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疲労は体のSOS。あなたのお疲れレベルをチェック!

仕事や家事、育児に追われ、疲れを感じる毎日を過ごしていませんか? 「疲れたら休む」というのはごく当たり前のように聞こえますが、実際にはなかなか上手にできていない人も多いもの。「いつも体が重い」「朝起きたときから疲れている」「休日は出かける気力がなく、ついゴロゴロしてしまう」という方は要注意。

この記事では、私たちの疲れの正体や、疲れのサインとして起こる不調、疲れのマスキングなどについて、一般社団法人日本リカバリー協会・代表理事の片野秀樹先生に教えていただきました。まずは「疲労」を知ることで、自分自身の状態や必要な休養について見つめ直してみませんか?

教えてくれるのは…
片野 秀樹先生
一般社団法人日本リカバリー協会 代表理事

博士(医学)。東海大学医学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員などを経て、現在は博慈会老人病研究所客員研究員、一般社団法人日本未病総合研究所公認講師(休養学)、一般社団法人日本疲労学会評議員などを務める。日本リカバリー協会では、休養に関する社会の不理解解消のためにリテラシー向上を目指して啓発活動や教育事業として休養士の育成活動に取り組んでいる。著書に『休養学―あなたを疲れから救う』『疲労学―毎日がんばるあなたのための』(以上、東洋経済新報社)などがある。
 
[監修者]:https://x.com/98gaku_katano
一般社団法人日本リカバリー協会:https://www.recovery.or.jp/

なぜ人は疲れるの?

疲労とは、「過度の肉体的・精神的活動後の活動能力が減退している状態」と定義されています。

たとえば、歩き回っているとそのうち同じペースで歩けなくなったり、体のだるさを感じたりします。パソコン作業が続くことで、徐々に頭の働きが鈍くなることもあるでしょう。このように体を動かしたり、頭を使ったりすることで、本来の活動能力が下がった状態が「疲労」です。

片野先生

疲労には不快感が伴います。これが「疲労感」です。疲労は活動能力が減退している状態を指すので、厳密には「たまる」ことはありません。つまり、「疲れがたまっている」と私たちが考えるときは、「疲労による不快感を強く感じている」ときなのです。

心身に影響するストレス要因(ストレッサー)

そして、疲労のもととなるのが「ストレス」です。休養学におけるストレスとは、肉体的・精神的な疲労の原因となる外部からの刺激すべてを指します。私たちにストレスを与えるものを「ストレッサー」といい、以下の5種類に分けることができます。ストレスがかかることで心身が鍛えられることもありますが、過剰になると健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

  • 物理的ストレッサー :暑さ、寒さ、騒音、混雑、振動
  • 化学的ストレッサー :公害、薬物、化学物質(アルコール、タバコなどを含む)
  • 心理的ストレッサー :不安、緊張、怒り、悲観
  • 生物学的ストレッサー:細菌、感染、ダニ、花粉
  • 社会的ストレッサー :人間関係、 経済的問題

また、疲れ方は時代と共に移り変わっています。昔の人は肉体的疲労でへとへとになり、夜はしっかりと眠るという、自然のリズムに沿った生活ができていました。一方、近年はより頭を使う仕事が増えました。仕事後にも緊張や興奮状態が続いてしまい、夜になかなか眠れなくなり、結果的に肉体疲労も残りやすい状況にあるのです。また、携帯電話やSNS、チャットツール、オンラインミーティングなどの登場により、迅速な返信を求められたり、過密スケジュールになりやすくなったりすることで、精神的にも休まらないケースが増えています。

疲労のサイン、どのくらい当てはまる?

日本リカバリー協会が全国の20~79歳の10万人(男女各5万人)に対して行った2025年の調査では、「疲れている」「慢性的に疲れている」と答えた人は約80%にのぼり、「元気である」と答えた人はわずか約20%にとどまりました。この結果から、日本人の多くが疲労を抱えながら日々を過ごしていることがわかります。

以下のチェック項目のうち、あなたはいくつ当てはまるでしょうか。これらはいずれも疲労のサイン、あるいは疲労の原因であるといえます。

□ 寝ても寝ても眠い
□ 朝、起きた瞬間からすでに疲れている
□ 体は疲れているのに、いざ寝ようとすると寝つけない
□ 休みの日は思い切り朝寝坊をして、そのままゴロゴロ
□ 有給休暇が取りづらい職場に勤めている
□ 残業は当たり前だ
□ 人間関係に悩んでいる
□ 育児や介護など定休日のない仕事をしている
□ 最近、つまらないことでイライラする
□ 眼精疲労や肩こりがある
□ 入浴は湯船につからず、シャワー派だ
□ テレビやSNSを見てダラダラしがちだ
□ 夜のつき合いが多いが、毎朝9時には出社する
□ 栄養ドリンクやコーヒーを飲まないとやる気が出ない
□ ケーキなど甘いものを頻繁に口にする
□ 最近、著しく気力・体力が衰えた自覚がある

※『疲労学―毎日がんばるあなたのための』(片野秀樹著 / 東洋経済新報社)より抜粋

疲労をそのままにすると起こる不調

疲労(疲労感)は、「発熱」や「痛み」と同じように、体が病気になる前に出す危険信号の1つです。いずれも体からのSOSともいえるものですが、疲労感は軽視されがちです。「疲れているから休みたい」と感じていても、それを口にするのが難しいと感じる人は少なくありません。

疲労には、「急性疲労」「亜急性疲労」「慢性疲労」の3つの段階があります。

疲労には、「急性疲労」「亜急性疲労」「慢性疲労」の3つの段階があります

疲労のサインの初期段階として特に注意したいのが「自律神経の変調」です。

自律神経は、緊張時に優位になる「交感神経」と、リラックス時に優位になる「副交感神経」からなっています。自分の意思ではコントロールできないもので、緊張状態になると脈拍が速くなったり、血圧が上がったりします。さらにその状態が続くと、筋肉の緊張によって目の疲れや肩こりが起こりやすくなります。また、不安感などによる不眠のほか、頭痛や倦怠感が生じる、集中できない、イライラしやすくなる、食欲が落ちるなど、さまざまな症状も感じやすくなります。

また、「疲れていると風邪をひきやすい」と感じたことはありませんか? それはまさに、疲労によって免疫系も弱っているサインになります。これは、免疫の働きに自律神経が関係していることによるものです。

さらに、慢性的な疲労が続くと内分泌系が乱れ、ホルモンの異常が見られるようになります。たとえば、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンは、コレステロールを原料としてつくられます。しかし、疲労などのストレスが重なると、ストレスホルモンのコルチゾール産生にコレステロールが多く使われてしまいます。このため、エストロゲンの産生量が減少し、疲労感につながってしまうことはあまり知られていないかもしれません。

疲労感をそのまま放置していると、日常生活を送るのが困難なほどの重度の疲労が続き、肉体的・精神的に疲弊した「慢性疲労状態」に陥ってしまうこともあるので、注意が必要です。

現代人が陥りがちな「疲労のマスキング」に要注意!

疲労感やそれに伴う不調を感じたら、早めにしっかり休むのが理想的ではあります。しかし、脳が発達した人間は、どうしても頑張らないといけないシーンにおいて、疲労感を一時的に「マスキング(上から覆い隠すこと)」をして、その場を乗り切ることができます。

マスキングは、やりがいや責任感、使命感など精神的な要素によって起こることもあれば、コーヒーや栄養ドリンクなどを摂取して意識的に行っている人もいるでしょう。カフェインには、疲労感を抑制すると同時に眠気を感じにくくする作用があります。つまり、本当はとても体が疲れているのに眠れない……という状況を自ら引き起こしてしまうのです。

現代人が陥りがちな「疲労のマスキング」に要注意

マスキングをしても、実際の体は疲労しているため活動能力が低下しています。その自覚がないまま、生産性が上がらない状態で働き続けることは、長時間労働になってしまうなどの悪循環にも陥りかねません。適切な休養を取らずに活動を続けていると疲労感が強くなり、回復に時間がかかったり、病気になったりする可能性も高くなります。

片野先生

誰しも頑張りどきはあるものですが、疲労感のマスキングをいつまでも継続することはできません。最長でも1か月くらいが限度、と覚えておきましょう。また、疲労はどこかで必ずリセットする必要があります。

以下の記事では、「7つの休養モデル」をご紹介しています。疲労をリセットしたいときのヒントにしてください。

休む=寝るだけじゃない!知っておきたい「7つの休養モデル」
休日は1日中ゴロゴロして体を休めているのに、休み明けどうも体がだるい……という経験をしたことはありませんか? あなたが「休養」と思って実行している休み方は、もしかすると逆効果になっているかもしれません。では、どうすればしっかり疲労を取り除けるのでしょうか。

この記事では、「休養学」を研究されている片野先生が提唱する“7つの休養モデル”について解説をします。ぜひこれからの休養に役立ててみてください。
https://helico.life/monthly/251112rest-techniques-7models-of-restoration/

疲れ方には個人差がある!

人にはそれぞれ生まれ持った体質があり、疲れの感じ方は年齢やその時々の体調などによっても変わってきます。まずは、自分自身の体が出している疲労のサインを見逃さないよう、日々の体調に気を配りながら過ごしてみましょう。

CREDIT
取材・文:HELiCO編集部+ノオト イラスト:オオカワアヤ 図版:新藤麻実(linen inc.)
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