取り除くことです。しかし、仕事や環境変化によるストレスの場合は、すぐに周囲の環境を変えるのが難しいこともあると思います。そんなときにはまず、喉を守ることを大切にしてください。心因性咳嗽では、慢性的な咳によって喉を痛めてしまい、さらに咳が出るという悪循環に陥ることがあるため、水分補給や加湿(加湿器やマスクの使用)を心がけましょう。

本来、咳は異物や細菌・ウイルスなどを体外に排出するための体の防御反応のため、市販の咳止めをむやみに使用しないほうがよいこともあります。しかし、心因性咳嗽の場合は感染症ではないため、喉を守るという意味でも、咳止めを使用することは問題ありません。

ただ、咳止めで咳が治まったとしても、根本的な原因の改善にはなっていません。咳止めを長期服用するのではなく、例えば仕事によるストレスが大きい場合には、業務量を減らしたり職場環境を変えたりするなど、ストレスの原因を根本から見直すようにしてください。

心因性咳嗽の場合、喉のつかえや違和感を改善する「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」という漢方が処方されることもあります。市販の漢方もあるため、調剤薬局などで相談してみるのもよいでしょう。

心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)の対処法

周囲の方が心因性咳嗽で困っていたら

また、周囲に心因性咳嗽で困っている方がいる場合、そのストレスを取り除くという意味でも、まずはしっかりとその方の話を聞いてあげてください。ストレスが体に出やすい方は、そうした状況を「自分自身の甘え」と考えてさらに自分を追い込んでしまうことがあるので、まずはその方の体調を心配して声をかけてみるとよいかもしれません。

受診の目安は本人が困っているかどうか

心因性咳嗽の患者のなかには、呼吸器などには異常が見られないため、体質や癖と捉えてあきらめてしまう人もいますが、きちんと治療をすれば咳はなくなります。心療内科や精神科の受診はハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。しかし、もし日常生活で咳によって困っている場合には、相談するくらいの気持ちで、ぜひ一度受診を検討してみるとよいでしょう。

一方で、本人や周囲の人が咳によって困っていないのであれば、無理に受診をする必要はありません。特に、他の人から受診や通院を強要されてしまうと、それ自体がストレスになってしまうこともあります。ただし、激しい咳が続くことで過呼吸のような状態になり、失神を引き起こしてしまうこともあるので、その点は注意が必要です。

呼吸器内科で異常が見られなかったら、心因性咳嗽も疑って

ストレスを感じる場面で咳症状が強くなるのが特徴的な、心因性咳嗽。改善のためには、原因となっているストレスを取り除くことが何よりも大切です。咳に困っているにもかかわらず、呼吸器内科などで原因となる異常が見られなかったという人は、心因性咳嗽の可能性も視野に入れて、医療機関の受診を検討してみてください。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:堀川直子
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