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知っておきたい!子どもの食物アレルギーの種類と特徴

近年増加傾向にある子どもの「食物アレルギー」。家庭ではどう対処すればいいのか、予防はできるのかなど、日々悩んでいる保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

アレルギーは、医師と相談しながら対処していくことが大前提ですが、家族も正しい知識を持っておくことが大切です。本記事では、子どもの食物アレルギーの種類や特徴を紹介しながら、望ましい対処法や医療機関のかかり方などについての情報をお届けします。

INDEX
子どもの食物アレルギーの種類と特徴を知ろう
自己判断は禁物! 離乳食を遅らせても予防にはならない
保護者が知っておきたい、治癒にむけた適切な治療法
「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」について知っておこう
果物や野菜で口がヒリヒリ……これも食物アレルギー?

子どもの食物アレルギーの種類と特徴を知ろう

本来、食物は生きていくうえで必要なものですが、特定の食物に体の免疫が過剰に働くと、アレルギー反応が起きてしまうことがあります。これを「食物アレルギー」といい、主に食物に含まれる「タンパク質」が原因です。

子どもの食物アレルギーにはいくつかの種類があり、いずれも0歳で発症する場合が多いとされています。それぞれの種類や症状を見ていきましょう。

●即時型食物アレルギー

食物アレルギーの代名詞であり、ほとんどの患者はこの即時型です。原因となる食物を食べてから数分〜30分ほどで、皮膚や粘膜などにかゆみ、赤み、腫れ、せき、ゼイゼイ・ヒューヒューとした呼吸、嘔吐、下痢、腹痛などのさまざまな症状が現れます。年齢に関係なく起こりますが、患者の過半数は0〜1歳、約80%が5歳以下とされています。

年齢によってアレルゲンになりやすい食物は変わっていきます。0歳では、鶏卵、牛乳、小麦が3大アレルゲンといわれ、全体の約9割を占めます。1歳では鶏卵や牛乳のほかに、いくらなどの魚卵、木の実類、果物類が増え2〜3歳を過ぎると木の実類によるアレルギー発症が急激に増えます学童期を過ぎると、甲殻類アレルギーや果物アレルギーが増加します。

●新生児・乳児消化管アレルギー

主に粉ミルクに含まれる牛乳のタンパク質によって、嘔吐や下痢、血便などが起こります。症状は摂取してから2時間以上過ぎてから現れ、遅延型反応といわれます。1歳になると約半数が、2歳になると9割ほどが治るといわれています。

●食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎

生後3か月ごろまでに見られ、かゆみをともなう湿疹や赤みが、頭や顔から体へと広がっていきます。アトピー性皮膚炎と診断されて治療やケアを続けても治らない場合は、食物アレルギーが原因のことがあります。

年齢ごとにおおよその傾向はありますが、症状の出やすさや重症度などは子どもによってさまざまです。また、食物アレルギーは特定の食物を食べるだけでなく、皮膚に触れたり、吸い込んだりしてアレルゲンが体内に入り、アレルギー反応を起こすこともあります

自己判断は禁物! 離乳食を遅らせても予防にはならない

食物アレルギーを気にするあまり、「授乳中の母親が食事制限をしたり、子どもに離乳食を与える時期を遅らせたりすれば、アレルギーの発症を防げるのでは?」と考える人もいるようです。しかし、これらの予防効果は医学的に証明されていません。

授乳中の母親が食事制限をすることは、効果が否定されているうえ、栄養をしっかり摂れなくなるので好ましくないとされています。むやみに食事制限をせず、バランスの良い食事を心がけましょう。

また、私たちの体には「経口免疫寛容」といって、口から入る無害な食物は異物とみなさず、アレルギーを抑える免疫細胞が活発になるしくみが備わっています。そのため、基本的に離乳食は、生後5〜6か月ごろから始めるのが良いとされています。

現在わかっているのは、湿疹やアトピー性皮膚炎のある乳児が即時型食物アレルギーになりやすいということ。離乳食を始める前にアトピー性皮膚炎を発症すると、特定の食物に含まれるアレルゲンがバリア機能の弱った皮膚から入ってしまい、体が異物と認識してしまう場合があります。その結果IgE抗体(※)ができあがり、以降同じ食物を食べたときにアレルギー反応を起こすと考えられています。

※IgE抗体…体に侵入してきた特定のアレルゲンを攻撃したり、体外に排除したりするためにつくられる固有の抗体のこと

IgE抗体については下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

アレルギーはなぜ起こる?発症のメカニズムを知ろう
花粉症をはじめ、アトピー性皮膚炎や気管支喘息、食物アレルギーなど、たくさんの種類がある「アレルギー疾患」。今や日本人の2人に1人がなんらかのアレルギー症状に悩まされているといわれるほど、とても身近な疾患です。

一方で、「アレルギー反応が起こるメカニズムについては理解できていない」という声も聞こえてきます。この記事では、発症のしくみや検査のことなど、病院で診察を受ける前に知っておきたいアレルギーの『基本のキ』を紹介します。アレルギーと上手に付き合っていくためにも、まずは正しい知識をきちんと得ることから始めましょう。
https://helico.life/monthly/230102allergy-kiso/

口よりも皮膚からアレルゲンが入る方が、即時型食物アレルギー発症のリスクが高まるとされているため、湿疹などの症状が見られたら、適切な治療やスキンケアを行うことが大切です

「湿疹が出ているのに離乳食を食べさせていいの?」「離乳食の量はどうしたらいい?」など心配なことがあれば、かかりつけの医師やアレルギー専門医に相談しながら離乳食を始めていきましょう。厚生労働省のガイドも参考になります。

▼生後5か月からの離乳スタートガイド/厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000808866.pdf

保護者が知っておきたい、治癒にむけた適切な治療法

食物アレルギーの対応でもっとも大切なのは、“最初の診断”です。アレルギー症状が出ていないにもかかわらず、アレルギーがあると診断され、重要なタンパク源となる食物まで制限され続けてしまうと、子どもの成長や発達にも影響が出る可能性があります。

正しい診断には、医師にも専門性が求められるため、できるだけ子どものアレルギーに詳しい医師を探して診断を受けるようにしましょう。日本アレルギー学会認定医・指導医などは、公式HPで検索できます。

▼日本アレルギー学会 専門医・指導医一覧
https://www.jsaweb.jp/modules/ninteilist_general/

即時型食物アレルギーの原因食物のトップ3とされる鶏卵、牛乳、小麦。乳幼児期にこれらに対するアレルギーを発症した場合、専門医のもとで適切な治療を受ければ7〜8割は小学校入学ごろまでに治るといわれています

即時型食物アレルギーは、食物中のタンパク質に対してIgE抗体が過剰反応を起こすことで症状が現れます。原因食物のなかにタンパク質がどれくらい入っているかはそれぞれで、また調理法によってタンパク質の性質そのものが変化することもあります。そのため症状の具合や治るタイミング、完治の可能性については個人差があります。

医療機関を受診する際には、子どもが「いつ」「なにをどれくらい食べて」「どんな反応が出たか」を記録しておくと良いでしょう

即時型食物アレルギーの検査から診断まで

問診のあとまず行われるのが、アレルゲンを特定するための「血液検査(抗体検査)」や「皮膚テスト」で、IgE抗体の有無を調べます。ただし、結果が陽性だったとしても、その食物を「食べてはいけない」わけではありません。血液検査でわかるのはあくまでも食物アレルゲンに感作(※)されているかで、必ずしもアレルギー症状が出るとは限りません。保護者の方は、感作と発症は違うことを理解しておきましょう。

※感作…IgE抗体がつくられて待機している状態のこと。感作だけではアレルギー反応は起こりません

除去が必要な食物を正確に知るには、実際に食物を口にして、症状が出るかどうかを見る「食物経口負荷試験」を行う必要があります。これは、専門医の厳密な管理のもとで行う特別な検査です。検査の結果が出たら、その子に応じた対応や治療へと進んでいきます。

重症の場合、原因となる食物は一切口にしない方針(完全除去)で進めていくことが多いですが、中等症や軽症の場合、安全に食べられる量がわかれば、少しずつ自宅で食べ進め、負荷試験をくり返しながら食べる量を増やしていきます。食物アレルギーと診断されたら、定期的に見直しながら不要な除去を最低限にしていきます。アレルギー症状の診断・治療に対応できる医師と相談しながら、それぞれのペースで進めていきましょう。

このように食物アレルギーの対応は簡単ではありませんが、食べられる量を確認することで食生活は豊かになっていきます。また、食べ始めることで耐性を獲得し治癒へとつながっていくのです。繰り返しになりますが、大切なことは、適切な診断ができる医師に相談することです。

食物アレルギーでは、給食や外食などでの誤食をどう防ぐかという点も見逃せません。保育所や幼稚園、学校での給食対応などについては、かかりつけの医師からも指導を受けるようにして対応していきましょう。

「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」について知っておこう

「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」は、学童期以降に見られる食物アレルギーで、特定の食物を食べてから2時間以内に運動をすると症状が現れるものをいいます。

たとえば「給食を食べたあとに運動をしたら、じんましんやむくみ、せきが出てきて、呼吸が苦しくなった……」といった状況は典型的なケース

原因となる食物は、小麦と甲殻類、果物類が挙げられます。激しい運動に加えて疲労、ストレス、月経前症状、寝不足などが症状を誘発することもあります。

発症数は少ないものの、半数は意識障害や血圧低下などのショック症状を起こすといわれています。こういったアナフィラキシーの疑いがある場合は、一刻も早く救急車を呼びましょう

※アナフィラキシーの症状が出たときに使用し、症状の悪化を抑える補助治療剤「エピペン®」を医師から処方されて携帯している場合は、医師の指示に基づいて使用します

果物や野菜で口がヒリヒリ……これも食物アレルギー?

生の野菜や果物を食べた直後に、口のなかやのどにかゆみや痛み、唇の腫れなどの症状が出るアレルギーを「口腔アレルギー症候群」といいます。これも食物アレルギーの一種で、学童期以降に多く見られます

花粉症と口腔アレルギー症候群は、合併することが多いのも特徴で、この場合、花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)と呼ばれます。

・ヨモギ花粉症はにんじんやセロリ
・ブタクサ花粉症はメロン、スイカ、キウイ
・シラカンバ、ハンノキ花粉症はリンゴ、モモ、サクランボ

というように、ある花粉にアレルギー反応を起こしたことがあると、それに似たタンパク質を含む食物に対してもアレルギー反応が出やすくなります。これを交差反応といいます。

原因食物を摂らないことが何よりの予防法ですが、加熱処理をするとタンパク質構造が変化して症状が出にくくなるため、ジャムや焼菓子、加熱処理済のフルーツジュースなどは症状誘発の心配が少ないとされています

ほとんどの場合、症状は軽くて済みますが、ときにはじんましんや腹痛、呼吸困難といった全身症状が起こる場合も。症状がひどい場合には食物アレルギーの専門医を受診しましょう。

子どもの成長とともにさまざまなアレルギー疾患が現れる「アレルギーマーチ」については下記ページで詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。

成長とともに複数のアレルギー疾患が現れる、アレルギーマーチ
多くのアレルギー疾患は子どものころに発症しますが、小児アレルギーは大人のアレルギーとは違った特徴があります。成長にともなって自然と症状が改善していくケースもあれば、もともとかかっていたアレルギーとは別のアレルギー疾患が現れる「アレルギーマーチ」という現象が起こることも。

そうした小児アレルギーの特徴を知っておくと、子どもの様子の変化に気づきやすくなったり、対処もしやすくなったりします。本記事では、アレルギーマーチとはどういうものなのか、典型的なパターンや症状改善のために家族ができることについて解説していきます。
https://helico.life/monthly/230102allergy-march/
教えてくれたのは・・・
今井 孝成先生
昭和大学医学部小児科学講座 教授

東京慈恵会医科大学医学部を卒業後、昭和大学小児科学講座に入局。独立行政法人国立病院機構相模原病院小児科を経て、2019年より現職。専門は小児アレルギー全般、特に食物アレルギーやアナフィラキシー。診療や後進の指導に当たりながら、厚生労働科学研究班「食物アレルギーの栄養指導の手びき」の作成委員長を務め、日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021」の作成委員や、自治体の食物アレルギー対応マニュアルの監修にも携わる。近著に『こどものアレルギー基礎BOOK 心配になったら一番先に読む本』(日東書院)などがある。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:まえじまふみえ
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